Paris Is Burning / パリ、夜は眠らない。 (1990) 1243本目
購読しているブログで紹介されていて、あ、そういえば持っているのに観ていない!と観てみた次第です。その紹介されていたブログの人も書いていたけれど、これはハマる!!
1987年のニューヨーク。夜も深くなっていたが、活気溢れる所があった。「ボール」である。派手な衣装に身にまとっている人たちが、スーパーモデルよろしくそれぞれを表現しながら歩いている。喝采を送る観客に煽るMC。歩いているのは、ドラァグ・クイーンやトランスジェンダーで主に黒人やヒスパニックだった。歴史を紐解くと30年代からゲイバーで「ボール」らしきものがあったようで、それが60年代のハーレムで花開き、70年代にクリスタル・ラベイジャによって今の形が完成する。彼等にはそれぞれ「ハウス」と呼ばれるものが存在し、ラベイジャやエクストラバガンザにニンジャなどが存在する。そのハウス名がラストネーム的な役割でそれぞれのどこのハウスに所属しているのか分かるのだ。そしてそのハウスには「ハウスマザー」もしくは「ハウスファーザー」が存在していて、彼等はその「ハウス」の代表であり、文字通り母親的・父親的に若い子の面倒を見ている。というのも、彼等の中には家出をした子供たちも多い。それを象徴しているのが、この映画の冒頭から出てくる男の子2人なのだ。15歳と13歳の男の子。13歳の子はまだまだあどけなさが残るというか、残りすぎている子供だ。お父さんもお母さんもいない。いわば壊れた家庭で育ち、「ハウス(家庭)」を求めて家出をして「ボール」界隈に居る。ペッパー・ラベイジャ、そしてドリアン・コリーにマドンナが世界に紹介した「ヴォーグ」の振り付け師となったウィリー・ニンジャなどのベテランから、有名になりたいと語るどことなく脆いヴィーナス・エクストラバガンザ、万引きの仕方を無邪気に語るフレディ・ペンデイビス、美貌に恵まれたオクティビア・サン=ローラン等... ニューヨーク大の映画科に通っていたジーニー・リビングストンが追っていく。
もう出てくる人出てくる人が個性的でそれも魅力の一つですが、後日談も魅力。上でも書いたように、ウィリー・ニンジャはその後にマドンナの「ヴォーグ」で有名となった。映画の中で日本に行きたい!と語っていたけど、それも実現させた。そしてヴィーナス・エクストラバガンザは、この映画の中で亡くなっている。その結末が余りにも衝撃的だった。でもなんとなくそんな彼女の脆さは、映画の中でも手に取るように分かったから余計にショック。そしてこの映画で語っていた人の数人が残念ながらエイズで亡くなっている。ウィリー・ニンジャにドリアン・コリーにアンジー・エクストラバガンザ... この映画でその後が一番気になるのが、名前も分からない冒頭から出てくる2人の少年だ。調べたら、やっぱりこの映画を見て私のように気になる人は一杯いるようで、色んなサイトにたどり着いた。15歳の子はあまりハッキリとした答えは見つからなかったけれど、どうやらその後に養子となり大学を卒業したという情報を見つけた。そして13歳の子は、アリッサ・ラペルラとなり、「ラペルラ」のハウスマザーとしてレジェンダリーとなっている!そして万引きやアイロン掛けを語っていたフレディ・ペンデイビスも健在。でも一番衝撃的なのが、ドリアン・コリーかな?どちらかというとディヴァイン的な風貌で、ずっと化粧をしながら語っていた人。彼女もエイズで亡くなったが、その後彼女のクローゼットからミイラ化した死体が発見された。そのミイラ化した死体を検死した所、指紋がとある男性と一致した。その男はレイプや暴行や強盗などで何度も警察の厄介になっていた男だった。死体には頭に一発の銃弾の痕があった。ドリアンが残したというノートには、強盗を殺したという告白がされたと言われている。
エクストラバガンザと言えば、日本にもダイアナ・エクストラバガンザがいる!気になってウィキみたら、このハウスのエクストラバガンザとは関係ないらしい。残念!でも映画は見ていて影響されているとは思うけど!
ちなみにこの映画はジーニー・リビングストンがニューヨーク大の映画科の宿題で撮った作品である。公園でたまたま見かけた「ヴォーグ」。気になって追ってみたら、この映画になっていた。彼女はビバリーヒルズ出身の裕福なユダヤ系。黒人の映画や文化などを研究している著名なベル・フックスは、リビングストンがこの映画が黒人文化やLGBT文化を誤って導いていると批判。けど、この頃は誰もこういう世界を追うなんて思っても居なかったからねー。みんなエイズやHIVの知識が皆無で近寄らなかった。彼等・彼女達の声はそのコミュニティから出る事もなかった。そんな色んな差別から解き放たれるかのように歩く彼女たちの姿が本当に「オピューレンス!(裕福さ!)」で魅力的。
(5点/5点満点中:6/11/14:DVDにて鑑賞)