日本でも映画祭だけではなくて、一般公開までされたロジャー・コーマンのドキュメンタリー。アメリカでは映画祭と限定公開だけだったので、どんだけロジャー・コーマンが日本で愛されているか!という事ですよ。と日本公開にあたって、ある事は書かれていないのよねー。という事で、私が書かなくて誰が書く!という事ですよ。監督のアレックス・ステイプルトンは黒人女性監督。写真とかだと見た目分かり難いのもあるのかもしれませんが... インタビューでは黒人女性として...なんていう風にも自分でも語っている。ステイプルトンは黒人女性として、まずロジャー・コーマンを好きになった訳じゃなかった。小さい頃から「本当は見ちゃいけないと思うのだけど...」と話つつ、両親がそういう(コーマン作品)ばかり見せてくれていたと語っている。なんて凄い両親なんだ!私ですら、コーマン作品は子供が寝静まった夜中に1人でこっそり見るのに。子供が居なかった若い頃には、親に隠れてこっそり見ていた。どっちにしろこっそり見る映画が、コーマン作品。そういう映画を両親と見てきたステイプルトンは、パム・グリアに憧れる。「若い黒人の女の子の私にとって、パム・グリアは私の全てだと思ったわ。あのようになりたいと思ってた」と語っている。で、ステイプルトンは大学の時に始めてロジャー・コーマンを知る。ロジャー・コーマンの自伝「私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか」を読んで、あの頃に見ていた作品の殆どがコーマン作品だと知った。そしてステイプルトンのメンターはなんとあのフランク・ヘネンロッター。そのヘネンロッターがステイプルトンに一本のビデオを渡す。それが「The Intruder / 日本未公開 (1962)」だった。
ロジャー・コーマンと言えば、監督としても有名だけど、プロデューサーとしても有名。お金をかけずに、お金を稼ぐ事に対してものすごく執着している。またそれをどうしたら上手くいくのかを、コーマンはよく知っている。しかし「The Intruder / 日本未公開 (1962)」の一本だけは、お金を回収する事が出来なかったらしい。でもそれでも自分の好きなように映画が作れて嬉しかったと語っている。そんなコーマンの元で働いていたのが、マーティン・スコセッシ、ジャック・ニコルソン、ピーター・フォンダ、デイヴィッド・キャラダイン、フランシス・フォード・コッポラ、タリア・シャイラ、パム・グリア、シルベスター・スタローン、ジェームス・キャメロン、ジョン・セイルズ、ピーター・ボグダノヴィッチ、ジョナサン・デミ...エトセトラ、エトセトラ... 彼の元から出世した人は数知れない。それ故に日本語ではコーマン帝国、英語ではコーマン大学なんて呼ばれている。
とは言え、アレックス・ステイプルトンは有名な映画監督ではない。この作品が長編デビュー作。その前にはコラムニストとしても活躍。「無名なブルックリンの女の子にみんなが取り合ってくれるか心配だった」と話している。この映画でインタビューを実現した名だたる監督達も、ステイプルトンに沢山アドバイスをしてくれたそう。あのオスカーにも受賞したロン・ハワードは歩きながらのインタビューをアドバイスしたとの事。「ロジャーはカメラが動いている事が好きなんだ。そうしたら彼も喜ぶと思う」と話したそう。所で、この映画でインタビューに答えていないので気になるのが、ジェームス・キャメロンとフランシス・フォード・コッポラ。インタビューを受けてな人々はスケジュールが合わなかったと話している。うーん、キャメロンはそれで納得できるけど、コッポラは..ね... ジャック・ニコルソンも当初は20-30分のインタビュー予定だった。なんどもニコルソンのアシスタントがやってきて、インタビューを終わらせようとするけど、ニコルソンが無視してずっと話してくれて結局1日がかりだったらしい。で、最後にあのニコルソンの涙ですよ。それが見れただけで満足しちゃいました。せっかくだから、コーマンの口からおっぱいの話が聞きたかったが、それは聞けなかった。まあでもニコルソンの涙で満足ですわ!!ブルックリンの小娘してやったりですよ!!
にしても、あのロジャー・コーマンの見た目には凄くジェントルマンの頭のどこの部分に、あんなキワモノ映画をつくる想像力が入ってたんでしょうねー。謎だわー。クエンティン・タランティーノはハイテンションだし、見た目もヤバイから分かるんだけど、ロジャー・コーマンだけは分からない!!ハリウッドの7不思議の1つ。
(4.5点/5点満点中:4/21/12;DVDにて鑑賞)