ヴィング・レイムスのおじきが出演している作品。いつもの雄たけびや「おじき」ぽさは無い。おじき、そういえばこういうドラマも出来るんだなっていう俳優根性を見せております。元々は南アフリカの有名な劇作家アソル・フガードの戯曲。アソル・フガードは戯曲だけでなく、「Tsotsi / ツォツィ (2005)」の原作となった小説も書いてます。この戯曲はブロードウェイでも上演されていて、オリジナルではダニー・グローバーがウィリーを演じ、「Vampire in Brooklyn / ヴァンパイア・イン・ブルックリン (1995)」等で知られるゼイクス・モカエがサムを演じた。2003年にもリバイバル上演され、その時にはダニー・グローバーがサムを演じ、マイケル・ボートマンがウィリーを演じている。しかもリバイバルの時にはオリジナルでハリーを演じていた少年が、演出家として参加しているのです。オリジナルでは、ゼイクス・モカエがトニー賞を受賞しています。もちろん、ブロードウェイ以外でも小さな劇場で上演されている劇であります。
舞台は1950年の南アフリカのニュー・ブライトン。白人の移住地区だけど、ウィリーとサムは働きにバスで来ている。そこにあるカフェで働いているのです。カフェは白人の夫婦が切り盛りするが、夫の方は病院で、妻の方がカフェも切り盛りしている。その日は、病院から電話があって、妻の方も病院に出掛けてしまい、ウィリーとサムだけ。ウィリーがボールダンス大会に出席するので、2人はその事で頭が一杯。でもウィリーはパートナーと喧嘩してしまい、困っていた。そして学校から戻ってきたのが、夫婦の1人息子ハリー(ハロルド)だった。ハリーはカフェで宿題をしながら、ウィリーとサムの話に耳を傾ける。サムは次第に人生の厳しさをハリーに語っていくのです。その時の台詞が素晴らしい。「良い日は世界では事故なんて起きてないと夢見る事から始まるのさ。でも実際にはアメリカはロシアにぶち当たり、イングランドはインドに、そして富裕者は低層者にぶち当たっていくのさ」と。さらにサムは「けど、夢無しには我々の進むべき道が分からないんだ」とも語るのです。
途中からは3人の密室劇となりますが、苦に感じませんね。というか、そうなってからが面白くなってくる。タイトルもわざと反意語を使っている風刺。社会的にはハリーが主人。でも実際にはサムがハリーに人生を教えるマスターである。ハリー役の子フレディ・ハイモアが少し若すぎるかな?とも思う。舞台やTV映画ではもうちょっと上だった。もうちょっと上の方が伝わりやすいかも。
そしてもう珍しい物でもなくなりましたが...というか、おじきの十八番でもあるかもしれない... ヴィング・レイムスがお尻出してまーす。これがあるから、おじきがキャスティングされたのかもしれないね。いや、違うっしょ。
(4点/5点満点中:DVDにて鑑賞)