The Two Nations of Black America / 日本未公開 (1998) 1178本目
PBSにて面白いドキュメンタリーを作り続ける男...それがヘンリー・ルイス・ゲイツだ。ハーバード大学のW.E.B.・デュボイス学会のトップ。なので当たり前なのかもしれない。この前放送していた6話の「The African Americans: Many Rivers to Cross」も全部は見ていないけれど、面白かった。その番組は取り上げるエピソードが王道もちゃんと扱い、普通では見逃しがちになるユニークな事や人物も語っていった。そして有名人のルーツをDNAで証明していく「African American Lives」は最高だったしね!そんなヘンリー・ルイス・ゲイツが初期にPBSで制作したドキュメンタリー。
同じように奴隷としてアメリカに連れて来られたアメリカの黒人にも、上流階級と中流階級、そして下流階級が存在する。ゲイツは職場である大学に向かう道で、ホームレスを見て「なぜ黒人達はそのように(経済的に)分かれたのだ?」と思った。学者として様々な人々に話しを聞いて、それを追求していく。1965年には黒人の中流階級は2倍に増えた。ハーバードの黒人学生も制作された1998年には3倍に増えている。しかし、下流階級は1980年から1995年の間には3倍にも膨れ上がった。どうしてそんな事になったのか??
ゲイツは、コーネル・ウエスト(学者)、ウィリアム・ジュリアス・ウィルソン(学者)、マウラナ・カレンガ(学者)、エルドリッジ・クリーバー(元ブラックパンサー党員・作家)、キャサリン・クリーバー(元ブラックパンサー党員・学者)、アンジェラ・デイビス(活動家・学者)、ジュリアン・ボンド(元NAACPトップ・政治家・活動家)、ジェシー・ジャクソン(活動家)という錚々たる顔ぶれにインタビューしている。名前を見ただけでも誰だか分かる方々には、インタビューを受けた彼等は全く違った政治理論をもって活動していた事が分かってもらえると思う。60年代に分離か融合で全く違っていた彼等だ。でもそんな彼等が口を合わせたように言うのは、黒人の間にある階級のギャップを埋めていく事が、これからの課題という事。上流・中流家庭はよりリッチに、そして下流階級は人口は増え、年収は増えなかった。格差はより広がっている。未婚・そして未成年の妊娠、ギャング、暴力、薬...と問題は尽きない。ゲイツは、ラップ・ヒップホップも少しはそれに加担していると指摘していた。クインシー・ジョーンズはゲイツのハーバード大で講演中に2パックを批判。ゲイツはジョーンズ娘のキタダは2パックと婚約した事もある、そしてもう1人の娘ラシダはそのクインシーの講演を聞いていた生徒の1人であると説明している。確かに、ギャング文化(そんな文化があるとするなら)にラップは欠かせないかもしれない。でも私は逆にそんな世界に憧れる事なく、ここまでやってきたし、うちの夫だってやる位好きなラップだけど、ギャングには憧れていない。パブリック・エナミーのお陰で色々な歴史も学んだ。それよりも親や学校が不十分だったと思う。ゲイツが指摘するようにみんながみんな豊かな国というのはありえない。誰かが搾取されてしまう。それが資本主義。そして誰もがハーバードやイエール大に通い高等教育を受ける事も出来ない。でも下流階級がもうちょっと報われてもいいだろうし、上流階級は欲張らないことも出来る。黒人の人々も確かに弊害はあるけれど、資本主義な社会で学び争っていかないとならない。だからこそ、このヘンリー・ルイス・ゲイツ版「ハーバード白熱教室」がPBSみたいな所で必要なんだよね。
(4.5点/5点満点中:12/6/13:DVDにて鑑賞)