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インディ映画の面白さと良さを堪能出来る少年成長期『Dayveon』

サンダンス映画祭でプレミア上映されたインディペンデンス映画。サンダンスのサイトでの写真の感じとか、プロットとか読んで面白そうだなーととても気になっていた作品。知らない間にメディア発売されていた。監督はパキスタンからの移民でこの映画の舞台になっているアーカンソー州に住んでいるアンマン・アッバス。出演している俳優は恐らく地元でキャスティングされた人々で、映画初体験者ばかり。同じアーカンソー生まれの『スモーキング・ハイ』のデヴィッド・ゴードン・グリーン監督もプロデューサーの一人として参加。

アーカンソー州リトルロックの郊外に住む13歳のデイ・デイことデイヴィオン(デヴィン・ブラックモン)は、兄を失ったばかりで塞ぎ込んでいた。離婚した両親の母は兄の死を受け止められずに精神的な病気の為、今は姉キム(チヤシティ・ムーア)と姉の彼氏ブライアン(ドントレール・ブライト)とその2人の赤ちゃんと共に暮らしている。やる事もなくブラブラ。兄も所属していた地元のギャングのブラッズたちがたむろしている所に自分も真っ赤な服で行くが、ムック(レイシオン・バッキングハム)をはじめとするみんなにイジメられただけだった。近所の友人ブライデン(コーデル・ジョンソン)とブラブラするが、ムックに話しかけられ、ムックと仲間、そしてブライデンと4人で車で出かけるが、ムックにとんでもない事を命令され...

プロットを読んだ時にRural Arkansas townって書いてあったので、アーカンソー州の州都から離れた物凄い小さな町かと思っていたら、リトルロックじゃないですか!一応、州では一番大きく栄えているであろう州都www でもちょっと離れるとあんな感じだよね。うちも南部なので、あんな感じ。冒頭でデイヴィオン君が自転車乗っている瑞々しいシーンの場所、凄く観た事ある風景。キム姉とブライアンが住んでいるのもトレイラーだよね。床が高くなっているのは、洪水対策。あの感じ、凄く出ている。南部あるある。これまたリトルロック出身のジェフ・ニコルズ監督の『MUD -マッド-』でもその南部あるあるは出ておりましたが、私にはこちらの『Dayveon』の方が既視感ある。何か色んな場面で「あー分かるわー」と共感出来た。あの空虚な感じで、絶望的で切なくもある何もない町での生活様式

この映画で面白いのは、やっぱりパキスタンからの移民であるアンマン・アッバス監督がこのように黒人の人々の生活をこんな感じに鋭く見つめている点。私やアッバスを含めたアメリカに移民として渡ってきている人々は、アメリカで成功したいとか色々な希望や目的や夢を持っているので、多少の事は我慢出来て頑張れる。でも奴隷を祖先とする黒人たちは違う。無理矢理連れて来られて、死にもの狂いで生き残り、なのにタダ働きさせられ、教育や宗教や言葉や名前さえ奪われ、アメリカには何の希望や目的はない。それでも、自由と平等を!と戦い続け、偉大な指導者たちを失いながらも、何とか勝ち取った。けれど、それは見かけ倒しで、実際には法の番人であるはずの警官などから簡単に暴力を受け、仕舞いには殺される始末。しかも、法が警察を守る。アメリカン・ドリームって言葉は、特権を与えられた人々の言葉。同じ夢でもキング牧師が語った夢とは違う。アメリカン・ドリームって言葉は、元々何もない所に生まれた人々の為の言葉ではない。そんな人々の空虚感が、この映画から物凄く感じる。でも、この映画ではホンの少しではあるけれど、希望が見えてくる。デイヴィオンの成長と共にそれが見えてきて、観客にも希望を与えてくれたのが最高に良かった。

実はこの映画、前に観たアフリカのショート映画『Hang Time / 日本未公開 (2001)』という映画を思い出させる内容なので、私はずっと「のーーーーん!」と心の中で叫び続けたが、全然違った。胸を撫で下ろす。あー、良かったぁああああ!!!

ああああああ、こういう映画好きです。こういう映画に出会っちゃうから、インディ映画ディグは辞められない!瑞々しい青春映画でもあり、思春期を感じる面白映画でもあり、絶望的な空虚感も感じられ、アメリカ南部の生活をドキュメンタリーか!という位生々しく捉えたドラマ作品。この感じはインディ映画ならでは!

Dayveon / 日本未公開 (2017)(4.75点:1610本目)