Cast >> Isaach De Bankole (Otomo), Eva Mattes (Gisela), Hanno Friedrich (Heinz), Barnaby Metschurat (Rolf) ...
Director >> Frieder Schlaich
Writer >> Klaus Pohl, Frieder Schlaich, Roland Klick (uncredited)
Producer >> Thomas Lechner, Claudia Tronnier, Irene von Alberti
Genre >> Drama
Country >> Germany
総合ポイント >> 5/5点満点
Contents >> 5 Performance >> 5 Direct >> 5 Music >> 5
Took my breath away...
1989年ドイツのシュトゥットガルトで誕生日だというのに夜中から職安に向かうアルバート・アマット(イザック・ド・バンコレ)。職安では1人だけ黒人という事もあり嫌味を言われ、せっかく仕事が貰えそうになるが、国籍が無いので駄目になった。その帰りに電車に乗ったが、切符を調べる人達からも切符があるのにも関わらず嫌がらせを受け、思わず彼等を押して怪我をさせ逃げてしまった。そんな時昇進を願う若き警察官ハインツ(ハンノ・フィードリッヒ)がこの事件を追っていた。現場に残された鞄から、アマットの本名はフレデリック・オトモでカメルーン出身でリベリアからやってきた事が分かったが...
ドイツが制作で実際にドイツで起きた事件である。つい最近、ドイツの首相メルケルが「ドイツでの多文化主義は完全に失敗」と発言し物議を呼んだばかり。この映画の主人公フレデリック・オトモはカメルーン出身で、父がドイツ兵と共にカメルーンで戦った事もある。ドイツの前にリベリアに渡り、そこで政治的亡命者となって、ドイツに渡って8年になる。オトモについては映画の中で少しずつ明らかになっていくのも面白い。オトモが警官に追われるようになってヘリコプターを見かけると、オトモがこの映画の中で始めて笑顔を見せる。その時は実に奇妙だなと思っていると、なぜあの時あの笑顔を見せたのか、後で明らかになってくる。その時、なぜか急に胸が締め付けられる。オトモの事を徐々に知れば知るほど、この映画が進むにつれて切なくなるのだ。オトモを演じたイザック・ド・バンコレの静かで冷静な演技がたまらなくなってくる。また追いかける方のハインツを演じた俳優のやはり冷静で的確な態度がこの物語を豊かにしている。
この悲しい息をのむ物語を見た今、メルケル首相の発言が頭を駆け巡る。移民問題は植民地を持ったことのある大国の使命であると思う。オトモも追う警官も出口無しの切迫した状況が迫っていた事は確かだが、それでもこういう風に映画で客観的に見てみると、あのような悲劇を迎える前に食い止める事は出来たと思う。だから余計にこの映画を切なくしているのだ。
(11/12/10:DVDにて鑑賞)