こちらもスポーツ専門チャンネルESPNが制作の「30 for 30」シリーズの1つ。アメリカのスポーツと言えば、やっぱり何といってもモハメド・アリでしょ!という事で、アルバート・メイスルズが監督。さすがドキュメンタリーを撮り続けただけあって、切り口が面白い。モハメド・アリはもう彼自身が絵になる男。彼のドキュメンタリー映画は今までに何本作られた事か... その殆どが秀作。正直、モハメド・アリをドラマ化した「Ali / アリ (2001)」も凄かったけれど、ドキュメンタリー「When We Were Kings / モハメド・アリ かけがえのない日々 (1996)」の方が数倍面白い。「Ali: An American Hero / アリ/栄光への軌跡 (2000)」については完全に駄作。唯一見ごたえあるドラマは、アリがアリを演じた「The Greatest / アリ/ザ・グレーテスト (1977)」位。やっぱりアリはアリしかないと思わせてしまうのです。
なので今回もアリの部分は当時の映像のみを使用。そして今回はアリを引退へと追い込んだラリー・ホームズも主役。彼の場合は当時の映像ももちろんの事、現在のインタビューやロケにも応じている。「ホームズなんてKOしてやる!」と息巻くアリの言葉からこのドキュメンタリーは始まっている。モハメド・アリのスパークリングパートナーだったラリー・ホームズがチャンピオンをかけて戦う事になったいきさつから、当時のアリの状況などが詳しく語られている。ホームズは最初にアリから勝った事でラスベガスにてファンに「あんたなんて大嫌い!」と言われ、「何で?」と聞いたら、「あんたがアリをやっつけたからよ!」と言われたというエピソードを披露している。アリが唯一無二のチャンピオンだった事が分かるエピソード。ホームズだって勝ってチャンピオンになれば、沢山のファンから喜ばれると信じていたと思う。この当時のチャンピオンは皆アリの影となってしまったのだ。
ホームズの魅力が満載。あんな強面なのに、自分の子供にキスしまくり。奥さんには帰るコールを欠かさない。そしてインタビューでは「みんなみたいに派手な生活は必要ないよ。家も1つで十分」と、慎ましい発言。でも車の中では熱唱。でもそんなホームズが最後の方では「みんなアリの事ばかり話題にすると、むかつくんだ!」と言い、人間的な部分を見せてくれる。当時は完全にアリの影になったかもしれないが、今では過小評価されたチャンピオンとのも言われていて、再評価されている。30年後のラリー・ホームズが思った以上に幸せそうなのが何よりである。
幸せそうです!
(4.75点/5点満点中:DVDにて鑑賞)