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Queen & Slim / 日本未公開 (2019) 1733本目

もうそうなるしかない2人『Queen & Slim』

私がこの『Queen & Slim』を観た直後に思い出した作品がタランティーノの『トゥルー・ロマンス』だ。疾走感とか痛々しさがあって、『トゥルー・ロマンス』と似ている。主演は『Get Out / ゲット・アウト (2017)』や『Black Panther / ブラックパンサー (2018)』のダニエル・カルーヤ。今回初めて大きな役に抜擢されたジョディ・ターナー・スミスがお相手。監督は、ビヨンセの『レモネード』が話題となったミュージックビデオ出身のメリーナ・マツーカス。彼女にとって長編デビュー作となった。AFI祭でワールドプレミア。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーやミュージシャンのスタージル・シンプソン(元川崎住民!)とかの出演も話題。

オハイオ州クリーブランドのダイナーで、スリム(ダニエル・カルーヤ)とクイーン(ジョディ・ターナー・スミス)は食事をしていた。2人はいわゆるヤリモク用アプリであるティンダーで知り合ったばかり。しかし、クイーンはその気を失せてしまい、スリムが車で送っていた。運転を少し誤り、蛇行したところで、警察に止められてしまう。スリムは大事(おおごと)にせずに、警察に従うことでやり過ごそうとしたが、弁護士であるクイーンはそれを許さなかった。クイーンの態度にイラついた警官は、運転手のスリムを外に出し、ボディチェックやトランクを調べるなどして、2人をイラつかせた。そして、スリムはつい「寒いから早くしてくれませんか」と言ってしまい、それが警官の逆鱗に触れてしまう。その直後、2人はクリーブランドを南下し、クイーンのおじ(ボキーム・ウッドバイン)がいるニュー・オリンズへと向かっていた...

そう、この映画の面白さは、最初から愛し合うカップルではなかったという所。お互いの第一印象は最悪だ。まるで日本の少女漫画的展開なのです。お姫様抱っこもあるし!でも展開やお姫様抱っこだけで、スリムがSキャラとか王子キャラとかハイスペックとかいう少女漫画的キャラではない。でも、アメリカの男子キャラあるあるの一つ、キリスト教信仰心熱いキャラではある。車のライセンスプレートに「Trust God(神を信じろ)」なんてつけているくらい、かなり相当熱心。スリムはハイスペックではないものの、徐々に分かる部分もあるけれど、割りと良い所の息子。上流ではないけれど、中流階級の出身ぽい。一方、クイーンの方は割りと面倒臭い性格ぽさがあった。それでも弁護士までなったガッツのある女性ではある。そんなちぐはぐな2人が、6日間の旅で知り合い、そして恋に落ちていく訳です。全ては最初から判断を間違えていた...としか、言えない。だから、もうそうなるしかないよねって感じで物語は進んでいく。6日間、恐らく彼ら2人はいつもより大胆で冒険心に満ちていた。でも、やっぱり全ての判断力が欠如している。だが、そんな2人を周りの人々...とりわけ黒人には英雄化してしまう。そんな様子を現代のソレにそのままはめ込んでしまっているのが面白い。ブラックパンサー党だと勝手に判断されたり、そのまま英雄のまま持ち上げられていたりする。絶対に英雄ではないのに。判断を誤っただけなのに。その辺りを意図的に描いていたとしたら、もっとこの作品を好きになれたかもしれない。でも、ジュニア(ジャヒ・ディアロ)を描いたことは、少し意図的に描いているかもしれないとは思った。という点で、この作品は単なる恋愛ロードムービーとも違うのだ。

この作品で一番好きなのが台詞。とても素晴らしい。物語以上だ。最後は上手くて思わず涙がこぼれる。こういう疾走感のある作品には、ああいう熱い出来過ぎな台詞が決まる。でも主人公の2人は熱いというより、クールなのも良い。どことなく冷めている。2人の身長もちぐはぐなのも良い。2人の関係性を表しているようだ。ちなみに今日の写真のシーンは最高なので、楽しみにして欲しい。そして今日の私の決め台詞(結びの言葉)も、このシーンから。ボキーム・ウッドバインのおじさん役も良い。ボキーム・ウッドバインはいつも印象的だ。イラク戦争でおかしくなったけれど、姪っ子を思う気持ちだけは正気。ダサいピンプ役がハマっている。『Pose』にも出ているインディア・ムーアも雰囲気バッチリで良い。

この映画には正しい判断力が必要だ。彼らを英雄視しない判断力。英雄ではないけれど、あのような仕打ちをされるべきではなかった愛おしい2人がいる...その証拠がこの作品に残っているのだ。

(4.5点:1733本目)
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