イギリス出身で注目を集めている映像アーティストのスティーブ・マックイーン(名前が既にカッコイイ)の映画長編デビュー作品です。そのデビュー作でイギリスのアカデミー賞にノミネート。新人賞部門では授賞も果たした。さらにはあのカンヌ映画祭でカメラ・ドール(新人賞)をも授賞した恐ろしい新人。話題だけが先行してしまいそうだが...この作品がこれまた一筋縄ではいかない斬新な作品。正直、ビックリ。なぜか分からないが、最近の私のブログネタはう○ちネタが多すぎる。少し反省はしてる。しかし、なぜか見る映画見る映画がそうなのだから仕方ない。今まではお笑いネタとして使われてきたう○ち。「Death at a Funeral(2010)」の時には、下品だ最低だ下ネタだと書きましたが、こちらの作品はそれと対照的に並べた「崇高」とか「高潔」とか「威厳」とか「偉大」とか「気品」とか「高尚」とか「芸術」とか「優秀」の言葉が良く似合います。
物語は1981年の北アイルランド。その地ではイギリス政府とアイルランド統一を目指す者達の間で長年闘争が耐えなかった。メイズ刑務所に入れられた政治犯のIRAのメンバーは、まず討議として刑務所内でのユニフォーム着用を拒否。刑務官はお粗末な布一枚を囚人に渡す。彼等は執拗に過激化していく暴力で権利を奪われていた。彼等は牢屋内の壁一面を自分達の糞で埋め尽くす。ある者はそれがアートの粋にまで達している。尿は牢屋のドアの下の開いた部分からわざと流していた。そんな中、リーダー格のボビー・サンズがハンガーストライキをすると牧師に伝える。
1981年にまだ10代だったけれどマックイーン監督は、このボビー・サンズのニュースを鮮明に覚えているとの事。その時まだ10歳にもなっていなかった私は全然覚えていない。というか北アイルランドの事はU2にはまった15歳頃にようやく何となく知った程度。やっぱり遠い国なのかもしれない。けれど、マックイーン監督の素晴らしさは、そんだけ小さい頃からボビー・サンズの事を知っていたら、映画の中でもボビー・サンズだけに集中してしまいそうだが、それはしていない。この映画を長い事見ないと、誰が主役だか分からない程だ。ボビー・サンズがこの映画の主役だと分かるのは、途中のカット無しで20分近くも会話しているシーンだ。途中で片方の俳優のアップとか入れれば、カットで上手く繋げるのにそんな事はしていない。こんな映画史に残るような大胆さが、余計に俳優をやる気にさせているのだと思います。ボビー・サンズを演じたミヒャエル・ファスベンダーはど根性俳優です。その長い会話のシーンを相手役の俳優と一緒に住み込みで毎日10回から15回も練習した上、過酷なダイエットにも耐えました。彼が「スパイダーマン4」のスパイダーマンにも名前が挙がっているみたいですが、実際になったらかなり今までとは違う斬新なスパイダーマンになるでしょうね。
その20分も続く会話のシーン以外には、あんまり...というか殆ど台詞が無い。さすが映像アーティストですね。映像だけで、過酷さ、冷たさ、汚さ... そして人生が伝わってきます。でもボビーがふと言った台詞「俺だって田舎に生まれてのんびり農家とかやりたかった」という台詞がグサっと来ました。映像と台詞の使い方が絶品です。
さてこのアメリカ版のDVDがあのクライテリオン・コレクションからの発売。当時イギリスで放送されたProvosのスペシャル番組まで収納。凄い!クライテリオンは出来る子だ。さすがだ。
(5点満点:DVDにて鑑賞)