続いてきたポール・ロブスンもの、ラストです... とりあえずね。こちらは出演はしておらず、ナレーションと途中掛かる歌を担当しているドキュメンタリー映画。というか、半ドキュメンタリー、半ドラマタイズという珍しい作品。もちろんこの時代にもドキュメンタリー映画は存在していた。っていうか、映画の歴史の始まりがドキュメンタリー映画だからね。リュミエール兄弟が工場から出てくる人々を撮った『工場の出口』が映画の始まり。しかしこの映画を撮った「フロンティア・フィルム」が1937年に出来てから、政治的なドキュメンタリー映画が増えてくる。そうだね、ポール・ロブスンの政治的な部分が物凄く反映されているんだね!
という事で、この映画は作られた当時(映画制作には5年かかっているので、30年代中頃)から問題となる労働組合への迫害とかスパイとかを追う。オープニングから「ネイティブ・ランドは、ここ数年のアメリカでの自由迫害の苦労のドキュメントである」って出てくる。そういう事なんですね。という訳で、1607年のジェームスタウンからのアメリカをポール・ロブスンがナレーションで語っていく。そして最近になり、ミシガンの農場にお金を持ってそうな男達がやってきて、農場主のフレッドが殺されてしまう事件、オハイオのクリーブランドのアパートで男性が殺されてしまう事件、アーカンソーのフォート・スミスで白人が黒人を助けたが2人共殺されてしまった事件、アンダーグランドで会議などが行われている労働組合に侵入するスパイ、テネシーのメンフィスの商店が男に荒らされる事件、フロリダのテンパで起きたクー・クラックス・クランによって政治家がリンチされた事件... など、ここで扱われた事件はドラマ化しているのです。ちなみにアーカンソーの所では、ロブソンが劇的に歌って盛り上げております。
で、このDVDには、ボーナス映像でこの映画の監督ポール・ストランドの息子が語っています。少し撮ってはお金を集めて...という感じだったらしい。そしてその中では、ポール・ロブスンはやる気満々で、ナレーションなのに数週間も準備して挑んだらしい。そしてロブスンの名前は資金集めに非常に有効だったらしい。そして「フロンティア・フィルム」にはエリア・カザンも居たらしい。
という事で、この映画を撮った人々は、その後にやってきたハリウッドの赤狩りにはみんな狩られた。言いたい事も言えないこんな世の中は、Poison♪という事で、言いたい事も言えないあんな世の中でポイズンだった赤狩り時代に、堂々と言っていたポール・ロブスンのかっこ良さったら!!!!!って訳です。しかも意見を曲げずに政治的な意見についての姿勢は変えなかった。あの時代は確かにここで描かれたように、自由は迫害された時代った。そして最後が印象的ですね。デモに参加して亡くなった未亡人の泣き顔と共に「我々は忘れない、決して!」という言葉。
(4.75点/5点満点中:7/23/14:DVDにて鑑賞)