ローレンス・フィッシュバーンの1人舞台の映像。1人舞台って、台詞ばかりでずっと観ているの辛いなーという印象だったんですが、これは全然違う!ローレンス・フィッシュバーンが凄すぎます。フィッシュバーンが演じたのがサーグッド・マーシャル。黒人で初の最高裁判所判事となった人です。マーシャルが晩年に母校ハワード大学を訪れて自分の半生を振り返り語っているという設定。マーシャルは「使い方を知っていれば、法律は武器なのだ」と語る。そして、どうして法律の世界に足を踏み入れていったかを語り、歴史的な裁判を語っていくのです。
マーシャルは弁護士だけに、やはり雄弁で饒舌だったと容易く想像出来る。そんなマーシャルを、フィッシュバーンは見事に甦らせているのです。ただ語っていくだけなのですが、話の上手さが引き立っております。引き込まれるような饒舌ぶり。落語を観ているかのよう。上手い伏線に落ちもありますからね。しかも、フィッシュバーンは遅れてやってきた観客のいじりまでしてしまうのです!スクリーン・アクターズ協会(SAG)賞やエミー賞にイメージ・アワードにノミネートされてきましたが、受賞したのは今の所イメージ・アワードのみ。いやいや、全部受賞して当然でしょ!と思いました。フィッシュバーンはいつも素晴らしいけれど、この作品は特にいつも以上に素晴らしい。例えばマルコムXを完璧に演じられるのは未だにデンゼル・ワシントンだけだと信じているが、デンゼルがマルコムなら、ローレンス・フィッシュバーンはサーグッド・マーシャルですね。マーシャルを完璧に演じられるのは今の所フィッシュバーンだけ。雰囲気とか容姿とかも2人とも完璧。と、私が言い切ってしまうほどに凄いんです。1人舞台なんだけど、マーシャルが1人で全てを勝ち取ってきたとも描いていないのが、凄い所なんです。
またその雄弁ぶりが、彼が手がけた数々の大きな裁判で勝利を収めていくのが分かるのです。メリーランドで生まれたマーシャルは地元のメリーランド大学の法科に入りたかったが、黒人という理由だけで入れず、黒人の名門校ハワード大学に進む。NAACPの法律を担当する事になってから、ドナルド・ゲインズ・マーレイがメリーランド大学の法科に進めるべく裁判を始める時に、弁護士として担当する。そのエピソードの語り口が面白かった。マーシャルには会った事もないけれど、マーシャルの姿を垣間見た気がした。
「ブラウン対教育委員会裁判」は今のアメリカに大きな影響力を及ぼしている。公民権運動の最大のモメンタムだった裁判。「分離すれど平等」という「プレッシー対ファーガソン」の判決を覆し、事実上「ジム・クロウ」法を違法としたのだった。彼の言葉「使い方を知っていれば、法律は武器なのだ」を立証したのだった。
(5点満点:2/15/12にDVDにて鑑賞)