渋い!何もかもが渋い!って感じのジョン・セイルズの最新作です。セイルズは黒人を主役に描く事が多いよね。まあ一番知られているのが『The Brother from Another Planet / ブラザー・フロム・アナザー・プラネット (1984)』だよね。今やTVシリーズ『スキャンダル』で、主役を演じるケリー・ワシントンのお父さん役でエミー賞まで受賞したジョー・モートンが主演。しかも『Juice / ジュース (1992)』のアーネスト・ディッカーソンが撮影技師として参加していたりと、ジョン・セイルズは黒人映画界にも多大な貢献しているよね。話題にならなかったけど、この前の『Honeydripper / 日本未公開 (2007)』も好きです。
保護観察官のバーニース(リサゲイ・ハミルトン)の元にやってきたのがフォンティーン(ヨロンダ・ロス)だった。バーニースとフォンティーンは昔からの知り合いで、高校時代は仲が良かったが、今は距離があった。フォンティーンは保護観察の間にやってはいけない事ではあるが、些細な失敗をしてしまった。本来なら絶対に許さないバーニースであるが、フォンティーンのミスを見逃した。見逃さなければフォンティーンがまた刑務所に戻らないといけないからだ。そんなバーニースに「私に何か出来る事があったら何でも言って。あ、でも今の私に出来る事なんてないか...」と言い残し、バーニースのオフィスを去った。あくる日、バーニースは刑事に呼びとめられる。バーニースの息子ロドニーの行方を知っているか?と聞かれたのだ。なんでもロドニーが殺人事件の容疑者となっていると聞かされる。バーニースはフォンティーンを頼って一緒に探してもらう事にした。フォンティーンは麻薬常習犯で売る方もやっていたので、その道に精通していたのだ。2人はロドニーの行方を追うと、どうやらメキシコで中国マフィアに捕らわれている事が分かった。フォンティーンのツテで元LAPDでメキシコ人のスアレス(エドワード・ジェームズ・オルモス)にお金を渡して助けてもらう事になった。3人はメキシコに向かうが...
バーニースとフォンティーンの距離感がとてもリアリティがあって最高でした。なんといってもフォンティーンを演じたヨロンダ・ロスが素晴らしい!『Antwone Fisher / 君の帰る場所/アントワン・フィッシャー (2003)』で主役のアントワン・フィッシャーを性的虐待していた女性を演じていたよね。さすがデンゼル・ワシントンの初監督作品に選ばれるだけある!最近では『Yelling to the Sky / 日本未公開 (2011)』で、今度は逆に虐待されている妻を演じてましたよね。パム・グリアの自伝映画が作られる予定があるなら、彼女に演じて欲しいわー。この映画でもね、昔はやり手のドラッグディーラーでしたという面と健気に更生しようとする姿の2つを見事に描写しているの。強い女性を演じてきたパムだけど、実生活では病気や失恋というパムを見事に描いてくれる筈!という位、期待している。
とはいえ、しぶーーーーい映画なので中々派手な事はおきません。マイケル・ベイなら、ここで爆発!って所も、もちろんこの映画では爆発しませんし、カーチェイスにもなりません!とにかく渋い。とにかく3人のしぶーーーい演技と台詞で乗り切る映画です。オルモスがメキシコのバーで知り合いのバーテンに「観光客用のポイズンなテキーラじゃなくて本物のテキーラよこしな!」と、反町隆史みたいな事をスペイン語で言う所が超渋いっす。これまたオルモスがメキシコでアメリカに先に行ってしまい連絡がない夫を待つ女性に「もう帰ってこねーかもな」というシーンの最後が粋で渋い!けど最後はどうなの?どうなの??とハラハラ、ドキドキ。うぉー!ってなりますね。渋いカーボーイ映画みたい。
3人共に失ったものを取り戻す。超渋いけど、3人の描写が丁寧。さすが。渋い監督が渋い俳優使って渋い映画撮るとこうなるって感じですね!
(4.25点/5点満点中:9/15/14:DVDにて鑑賞)