という事で前回に続き同じ「飼育」です。原作については前回の記事をご覧ください。今回のはあの大島渚監督の作品。ってだけで見たかったのもありますが、なんと言ってもヒュー・ハードですよ!凄い気になる俳優なのです。所謂、超有名な俳優ではないけれど、なんとなく気になる作品に出ている俳優。そんな気になる俳優の60年代代表がヒュー・ハードなら、80年代はトミー・ヒックスですね。トミー・ヒックスはスパイク・リーの「She's Gotta Have It / シーズ・ガッタ・ハヴ・イット (1986)」とか「Daughters of the Dust / 自由への旅立ち (1991)」に出ている日本生まれの日本人とのミックスの俳優です。メジャーじゃないけど、インディペンデンス映画でブラックムービーの歴史に残っている作品で主演を演じている俳優です。その前に同じような感じで活躍していたのがヒュー・ハード。彼はジョン・カサヴェテスのデビュー作「Shadows / アメリカの影 (1959)」では長男を演じている。そして日本のこの作品に出演。興味深いキャリアであります。どうしてこの映画のキャスティングに選ばれたのか気になります。まあそれもあって、わざわざ遠出してまで見た訳です。気になる事なら遠出してまで、頑張るよ、私は。映画のお金より電車賃の方が高いっていうの!でもさ、東京国際映画祭という事で英語字幕がついているんです。ヒュー・ハードはHugh Hurdなのに、Hugh Hartになってたのが気になった。
まあ一番楽しみにしていたのが、大江健三郎の原作での独特な表現である「セクス」を、「愛のコリーダ」の大島渚監督ならそのままずばり描いてくれているんじゃないか?と期待した訳です。原作でもあの場面は印象的で、アンバランスな子供達の独特の危険な遊びを通じて、子供達と黒人兵が心を通じる場面。でも、この映画自体は、黒人兵士と少年達の繋がりをほとんど描いてないんですよねー。なので「セクス」もないし、ヒュー・ハードもそんなに出番なかったし、台詞もあんまりなかった。でも随所で表情で黒人兵の悲しみと殺気を表現し、見せてくれています。
大島渚監督は、この映画を通じて、戦争の野蛮さを描いている。戦争によって人々の心はご都合主義となってしまい、自分の事しか考えなくなった。戦争末期だったから余計に自分が生きることだけに必死。心の通じ合いは全くなく、そんな事はどこかに忘れてしまった感じ。村人同士も実にギスギスしている。戦争は人々の心まで貧しくしてしまったのです。その中で成長していかなくてはならない少年達。前回のリティ・パニュ監督とは全く違う描き方で、同じように子供が犠牲になっている事が描かれているんです。自分がやはり大島渚と同じ日本人だからか?遠回りして描かれたこちらの方がしっくりくる。
最後が残酷なんですわ。原作よりも残酷。村人の人たちは変わらない怖さ。白黒映像は絵力もあるので怖い位。
遠出してヒュー・ハードの凄さ見れたので、満足です。
(4.75点/5点満点中:劇場にて鑑賞)