7月頃にTV放映していたものをやっと観ました。もっと早く観れば良かったー!結論から言うと最高でしたね。DVDも私の生涯ナンバーワン映画であろう『Killer of Sheep / 日本未公開 (1977)』と同じマイルストーンから出ているみたいですね。欲しいー。という事で、タイトルでも分かる通りアフリカが舞台。アフリカでも南アフリカのヨハネスブルグ。アパルトヘイト政策時。最初に、これはドキュメンタリーだと出てくる。ザッカリアという金炭鉱に送られた男のドキュメント。
街には高いビルが立ち並び、サイレン等の様々な騒音が聞こえる南アフリカの都市ヨハネスブルグ。ザッカリア(ザッカリア・ムガビ)は金炭鉱所に来た。しかし仕事の保障は無いよと、先に居た男達に言われる。訓練を積んで、炭鉱に向かうザッカリア。しかし残してきた家族の事を思い、ヨハネスブルグに戻ろうと、ボスに口を利いてもらう。ボスの家の小間使いとして働く事になったが、家事の出来ないザッカリアにボスの妻はヒステリックで怒ってばかり。すぐにクビになった。その後も友人に口を利いてもらうが、全て上手くいかない。迎えに来た妻と叔母が住む町に住むことになるが、やはりすぐに仕事はクビになってしまう。しかも知り合いがタバコ屋で順番を抜かした事で喧嘩になってしまう。息子も外で喧嘩になってしまう。友人は「俺達は暴力の中で生きている。俺達と切っても切れない。人々は俺達をそのように認識するのさ。色の判断は容易く分けやすいからな」と、ザッカリアに論する。そこにやってきたのがミリアム(ミリアム・マケバ)だった。彼女は彼らのために美しい歌声を披露するのだった...
ドキュメンタリー言えども、台詞があってストーリーがある半ドラマです。ヨハネスブルグの喧騒とか、街中で見れる大道芸や歌などは本物だと思う。その絵が凄く綺麗で上品。そしてアパルトヘイト下ではヨハネスブルグで、黒人の人々がパスや許可証を常に携帯していないといけないというのも本当。もう寝ている所のベッドに警察が来るシーンとか、アメリカの公民権運動時の60年代と同じだなーなんて思いましたね。ただ仕事に関して言えば、結構友人達が口を利いてくれていて、それがすぐにOKになるのは良いですね。でも家族と離れなくてはならない場合が結構あって、それが主人公達を悩ませる。まあ第一に黒人がやれる仕事っていうのが限られているのが問題なんだけどね。
っていうのを当時に撮っていたのは凄いですよね。しかもアメリカの白人監督ライオネル・ロゴージン。彼はこの作品の手前では、アカデミー賞のドキュメンタリー部門にノミネートされた『バワリー25時』を撮っている。なんでも2人の酔っ払いを通して、NYの街が浮き彫りになっているそうだ。でもこの作品は上映してくれる劇場もなくて大変だったらしい。自分でフィルムを抱えて探しまくったらしい。後年になって再評価された作品。でもベニス映画祭では、1959年にPasinetti賞を受賞。労働者たちの問題や怒りをそのままスクリーンに映し出したロゴージン。イタリアのネオリアリズムの影響をそのままに感じる。街の喧騒の中、少年達の笛に聞き惚れる人々の顔、街の大道芸人の技をなんとなく見ている人々の顔、マリアム・マケバの美しく力強い歌に癒されている人々の顔... それもまたヨハネスブルグの現実的な一部でもあった。そして叫び声とザッカリアが叩く机の音がとても悲痛。『自転車泥棒』で最後落胆するあの男の姿を思い出してしまった。
(5点満点:9/10/14:TV放映にて鑑賞)