もうだいぶ前となってしまったけれどウィスコンシンで選挙が行われた日、私はいつものように選挙結果の放送に噛り付いて見ていた。仕事を終えた夫が戻るなり「もう見てられないよ」と言った。私はてっきり選挙にはウンザリして言った言葉なのかと思っていたら、夫は続けて「どうせ黒人の大統領は生まれないんだ。絶対に何かをこじつけられて、駄目になっちゃうんだ」と、後ろ向きな発言をした。いつもは本当に羨ましい位に前向きな発言ばかりする夫なのだが、こういう黒人問題には後ろ向きな発言をする時がある。なぜだろう??この悲しすぎる発言を自分なりに考えてみた。
理由は幾つか考えられる。
夫の祖先がアメリカの大地に足をつけてからのその歴史。
奴隷を開放されたが、その後の暮らしはかなり厳しかった。この前見た「The Autobiography of Miss Jane Pittman / ジェーン・ピットマン/ある黒人の生涯 (1974)」でも、その解放後の苦悩は描かれていて、プランテーションを出た自由黒人が白人に襲われるシーン等あった。
そして後「40エーカーとラバ」もある。南北戦争で北軍として戦ったウィリアム・シャーマン将軍は、奴隷解放宣言後の2年後に「シャーマンの特別フィールド命令第15番」と題した軍の命令でサウス・カロライナとジョージア、フロリダの大西洋に面した400,000エイカーをその地区に居た自由となった元奴隷達約10,000人に分けるという内容だった。しかしリンカーン大統領が暗殺され、別の人が大統領の座を引き継いだ時にその軍命令は無効とされ白人に土地を戻した。
その後も「分離すれど平等」、ジム・クロウ法に、キング牧師の出現と暗殺、マルコムXの出現と暗殺、そして戦争とその後の黒人の生活。いつも希望が生まれは無くなり... 若いとはいえ、うちの夫にもこういう歴史は染み込まれていると思う。
でももっと個人的レベルでも考えてみた。
うちの夫は高校時代はフットボールをしていた。うちの夫が所属している頃のチームは、今でもWikiにその活躍が載っているほどの人気のあるチームだった。その中でも夫はスター選手...という訳ではないけれど、それでも進路を決める頃には幾つか小さい大学の奨学金の話も貰っている。所が信用していた白人のコーチが、その大学のスカウトに対して、うちの夫に対する虚位の評価を話して、全てが駄目になっている。たまたまその話を聞いてしまった夫はかなりショックだったらしい。真面目にやってきた事を他人によって一瞬にして台無しにさせれた。
歴史と現実がそういう希望とか信頼に対する恐怖を生んだと思うのだけど、もちろんうちの夫のように後ろ向きな人ばかりじゃない。CNNによく登場するドナ・ブラジルという女性は、オバマと以前に大統領選に出馬したジェシー・ジャクソンを比べられ、他の出演者の「今回の出馬は(ジャクソンの時と違って)真剣」という発言を聞き、「私達はあのジャクソンの出馬の時だって真剣だった」と強い口調で希望を話していた。
そんな夫は「政治なんて興味ないね」と言いつつ、オバマの演説を聞くときには目をキラキラさせて見ています。今回こそは裏切られませんように。