今年に入ってから、多くの(ほぼ全てと書いてもいいのかもしれない)ブラックムービーが全米興行成績で1位を獲得している。楽しみにしていた「Diary of a Mad Black Woman」だが、メジャー俳優が出演している訳でもないので、1位にはならないだろうと思っていたのに、実際は2位の「Hitch」の3570館の半分以下の1483館の公開で、第1位!これには、本人達も驚いた事だろう。私はてっきり、キアヌ・リーブスの最新作「Constantine」が1位になるものだと思っていた。アメリカには、人種を超えた根強いSci-Fiファンが多いからだ。しかも「Diary of a Mad Black Woman」はLions Gateが配給した。ハリ・ベリーがオスカーを獲得した「Monster's Ball/チョコレート」と同じ配給会社だ。限定公開が多いのもこの会社。十分な宣伝も行ってなかったように感じたし。その中での1位は立派。
F・ゲイリー・グレイの「Be Cool」や、「Beauty Shop」が公開され、1位は逃したが、2位や3位と好成績を収めている。先々週公開された「Guess Who」は1位の成績を収めた。
面白い記事を見つけた。今年の黒人俳優達のパワーを感じるという記事。その中で近年の1月〜2月に公開されたブラックムービーの興行成績を載せていた。
2005年
"Hitch" $124 million
"Are We There Yet?" $76 million
"Coach Carter" $65 million2004年
"Barbershop 2(未)" $65 million
"You Got Served(ユー・ガット・サーブド)" $40 million2003年
"National Security(ナショナル・セキュリティ)" $36 million
"Cradle 2 The Grave(ブラック・ダイアモンド)" $34 million
"Biker Boyz(未)" $22 million2002年
"Snow Dogs(スノー・ドッグ)" $81 million
"John Q(ジョンQ)" $71 million
今年はいつもよりも稼いでいるのが一目瞭然。
ただ気になる点がある。今年はブラックムービーの公開が、ここ1月と2月に集中していて、大きな公開は今年はあまりない。そして、所謂ブラックエクスペリエンス(黒人であるが故の経験)を扱った作品が少ないのも興味深い。ウィル・スミスの「Hitch」やアイス・キューブの「Are We There Yet?」は、主役が黒人でなくてもありうる物語だ。ウィル・スミスの映画の殆どがそうだったように、ウィル・スミスは黒人で主役だけれど、別にそれが映画に反映される映画ではなかった。ウィル・スミス現象が、多くの黒人俳優にも広まった結果が、2005年なのかもしれない。ウィル・スミスのようなクリーンカットな黒人だけでなく、アイス・キューブのような保守的な人々が拒絶しそうなラップ出身者(しかも、元々ギャングスタラップで売っていたキューブが)が、多くの人々に受け入れられるようなったのが、興味深い。
第1次ブラックムービーが70年代のブラックスエクスプロイテーションのようなアクション映画なら、第2次ブラックムービーは80年代終わりから90年代初頭のスパイク・リーや、ロバート・タウンゼントに代表される自分色で主張する映画なら、第3次ブラックムービーブームは、今のような「ブラックムービーじゃないけれど、黒人が主役の映画」となりそうだ。