イギリス映画協会が選んだベストLGBT関連映画ベスト30の22位に選ばれたり、ベルリン映画祭ではテディ賞にも選ばれている作品。黒人同性愛者監督の第一人者の1人、シェリル・デュニエの初の長編映画。シェリル・デュニエは、なんていうか黒人同性愛映画界のスパイク・リーだと私は思っている。彼女のショート映画集は見ていたけれど、肝心のこの作品について書いてなかったので改めて。
フィラデルフィアのレンタルビデオ店に勤務しながら、結婚式のビデオなどをとって副収入を得ているシェリル。助手はやはり同じくレンタル店で働く友達。シェリルは『プランテーション・メモリーズ』という1940年代頃の古い映画を観て、その中に出てくる美しい女優に心惹かれた。彼女の役名は「ウォーターメロン・ウーマン」(スイカ女)だった。映画監督として、彼女についてドキュメンタリー映画を撮りたいと思いつく。色々な人に話を聞くが誰も彼女の事を知らない。自分の母親に聞いてみると、ウォーターメロン・ウーマンはなんと昔フィラデルフィアのクラブで歌っていたという。地元で古い黒人映画について詳しい男性に話を聞くと良いと言われ、出向くもやはり詳細は分からずじまいだった。シェリルは母の友人に話しを聞きに行く。そうするとウォーターメロン・ウーマンの名前が明らかになった。母の友人はレズビアンで、ウォーターメロン・ウーマンもレズビアンだったので、良くクラブなどで一緒になったという。しかも『プランテーション・メモリーズ』の女流監督といつも一緒だったという。シェリルは益々興味を持つ。そして調べていけばいくほど面白い事実が明らかになり...一方でシェリルは、レンタル店のお客ダイアナと親密な関係になっていくが...
『プランテーション・メモリーズ』は架空の映画。でもこの映画によって、1930-40年代の黒人女優の姿が浮き彫りになっていくのが面白い。マミーと言われる白人の子供の面倒を見る女性役か、メイド役に限られていたその時代。「決して語られる事がなかった黒人女性について語りたい」と、シェリルは実在した女優達の事を語る。
割と濃厚なラブシーンも話題になったりした。30−40年代の黒人映画の話題も私的には面白かった。しかし、この映画で一番感じたのが、シェリルの周りには理解者と協力者に恵まれているという事。同性愛者の映画って主人公が理解してもらえずに孤独になりがちではあるけれど、シェリルの場合は全然違う。積極的だからこそ、彼女には理解者と協力者が居た。声高らかに同性愛者である事を主張するシェリル。そしてその大切さをこの映画は教えてくれる。そんな所がやっぱりスパイク・リーぽいのだ。
The Watermelon Woman / ウォーターメロン・ウーマン (1996)(4点:1539本目)