「Symbiopsychotaxiplasm: Take One / 日本未公開 (1968)」を観たら観たくなった作品。ウィリアム・グリーブスの記録映画。これはまた凄い!他とは全く異なる記録映画だ。で、これの感想を書こうとしたら、どうも私のサイトのエントリーが変。「Ali the Man, Ali the Fighter」になっていた。IMDB観ると「The Fighters」で監督はウィリアム・グリーブスとリック・バクスターの共作になっている。うーん、分からない!色々調べたけど、どこのエントリーも変。でも映画のオープニングをまた観て調べたら、やっぱりタイトルは「The Fighters」で、監督はウィリアム・グリーブスの一人。「The Fighters」が「Ali the Fighter」というタイトルで出ていた事は分かった。で、色々と調べているうちに、なぜか勝新太郎!の名前が出てきた。そこから調べてやっと結論できた。勝新太郎がプロデュースしたのが「Ali, The Man / モハメッド・アリ 黒い魂 STAND UP LIKE A MAN (1974)」という作品。この作品が同じ時期に制作され51分と短いのもあって、アメリカでは「Ali the Man」というタイトルで、この「The Fighters」と一緒に公開されていたのだった。なのでIMDBでは、なぜか2本が1本として登録されているんです。
という訳で「The Fighters」を。
モハメド・アリの知名度の高さから後にあたかもアリだけが主役のような「Ali the Fighter」というタイトルになってしまったけれど、本当のタイトルは、先ほどから書いているように「The Fighters」。戦う人達が主役。アリも主役なら、戦ったジョー・フレイザーも主役。2人をリングに上げるために戦った人達も主役で、2人の試合を見る為にプロテストした人達も主役な訳。
先に主役を書いてしまったけど、このドキュメンタリーはモハメド・アリとジョー・フレイザーの1971年3月8日にニューヨークのマジソンスクエアガーデンで行われたマッチを追っている。世紀の一戦と言われているあの対戦。アリのファンなら、それだけでこの対戦の意味が分かる筈だ。ウィリアム・グリーブスはナレーションとかインタビュー映像とか一切なしに、ただカメラで彼等の姿と言葉を追っている。同じリングで戦う二人は全く別の性格。まあアリのあのカリスマ性は特異な存在ではある。とにかく人が集まるのがアリ。物凄いボクサーであり、ファイターであるんだけど、物凄いエンタテイナーでもある。アリみたいな人が珍しい面白い乗り物に乗っていれば、誰もが気づく。それを何気に出来るのがアリ。ジョー・フレイザーも物凄いボクサーであり、ファイターであるけれど、何処となく普通の兄ちゃん。教会では高揚して席を立ってゴスペルを口ずさんでしまう、普通の田舎出身の黒人兄ちゃんなのだ。でも、そんな二人が電話しているシーンがあって、色々と口撃戦をやっているんだけど、ジョー・フレイザーの方が先に切ってしまうのが、無茶苦茶面白かった。そしてアリの周りには女性も多い。なぜかフレイザーの従姉妹まで居た!その女性とやりあっているのも面白い。
そしてこの対戦はもちろん誰もが注目している対戦。会場にはウッディ・アレンや、マイルス・デイビスまで居る!しかし、一般の黒人にはチケットは高くて試合は見れない。しかもペイパービューなのでテレビでも気軽に見れない。なので黒人の人達はプロテストを行う。チケット代を下げろ!と。その模様も残しているグリーブスはさすが。プロテストまでしない一般の人達は、町の片隅でアルコールの力を借りてぼやいている。それは白人の人もだし、アフリカから来たであろう移民の人々もだ。「アリだ!」「いや、フレイザーだ!」とやりあって楽しんでいる。
試合の様子ももちろん残している。ハンディで撮っているので、ペイパービューのTV映像よりも活気があると、当時話題になった。しかもウザイ試合解説とかアナウンスとか一切なし!なので、会場の歓声とか野次が筒抜け。そしてグローブと肉体がぶつかるその音もはっきりと聞こえる。生々しい作品なのだ。
(5点満点:4/17/13:DVDにて鑑賞)