Prince of Broadway / 日本未公開 (2008) 928本目
私、こういうの好きなんだなって改めて思わせてくれた作品です。こういうの...とは、ネオリアリズム調の作品。しかも即興で出来た作品。ネオリアリズムという点では世界一大好きな作品「Killer of Sheep / 日本未公開 (1977)」で、即興という点では「Shadows / アメリカの影 (1959)」なのですよ。ハリウッド調のハッピーエンドも嫌いじゃないですが、でもやっぱりネオリアリズムのこれでもか!という力強さが大好き。
ニューヨークのブロードウェイを舞台に起こるドラマ。ブロードウェイでキャッチセールスをしているのが、主人公のラッキー。ラッキーはガーナからの移民。狭いアパートに住み、ベットも粗末な物で寝ている。ラッキーはブロードウェイに来る人々にグッチやナイキやプラダ等のコピー商品を安く売る。ラッキーのボスがレヴァン。彼もレバノン出身のアメラニアンで移民。レヴァンは店番をしている。店番と言っても、表向きは質素な洋服屋さん。しかしそこには隠しドアがあって、その先でコピー商品を売っている。レヴァンはお客が来ると警察かどうか判断しているのです。レヴァンは若いアメリカ人女性と偽装結婚して、グリーンカードを手に入れている。レヴァンはその彼女に感情移入してきてしまったが、彼女の方はかなり割り切っている。それにイライラするレヴァン。そしてラッキーはなんと昔の彼女から赤ちゃんを押し付けられる。名前も知らないし、自分の子供かどうかも分からない。何より、赤ちゃんの育て方なんて分からない。途方に暮れるラッキー。しかしキャッチセールはしなくてはならないし... こんなドラマが即興で行われるんですよ?感想にも書きましたが、BETの評論家は「こういう世界を知らない人にはリアルだと感じるかもしれないが、拡張されている」と書いている。確かに非現実的かもしれない。しかし、非現実的なことが起きるのが現実的だったりしませんかね?
移民同士で助け合う?図式。しかしそこにもヒエラルキーがあるという現実。まさか...という事が起きちゃうのが、ネオリアリズム。これがニューヨークの移民の全ての姿とは思わないけれど、一片ではあると感じた。
レヴァンがDNAの結果をラッキーには見せずに結果を答えて、ポケットにしまってしまうシーンが好き。レヴァンの人間性が見える。
にしても、この赤ちゃんを演じた子が可愛い!彼だけは本物の表情だもんねー。アフリカンレストランで一人になった時の表情は、神!
(4.75点/5点満点中:DVDにて11/23/11に鑑賞)