SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて

For Colored Girls / 日本未公開 (2010) 811本目

死ぬほど公開を待った... でもその間に映画公開にあわせて出版された原作本を読む時間も出来たので良しとします。原作は映画化にあたって少し足した部分があるらしい。が、公開前に原作を読んでしまった事が、この映画の評価に大きく関わってしまったかも。ハリウッドではかなり酷評を得てしまったこの作品、元々はオビー賞等も受賞しているヌトザケ・シャンゲの戯曲「死ぬことを考えた黒い女たちのために」の映画化。この映画化が決まった時からもうその酷評は始まっていた。映画化を決定したのは、やはり劇作家からフォーブスのハリウッドの稼ぎリストにも3位に入る位に活躍しているタイラー・ペリーだったから。タイトルでも分る通り、「女性作品」であるので、男のタイラー・ペリーにはその気持ちが分るまい!というのが、作る前から言われていた。男とか女とかひとまず置いておいて...

このタイトルの「Colored」は、黒人でもあると同時に「カラー」を持つ女性という意味でもあると思う。原作本にもシャンゲが「これからもっと様々な色が見つかりレインボーに加わる事が楽しみでならない」と書いている。だからこそ、舞台の時には役名はなく「Lady in Red」とかの色で記されている。この映画では、衣装にその色を引き立てて演出している。まあ、そこはなんとなく見る前からそうだろうなーとは思ってました。原作は色も7色なら、場所も7箇所。でもこの映画はすべてニューヨーク。その時点で、この映画はそこまでだろうなって思ってしまいました。タイラー・ペリーの悪さが出ないといいけど...と思ったら、出てしまいましたね。7色のそれぞれの女性が抱える悩みや問題を、彼女たちは詩的に表現していき個々の強さに気づいていくのです。でもタイラー・ペリーは、それをソープオペラ調のお涙頂戴物語にしてしまった。

シャンゲはこの舞台を「コレオポエム(Choreopoem)」と呼んでいる。タイラー・ペリーの作品を見終えたシャンゲは「詩が残っていて良かった」と答えている位、作品の中で詩を大事にしている。確かに詩は映画の中に残ってはいるが、それが詩的だったとは思えなかった。この原作のもつ独特な雰囲気や芸術性を失ってしまっている。悪くは決してない。タイラー・ペリーの中ではいい方。ある意味、タイラー・ペリーが作るだろうなーと思っていた通りの出来。その想像を超えてはくれませんでしたね。まだPBSの「For Colored Girls Who Have Considered Suicide/When the Rainbow Is Enuf / 日本未公開 (1982)」の方が、原作の持つ詩的で独特の雰囲気を保っています。

タンディ・ニュートンとロレッタ・ディバインの演技が見物。タンディ・ニュートンは、妊娠したマライア・キャリーの代役で最後にキャスティングされたけど、難しい役を上手く演じていたと思う。あれはマライアじゃ無理だったかも。アニカ・ノニ・ローズも可愛い。この映画で唯一無名の若手テッサ・トンプソンも可愛い。彼女は一番若い子の役。タイラー・ペリーはそれぞれの色のキャラクターを原作とはだいぶ変えている。一人はレズビアンだったのに、それは出てこない。

男とか女とかそういう事よりも、タイラー・ペリーの芸術性が欠如していたかなーとは思う。オープニングでそれぞれの女優が原作にもあるタイトルにもなっている「this is for colored girls who have considered suicide but...」の詩を読み、声が重なっていくのですが、あの演出は私だったら最後にするかなー。色が重なったレインボーだし、最後は進行形だし。そして、ニューヨークだからって、消防栓から水出して子供たちが遊んでいる絵は無かったかなー。今時... そしてこの映画、夏が舞台って感じもしなかったし... 秋か春が舞台だったと思ってたのに!やっぱりニューヨークの夏の暑さを描かせたら、スパイク・リーには敵わないですねー。「Do the Right Thing / ドゥ・ザ・ライト・シング (1989)」に「Summer of Sam / サマー・オブ・サム (1999)」... やっぱりニューヨークはタイラー・ペリーの物じゃないんだよね。

原作本では、「Precious: Based on the Novel Push by Sapphire / プレシャス (2009)」の原作者サファイアがコメントを書いている。サファイアがヌトザケ・シャンゲに影響されているのも一目瞭然。大文字・小文字の使い方や、わざとタイポとか、スラングとか、相当影響受けていると思う。

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(4.25点/5点満点中:劇場にてSkittlesを食べながら鑑賞)