1970年11月14日悲劇は起こった。ウエストヴァージニア州にあるマーシャル大学のフットボールチームの選手とコーチ、そして保護者やファンを乗せた飛行機が大破した。生存者はゼロ。この悲劇の様子や物語はアメリカ全土で幾度も繰り返し話されたのだろう。この事故が起こった時にはまだ生まれていなかったうちの夫が、この事故の事を実に感傷的に語るのです。この映画が出来た時にも、「悲しい事故だった」とやはり語っていた。それ程までにアメリカ人の心に刻まれた悲劇だったのです。しかしこの映画ではその悲劇を主に語っている訳ではない。悲劇によって残された人々の第二次惨事について語られている。しかし、その残された人々の努力は「希望」となっていて、未来が見える。この映画の監督は「チャーリーズ・エンジェル」をリメイクしたMcG。そのペンネームからも新しい物を感じる監督である。しかし、この映画では実に古典的に作っている。どちらかと言うとメロドラマ風。ここ一番で泣いて欲しい時には、わざとらしい位にそれらしい盛り上がる曲を使う。映画を見て泣くのが好きな日本人には、ぴったりの映画。会議中に選手や生徒がチャントするシーンは、かなり古い演出。でも最後のお墓のシーンはある意味驚きがあって、どうしたって泣いてしまう。
面白いのはこの映画の舞台が大都市でないという事。こういう小規模・中規模の都市では、大学のチームが街を活性化しているのが分かる。この映画でも、街を支える大学と工場が隣同士で街の中心にあると描かれていた。その工場に勤める父とフットボールの花形選手である息子の関係、そしてその工場と大学の関係などが上手く描かれていた。この街の中心であったからこそ、さらに大きな悲劇となった。デビット・ストラザーンの役が映画の中で成長し、彼もまた「マーシャルの人」になっていく様が面白かった。
早くに亡くなってしまった人々の無念と、ゼロ...いやマイナスから始める事になった残された人々の努力は、1992年と1996年に実を結ぶ。彼等はナショナルチャンピオンとなる。そして1996年に活躍したランディ・モスはNFLで華々しい活躍を見せるスター選手となった。奇跡というより、これは多くの人々が作り上げた努力の賜物。
(3.5点/5点満点中:DVDにて鑑賞)