という事で2回連続。今回はこちらだけで攻めてみます。
いきなりNワードが飛び出す。「おめーら、新入りニ○ー達に教えたる!」と、とーーーっても嫌ーな感じのオジサン出現。粗末な小さな小屋で寝返りも出来そうにもない狭い間で床に寝る男。食事のお皿には少量の食料。もう冒頭5分もしないうちにその男には絶望感が漂う。しかもその後の映像も悲しみでしかない。そこで別の映像が入る。フカフカそうなベッドで妻と思われる女性と横たわる、その男。裕福そうだ。そして映画タイトル。そこからはその男の裕福で幸せな一面が明らかになっていく。しかし長くは続かない。2人の男の出現によって、その男ソロモン・ノーサップの人生は大きく変わっていく。そこからはもう地獄絵のような物語が続いていくのだった。
そんな過酷なソロモン・ノーサップの人生をキウェテル・イジョフォーは正に体当たりで演じている。何しろ「Hunger / ハンガー (2008)」では、主演のミヒャエル・ファスベンダーに過激なダイエットをさせ、そしてその上に20分もの台詞ばかりの長回しシーンを撮ったり、「Shame / SHAME -シェイム- (2012)」でもファスベンダーの全裸を撮ったりと、ファスベンダーを身も心も酷使している監督。キウェテル・イジョフォーも叩かれたり脱がされたりと、そのどSっ気たっぷりなマックイーンの期待に十分に応えている。ソロモンがなんとも言えない表情で歌うシーンが最高。ソロモンの芯の力強さを感じる。その代わり今回は監督が大好きなファスベンダーは逆にSっ気を出す役をやらせてもらっている(というか、どSな監督がどMなファスベンダーをどSにするっていうMプレイ?)。しかも「ハンガー」や「シェイム」で私も好きになったファスベンダーが、この映画では本当に憎い!どうしようもない奴を上手すぎる位演じている(ちなみに先日書いたパークス版でのエプス役はあのジョン・サクソン!そうあの燃えドラのローパーだ!サクソンのエプスも最低でした!褒め言葉ですけど!!)。映画なので、こういう悪役が良いと映画が非常に良くなりますね。苛められれば苛められるほど、つい主人公に感情移入しちゃいますから。シンデレラが面白いのは、あの婆さんと娘っ子達が最低だったから訳で... キャンディキャンデイが面白かったのもイライザが居たからであって... と、この映画の悪役は最高です。エプスの妻や最初の主フォードの妻も酷かったね。特にフォードの妻の台詞は今でも許せん!ご飯食べたくらいで、忘れられるか!!
この映画で一番注目を集めたのが、奴隷女性のパッツイを演じたルピータ・ニョンゴ。何しろオスカーの助演女優賞まで受賞しましたから!彼女も体当たり。そしてパッツイはソロモンとは違って、元々奴隷なので南部訛り。ニョンゴも「Ask」を「Aks」等になっていましたね。そういえば、フォードの妻も「Forget」が「forgotten」になってましたね。方言だけでなく、ニョンゴは体当たり。というか自然体でもあるんですよね。あの畑で人形作っているシーンはピュアなパッツイを象徴していて、鼻歌歌いながらとっても自然で美しいシーン。あのシーンだけで心奪われる。
しかしマイケル・K・ウィリアムスとかクヮヴェンジャネ・ウォリスとかヘンリー・ドワイトとか、もっと出ているかと思ったらー!!この映画では、ソロモンとパッツイ以外の黒人はあんまり描かれていないよね。イライザ(日本語版ではエリザなの?ウィキではそうなっている。発音はエライザ。日本語表記は通常イライザ)をもうちょっと見たかった! アデペロ・オデュイエ良い感じだったし!!
丁度今読んでいる本にこの映画の最大のテーマである奴隷について面白い事が書いてあった。黒人奴隷の口語物語や本をまとめた本で、この映画の原作ソロモン・ノーサップの話も出てくる。そこには、なぜにアメリカで黒人が奴隷となって連れて来られる事になったのかも書いてあった。イギリスからやってきたアメリカを建国した人々は、最初アイルランドから働き手として連れて来ていた。しかし彼等アイルランドからやってきた人々は、見た目が同じなので逃げられても区別が付かなかった。逃亡して名前を変えればいいだけ。しかし黒人は見た目で一発で分かってしまう。しかもその頃のアフリカは文明革命があって、部族同士で争っていたのもあって都合が良かった。って書いてあった。
そしてお約束通り、ソロモンのその後。
実は以前にツイッターに書いていたのだ!今は「ソロモン・ノーサップ その後」の検索が滅茶苦茶多い。オスカー効果ってやつね。
↓の「Twelve Years a Slave / 日本未公開 (2013) URL」についての記事、面白かった。12年間奴隷だったその後のソロモン・ノーサップのミステリーに迫る。映画の原作がベストセラーになって、数年は演説したり、(続
2013-10-25 22:46:25 via web
続)土地を転がしたりで富を築いたけど、その後は謎。また誘拐されて奴隷になったという噂や、その最初の誘拐犯がリベンジで殺したという噂、お酒に溺れて死んだという噂、身元を変えて西に渡ったという噂など... 結局は分からず!
2013-10-25 22:49:15 via web
でもこの映画のお陰か、そのソロモンのその後の調査もちょっとだけまた進んでいる。1857年にはカナダに行った情報があるが、それ以降のソロモンの記録が全くない。まだリンカーンの奴隷解放宣言前の事。しかしソロモンは既に49歳。働き手としての奴隷の価値は下がっているので、また誘拐されたいう噂の線は低い。しかし2人の白人を裁判にかけたという事で、恨みで誘拐され殺された可能性はある。しかし、1876年の妻アンの死亡記事ではアンは「未亡人」と書かれていたので、その前に亡くなっている可能性は高い。ソロモンの甥は1909年に、「ソロモンはボストンで本のプロモーションの為に講演し、その後誘拐され殺された可能性が高い」と明かした事もある。しかし書かれた手紙が見つかり、その中でその手紙の発見者の父とソロモンは、奴隷たちをカナダに逃がす組織『地下鉄道』に奴隷解放宣言後に参加していたという話も見つかっている。しかしアンの死亡記事では、「国内の様々な所に行って発表したが、価値のない放浪者となっただけだった」とまで書かれている。晩年は余り良く無かったのかもしれない。いずれにしてもお酒には弱かったのは確か。この映画でもパークス版でもそこは同じで見ていると分かる。いずれもまだ確かな確信は得られておらず、結局の所「謎」のままなのである!もちろんお墓も見つかっていない。ソロモンはアメリカ(カナダの可能性もあるが)のどこかでひっそりと眠っている。誰も知られずに。
「謎」なのである。しかし、1841年から12年間誘拐され奴隷となった事は確かであり、自由を勝ち取ったのも事実である。今回オスカーの作品賞を取った事で、このソロモン・ノーサップの物語が後世まで伝えられていくのも事実である。
ソロモン・ノーサップの子孫がスティーブ・マックイーン監督のもとに集まった記事はこちら。写真や映像など。
(4.75点/5点満点中:3/4/14:DVDにて鑑賞)