SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて


*10/15/2018に「ブラックムービー ガイド」本が発売になりました!よろしくお願いします。(10/15/18)

*「チャールズ・バーネット エブリデイ・ブルース」のパンフレットに寄稿。(2/7/26)
*映画秘宝 3月号にて、ベスト10に参加。(1/21/26)
*映画秘宝 12月号にて、30周年ベスト10に参加。(10/21/25)
*『アメリカ黒人映画傑作選』コメントに寄稿。(4/18/25)
*映画秘宝 3月号にて、ベスト10に参加。(1/21/24)
*『クワイエット・プレイス:DAY 1』コメントに寄稿。(5/31/24)
*映画秘宝 4月号にて、ベスト10に参加。(2/21/24)
*『サンクスギビング』のパンフレットにコラムを寄稿。(12/21/23)
*『コカイン・ベア』のプレスシート&コメント&パンフレットに寄稿。 (09/27/23)
*ブルース&ソウル・レコーズ No.173 ティナ・ターナー特集にて、映画『TINA ティナ』について寄稿。 (08/25/23)
*『インスペクション ここで生きる』へのコメントを寄稿。(8/01/23)
*ミュージック・マガジン1月号にて、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のレビューを寄稿。(12/2/22)
*12月2日放送bayfm「MUSIC GARAGE:ROOM101」にて『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』についてトーク。(12/2/22)
*10月7日より上映『バビロン』にコメントを寄稿。(10/6/22)
*奈緒さん&風間俊介さん出演の舞台『恭しき娼婦』のパンフレットに寄稿。(6/4/22)
*TOCANA配給『KKKをぶっ飛ばせ!』のパンフレットに寄稿。(4/22/22)
*スターチャンネルEX『スモール・アックス』オフィシャルサイトに解説を寄稿。(3/29/22)
*映画秘宝 5月号にて、連載(終)&最後のサイテー映画2022を寄稿。(3/21/22)
*「This is Charles Burnett チャールズ・バーネット セレクション vol.1」にコメントを寄稿。(3/19/22)
*キネマ旬報 3月上旬号の『ドリームプラン』特集にて、ウィル・スミスについてのコラムを寄稿。(2/19/22)
過去記事

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Magazine Dreams / ボディビルダー (2023) 1909本目

I'm a bodybuilder. Bodybuilders can't have scars.


邦題は分かりやすく『ボディビルダー』。主役はボディビルダーなのだが、原題の『マガジン・ドリームス』が物語に近く、ボディビル系の雑誌の表紙を飾りたい主役のボディビルダー。と書いても、一筋縄ではいかぬ作品。監督は『HOT SUMMER NIGHTS/ホット・サマー・ナイツ』のイライジャ・バイナム。内向的な主人公を描くのがとても上手い。そんな主人公を演じたのがジョナサン・メイジャーズ。実は、本作品、公開前からジョナサン・メイジャーズのオスカー作品になるのでは? と言う声が非常ーーーに高かった作品。だが、メイジャーズのタクシーでの一件で、作品がまさかのお蔵入りになりかけた。そこまで評判高かったのに... ネイト・パーカーの『The Birth of a Nation / バース・オブ・ネイション (2016)』と状況は一緒。なので全米での公開もひっそりと。

キリアン・マドックス(ジョナサン・メイジャーズ)は、過去のせいで内向的な性格だったが、雑誌の表紙を飾るボディビルダーに憧れており、大会などに出て頑張っていた。特にヴァンダーホーン(マイク・オハーン)に憧れ、何度もファンレターを書いて送っていた程。家では、祖父(ハリソン・ページ)の介護をし、スーパーでバイトしていた。そのバイト先でレジをしているジェシー(ヘイリー・ベネット)に惹かれていた。キリアンは、ボディビルを極める為にステロイド剤注射などに手を染めていき、怒りをコントロールできなくなっていたが...

何でしょう、この閉塞感。エリック一家を描いた『アンアンクロー』を鑑賞後にも感じたこのヒリヒリ感。痛々しい、とにかくこう胸が締め付けられる思い。しかも、キリアンには同情してしまう。何と言うか、観客はキリアンを冷たく突き放すことが出来ない。祖父を大事に介護しているというのも絶対にある。ステロイドに頼ったり、有名になりたいからと短絡的な思想になる自己責任の弱さみたいのはあるけれど、どんな状況でも自分の体に傷つけないとか、大会に出場するという大胆さと強さみたいもある。彼の不幸は大抵が彼のせいでないのもある。面白いのが、本作品の時代設定はハッキリしていなかったと思うが、キリアンの洋服やGoogleのロゴなどから、ちょっと前なのは分かる。今だったら、ChatGPTでもうちょっとだけ配慮のある回答が得られるだろうが、Google検索だとそうはいかない... というのも面白い。そして正直、これ以降、ジョナサン・メイジャーズはキリアンにしかみえない。メイジャーズが笑っているのを見るだけで、「キリアン、幸せそうで良かった」と思ってしまう程、キリアンとメイジャーズが一体化している。

本作品の一番好きなのが希望。祖父の存在が大きい。よく聞いてみると、祖父は普段からキリアンに優しい言葉を掛けている。それがステロイドにも負けないキリアンのブレーキになる。希望がある。ふわっと最後に包み込んでくれる。他の作品では感じられない感覚。だから本作品は中毒になる。

(4.75点/5点満点中)
Magazine Dreams / ボディビルダー (2023)

Being Eddie / エディ・マーフィ (2025) (VOD) 1911本目

That's who I am


「80年代を代表するスーパースター、エディ・マーフィ」と、書いてしまうと、かなり雑だなと最近は感じるようになった。確かに80年代を代表するが、それだけじゃない。確かにキャリアが落ち込んだ時はあったかもしれないが、不死鳥のようにまた飛び上がってくる、それがエディ。私にとっても、エディはスーパースターだった。それこそ、最初に黒人だと意識してスクリーンで観たのが、エディだった。中学時代にロードショーとかスクリーンといった映画雑誌を買っていたが、エディは付録となった唯一の黒人スーパースター。今でも覚えているし、実は今でも持っている。家のどこかの段ボールで眠っている筈。何十回も引っ越しを繰り返してきたが、捨てられない思い出。エディが出ているからと、観に出かけた『The Golden Child / ゴールデン・チャイルド (1986)』。意味が分からなかったが、エディがこういう作品の主役を張れるスーパースターなのは分かった。

ずっと賃貸だったエディ・マーフィが、ロサンゼルスに豪邸を建てた。その豪邸でリラックスしたエディが自分の人生観やキャリアを語っていく。

かなり幼少の頃から、コメディアンになって18歳にはスーパースターになってみせる、と決めていたエディ・マーフィ。それこそ私が映画雑誌を買い始めた同じ年頃に、そのような意志が既にあったのである。そして、見事... 18歳とはいかなかったが、19歳には文字通りスーパースターになっていた。かなりの早熟であった。なのに早熟ゆえの過ちみたいのもなかった。元の性格にもあるのだろう。そして家族に恵まれている。義父も良い人だった。法的トラブルに巻き込まれて、作品が駄目になるみたいな迷惑行為はなかった。30代半ばで一度だけスキャンダルがあったが、今回はもちろん触れられていない。自宅まで披露したエディ・マーフィの意のままにドキュメンタリーが進んでいく。本作は、エディの思うままではあるが、自分ではないことには赤裸々に語っている。あまり自分の感情を見せないエディだが、兄チャーリー・マーフィについては少しだけ感情的になっている。若くしてスターになっただけに、自分の全てをさらけ出してしまう恐怖を一番分かっているのかもしれない。その兄チャーリーが、エディにとっての「ブラザーズ・キーパー」。チャーリーは、小さい頃からエディを守ってきた。「エディのジョークで笑わない奴は殴ってやる!」という勢いで兄としてエディの楯となった。

面白いコメディアンになるために、最初は物真似をずっと続けて、少しずつ自分のコメディを出していくようにしていたと語っていた。物真似は今でも一番かと思うほどに上手い。前に兄チャーリーがデイヴ・シャペルの番組でリック・ジェームズやプリンスとの思い出話を面白おかしく語っていたが、エディの思い出話も最高だ。特に、ジェームズ・ブラウンのお金の話、ジェシー・ジャクソンの勘違いなど、物真似を交えて話す姿は、やっぱり骨の髄からコメディアンだと感じる。ただ腹話術は下手ぽい。小さい頃からやっているし、物真似は上手いので上手くなる可能性はある。本作では、本気を出してないのかもしれない。そして、エディはあまり人種問題に積極的ではないように思えたが、『Boomerang / ブーメラン (1992)』が黒人ばかりだと批判された時に、『Boyz N The Hood / ボーイズ’ン・ザ・フッド (1991)』を使った言い返しはとても納得できる話だった。そしてやはりオスカーを取れなかったことが悔しいのだろうなとは感じた。『Dreamgirls / ドリームガールズ (2006)』と『Dolemite Is My Name / ルディ・レイ・ムーア (2019)』で取るべきだったと私も思う。

だがしかし、オスカーが無くなって、エディはスーパースターであることは変わらない。これからもまだまだチャンスはある。エディはまだ私達の前で全ては晒しだしていない。他にもスーパースターの面白話もまだたくさんあるのを知っているし、とにかくエディはまだまだこれからなのである。また飛び上がってチャンスを狙うのがエディなのだ。

(3.75点/5点満点中)
Being Eddie / エディ・マーフィ (2025)

お知らせ色々

お知らせ色々

最近、浮上出来ずにごめんなさい。

まずは、大事なお知らせから。30周年を迎えた映画秘宝 12月号で30年分のベストテンに参加しております。30周年おめでとうございます🎊。これは... かなり読んで欲しいです。「そうきたか!」or「それもあったかー」と思ってもらえるベストテンになっていると思います。意外とあまり被っていない。④はもっと被るかと思ったけれど誰も入れてなかったぽい。1995年からの30年。色々ありましたねー。1990年からの30年だと、またガラリと違う作品が入るかと。なにせブラック・フィルム・ルネッサンスと言われる1991年も入りますからねー。1995年からだと90年代の作品がなさそうで、あるんですよ! 逆に2000年代は少ないんじゃないかと思ったら、ありましたね! もちろんベストテンに入れたい作品はたんまりありました。逆に「あれ入ってないんかーい」もあるかもしれません。特にこれ。ね、なんで入れなかったんだろう? ベストテンは毎回断腸の思いです。今回は30年分の重い思いがあります。是非是非。12月号は、10月21日(火)発売予定とのこと。よろしくお願いします。しかし30年で10作は辛かったー。今日の写真は1994年作品のため入っておりません。わざとズラしました。

それで、ずっとご連絡を忘れていたのですが、ホームページのアドレスを変えております。正確に書くならば、変えて、変えて、変えました。もし万が一、億万一、ブックマークなどをしている心優しいお方がおりましたら、変更をお願いいたします。ブラックムービーという検索語でも出てくるかな? と、出て欲しい。
SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

前のは消滅しております。今回もフリーなので、制約はありますが、ひとつ前のに比べると容量が決まっている&3か月ごとの更新がある位なので、私が3か月の更新を忘れなければ、無くなることはないかと思います。ご不便をお掛けいたしますが、よろしくお願いいたします。また、それに伴い、昔使っていたメールアドレスも消滅しております。今は、gmailのを使っておりまして、gmailの方からお願いいたします。新規の方はこちらからお願いいたします☞ https://blackmovies.stars.ne.jp/mail1.php

そしてツイッターは、かなり消極的です。ここのはてなブログを更新した時にお知らせしておりますが、それも最近考え中です。何せ更新しないから反応もないっす。

一番最新は、Blueskyで。☞ @leratoanz.bsky.social on Bluesky

日本のドラマやスポーツの話題など、杏レラトの名前を使わないチラシの裏的な戯言は、タイッツーで書いてますが、MLB以外のアメリカスポーツはタイッツー誰も書いていないぽいので、アメスポだけはツイッターに戻ろうかと思ったり、悩んだり。 ☞ 杏レラト(@leratoanz)さん | タイッツー

諸々とよろしくお願いいたします。消極的に見えるかもですが、絶賛地下で活動中でございます。ここも中々更新できずに申し訳ございません。Blueskyは予約投稿が未だできないので、何気にこのブログかホームページが一番手っ取り早いのかもしれません。
よろしくお願いいたします。

Highest 2 Lowest / 天国と地獄 Highest 2 Lowest (2025) 1908本目

I'm getting DMs like I should've been the one that got snatched.


Malcolm X / マルコムX (1992)』をはじめとする作品で幾度も共演してきたスパイク・リー監督とデンゼル・ワシントン。今回でなんと5度目となる。本作に至った経緯は色々な所で話されており、その度にちょっと違ったりもするが、私が見たのはデンゼルがプロモーションで出演した番組で語っていたこと。この黒澤明監督『天国と地獄』のリメイク作品の脚本が先にデンゼルの元に届いていて、読んで気に入ったデンゼルは、「黒澤作品ならば、スパイクがやるべきだ」と、スパイクに依頼したという。そう、スパイクは誰もが知る無類の黒澤明ファンである。監督デビューして間もない頃、海外の映画祭に出演する黒澤明を追ってサインを貰った程である。そんな信頼関係のある2人が挑んだ意欲作。

ニューヨークのブルックリンブリッジが見下ろせる絶景が堪能できる高級ペイントハウスには、音楽レーベルを持つデイヴィッド・キング(デンゼル・ワシントン)と家族が住んでいた。だが、ビジネスは今は微妙で過度期。そんな時にティーンエイジャーの息子トレイ(オーブリー・ジョセフ)を誘拐したと電話が入る。警察がすぐに来て対策本部が設置され、身代金を要求されるが、事態は思わぬ方向へと向かっていき、デイヴィッドは難しい選択を迫られる...

黒澤明の『天国と地獄』はドキドキハラハラするスリラー作品でありながら、持てる者と持たざる者や麻薬などの社会問題も取り込み、観客を共感させた。あの瞬間(時代)だけでなく、今でも興奮するトリックがあった。そして、警察官たちが次第に被害者に肩入れし全力を尽くすことで、こちらも感情的に共感させられたのだった。今回のリメイクでは、その警察官と被害者側に物凄く高い壁がある。警察官たちからの熱意は感じない。恐らく、黒人と警察官の関係性を反映しているのだと思われるが、その分、観客は映画の出演者たちの感情と離れていってしまう。そしてエイサップ・ロッキーが演じたラッパーが少しだけ時代遅れで偏見に満ちていた描写だったのが残念。せっかくエイサップ・ロッキーという新時代のラッパーを引っ張ってきたのに。

だが、本作にはスパイク・リーデンゼル・ワシントンらしさが詰まっている。スパイクの強みは誰にも負けないニューヨーク描写。『天国と地獄』の原作は、エド・マクベイン「キングの身代金」。ニューヨークに舞台が戻った。ニューヨークを魅せることは、スパイクの真骨頂であろう。冒頭からブルックリンブリッジを見下ろす超豪華なペイントハウスに胸が弾んだ。あのネオンに『スカーフェイス』も感じてしまった。ロージー・ペレスにニコラス・タトゥーロなどの懐かしいスパイク・オール・スターズがニューヨークらしさに華を添えているのもらしさだろう。セリフや写真やアートでも、黒人芸術家やアーティストにアスリートの名前が飛び交い、久々に『ブラックパンサー』まで登場する。そしてそれらのセリフを畳みかけるデンゼルのセリフ回しは、彼独特のものである。そして超人ではなく、人間だからこそできるヒーロー像を彼らしく演じ切っている。

5度も一緒にやってきたからこその彼らの信頼関係が随所に伺える。ハリウッド制作としてはこれが今できるベストのリメイクなのかもしれない。ただ、私はスパイクとデンゼルならば、もっとすごい作品を作れることも身をもって知っている。

(4点/5点満点中)
Highest 2 Lowest / 天国と地獄 Highest 2 Lowest (2025)

War of the Worlds / ウォー・オブ・ザ・ワールド (2025) (VOD) 1907本目

”You don't have any power"

映画評論家の評価を数値化するサイトRottenTomatoesにて、まさかの0%*1という数字を叩きだしてしまって話題となったアイス・キューブ最新作。しかも、あのH・G・ウェルズ宇宙戦争』が原作で、現在まで幾度も映画化されている。最近でも2005年にスティーヴン・スピルバーグ監督xトム・クルーズ主演でどーーーーんばーーーーーんと超大々的に『宇宙戦争』が公開。私達にはこの印象が強い。そして、アサイラム(所謂B級)でも数作リメイク作品が作られている。そんな中でアマゾンとユニバーサルが組み再び。

アメリカ合衆国国土安全保障省(DHS)の監視プログラムで働くウィリアム・ラッドフォード(アイス・キューブ)。仕事がてらに妊娠中の娘フェイス(イマン・ベンソン)や息子デイブ(ヘンリー・ハンター・ホール)の監視もしていた。NASAに務める友人サンドラ(エヴァ・ロンゴリア)から雷雲の様子が異常だとの報告を受けた。そして「ディスラプター(破壊者)」と名乗る者から脅迫を受け、ラッドフォードは居場所を突き止め、FBIに捜査を指示する。それと同時に空から異生物が流れ落ちてくる....

そこまで言われるほど悪いか? そこまでではない。正直、この映画よりも面白くない、映画としてなしていない、物語が破たんしている、なんだこれ...etc な作品は沢山観てきた。恐らく酷評を受けたのは、あの『宇宙戦争』ではない、アサイラム作でないのに拭いきれないB級感、そして今やオスカー作品すら出したアマゾンがこれ? だろう。酷評の中には、アマゾンの宣伝プロパガンダというのもあった。確かにそれは強く感じる。現代のテクノロジーにアップデートはされていたが、それゆえにアイス・キューブ(やその他大勢)が部屋の中にこもりっきり。なので表情や動作がとにかく大袈裟になるし、椅子を立つことが最大の動きになってしまう。アイス・キューブの代わりにやたらと動くのが、コンピューター画面。そしてセリフは「オー・マイ・ガー」ばかり。ラッパー時代から怒り顔で有名になったアイス・キューブ。真打ち登場で、今回はそれが飽きる程見られるが、そればかりなので正直飽きる。

大事なことなので太字にしておく。良くはない。だが、そこまで悪いものでもない。最後まで苦しまずにちゃんと観ることができる。ただ話題は一過性に過ぎないが、評価や作品は一生残る。これでいいのか、アイス・キューブ...

(2.25点/5点満点中)
War of the Worlds / ウォー・オブ・ザ・ワールド (2025)

*1:現在は2%まで上昇 8/26/25現在

Nickel Boys / ニッケル・ボーイズ (2024) 1905本目

Twenty long years on a chain gang
Sweatin' and bustin' rock
Judge, he come from Memphis
Put me in the pen
If I ever see his face once more
He never get home again

Sidney Poitier sang in "The Defiant Ones"


アカデミー賞の作品賞や脚色賞にノミネートされ、噂には聞いていたが、中々観ることが出来なかった。それを今かなり悔やんでいる。もっと早くに出会いたかった。原作は、出す本はベストセラーになってピューリッツァー賞を2度も受賞(本作の原作も)、そして映画化も早々と決定する今や飛ぶ鳥を落とす勢いのコルソン・ホワイトヘッド。前作「地下鉄道」は、『Moonlight / ムーンライト (2016)』でオスカー作品賞を手にしたバリー・ジェンキンス監督がテレビシリーズ化。今回は、『Hale County This Morning, This Evening / 日本未公開 (2018)』でオスカーのドキュメンタリー映画賞にノミネートされたラメル・ロスが監督を担当。ドキュメンタリーにして超誌的で、超独創的で、超個性の塊だったラメル・ロスが、この心揺さぶる小説をどのように演出するのか、正直想像は全くできなかった。「ニッケル」はフィクションだが、実在したフロリダの少年院がモデルとなっている。

公民権運動が続く60年代初旬のフロリダ州タラハシー。エルウッド(イーサン・ヘリス)は、祖母(アンジャンヌ・エリス)と暮らす真面目な高校生だった。キング牧師に傾倒し、学校の成績は優秀で大学進学を勧められていたが、学費が心配で、取りあえず1年は学費が免除される技術学校を紹介された。学校に行く途中に見知らぬ人に車に乗せてもらったが、その車が警察に止められ、エルウッドは少年院「ニッケル」に入れられてしまう。そこで出会ったのがターナー(ブランドン・ウィルソン)だった。ニッケルには酷いしごきと虐待が蔓延っていた...

確実に好き嫌いが分かれるタイプの作品であろう。分かり易く、そして原作通りでないと駄目という人は全く受け付けないはずである。英語の「Subtle」というのがピッタリ。「かすかな」「ほのかな」「巧妙な」「精巧な」「敏感な」「とらえがたい」「つかみどころのない」「不思議な」、そんな意味をすべて含んでいるのが本作である。原作から「巧妙に」削ぎ落したかのような印象を受ける。だが原作を読むと、意外にも殆どをそぎ落としてはいない。ただ説明セリフをほぼ入れていないので、そのような印象になるのだ。元々写真家というのもあるのかもしれないが、何気ない写真や音や表情がセリフの代わりになって「精巧に」物語を語っているのである。それほどまでに研ぎ澄まされた映画なのである。直接的な暴力描写は、「かすかな」描写に過ぎない。それらは一見「とらえがたい」が、それでも観客は「敏感に」彼らの痛みを感じるのである。ここまで「かすかに」簡潔に描きながらも、「不思議と」原作の本質は全く失われずに全てを描き出している。抑圧された少年たちが何を思い、生活していたのか? まだ子供だったのが良く分かる。その子供ゆえの瑞々しさまで映像で感じられるが、それが余計に暴力や抑圧という彼らを蝕むそびえ立つ大きな壁が浮き彫りにしていく。子供なりに考え、そしてキング牧師を通じて行動に出る。キング牧師フォロワーである私には、どうにもならない感情がうごめき、鑑賞後にずっと考えてしまう。

コルソン・ホワイトヘッドという天才小説家が伝えたかった物語を、ラメル・ロス監督は個性で自分の映画作品にしている。ロスにしか出来ない作品であり、ホワイトヘッドの物語である。ラメル・ロス監督はブレていない。もうただただ感じるしかなかった。

(5点満点)
Nickel Boys / ニッケル・ボーイズ (2024)

Luther: Never Too Much / 日本未公開 (2024) 1906本目

What a world for the lonely kind
Sometimes I feel I'm gonna lose my mind
Can anybody tell me just where to find
Any love, any love?
Luther Vandross "Any Love"


ルーサー・ヴァンドロスの名前を聞くだけで、私は甘酸っぱさで胸が一杯になるソウル好きだ。自分の若い青春の頃を思い出すだけでなく、ルーサーという稀代の歌手を正当に世間は評価していなかったんじゃないかという考えがそうさせる。いや、ちゃんと評価されていた。だがもっともっと評価されても良かったんじゃないかと今更ながらに感じてしまう。「稀代の歌手」も、今や星の数ほど存在している。ルーサーの場合、歌手というだけでなく、コンポーザーとしても優れていたし、プロデュースやバックボーカリスト、とにかく音楽に関することにはマルチで優れていた。何と言うか、ルーサーを上手く表せる言葉が見つからない。そんなルーサーのドキュメンタリーを、俳優・歌手であるジェイミー・フォックスが製作総指揮。監督には、以前に公民権運動家ジョン・ルイスのドキュメンタリー『John Lewis: Good Trouble / 日本未公開 (2020)』を制作したドーン・ポーターが担当。サンダンス映画祭でプレミア公開後にCNNとオプラ・ウィンフリーのTV局OWNが放映権利を獲得してTV放映された。

ルーサー・ヴァンドロスがライブリハーサルで歌いながら色々と指示を出している。実際のライブ映像に移り、そしてルーサーに近かったマーカス・ミラーナット・アダレイ・Jr.などがルーサーを語っていく。

切ない。やはり世間はルーサーを正当に評価できていなかった。それ故にルーサーが蝕まれていたことが、このドキュメンタリーで一番に感じる。音楽とは全く関係ない彼の体重の変化、そしてプライベート。彼の体重がどう変化しようと、どのような生活スタイルでも、彼の唯一無二の美しいテナーは微動だに変わらない。プライベートに関しては、ファンのために何も触れなかったことが分かる。誰よりも恵まれた歌うという才能で、人々を鼓舞することを一番に分かっていたからだ。そんなルーサーがとても愛おしい。人それぞれに流儀があって、それで良い。彼の歌を聴ければ、私達は幸せだ。だけどやっとグラミー賞という一番の場所で評価された時に、その喜びを隠さなかったルーサーが愛おしい。人間ルーサーを見た気がして安心した。

ここまで観ても、やはりルーサー・ヴァンドロスに相応しい説明や二つ名や異名が今でも見当たらない。史上最強のミュージシャン、もう2度とは現れない天才ソングライター、歌に愛されたシンガー、歌の神から祝福された歌手... 大袈裟に聞こえる二つ名ですら、どれもルーサーには粗末で足りない。だが、本作のお陰で、愛おしい人間ルーサー・ヴァンドロスをホンの少しだけ観れた気がする。

(4.5点/5点満点中)
Luther: Never Too Much / 日本未公開 (2024)