無類の公民権運動時の映画好きなせいもあるかもしれませんが、中々面白かったです。というのも、公民権時代の頃は善と悪がハッキリしていたと思うんですよね。最近の「ジナ6」とかとは明らかに違う。それは秩序をもって戦うというキング牧師の思想と策略が物凄く完璧だったからだと思います。アメリカの黒人の若い子の中には、キング牧師の非暴力「右の頬を叩かれたら、左の頬を差し出せ」を軟な考えで行為だと思ってる子が多すぎるのは悲しい。あの状況下の中で「右の頬を叩かれても、左の頬を差し出す」という行為がどんなに勇気の居る事だったか、若い子は全然知らない。キング牧師の行ってきた行進をただ歩いてるだけだと思っている若い子が居たら... この映画を薦めます。
この物語は実際に起きた出来事。そのキング牧師はもう亡くなっていた1970年のノースカロライナの小さな町オックスフォードで起こった。そこに白人のメソジスト教会の牧師が就任してくる所から物語は始まります。この映画の原作は、この家族の息子が書いているんですよ。当時まだ10歳そこそこだった息子が大学教授となって書いた作品です。そして公民権運動というのは不思議な運命の巡りあわせで、様々な局面を作っていきましたよね。ローザ・パークスという真面目で芯の強い女性が住むモントゴメリーの町の教会に運命的に就任するのが若き日のキング牧師。このオックスフォードには、その白人牧師家族が就任してきた所に、キング牧師の下でSCLC(南部キリスト教指導者会議)やSNCC(学生非暴力調整委員会)で活躍していた若きベン・チェイヴィスが生まれ故郷に戻ってきていたという。差別されてきて当たり前だと諦めていた同郷の若者達が、チェイヴィスによって開眼していくのです。ところでなぜチェイヴィスが故郷に戻っていたかと言うと、大学を卒業し学士を取得していたけれど、その先の修士の学位を取る為に色々と学校にアプライしていた時期で、故郷で高校教師をしていたみたい。そんな中、町の食品雑貨店を営む差別的な家族によって、ベン・チェイヴィスの従兄弟でアメリカ陸軍に所属するディッキーが殺されてしまう。しかし裁判では白人だけの審判員によって、正当防衛が認められてしまうのです。この町で白人が営む商店などでは黒人の従業員を雇う事はなかったし、警察には1人だけ黒人が居たがその彼が白人を逮捕する事は出来なかったという。そういう町での出来事です。ここには紹介しきれない数々のエピソードが映画では見れます。
ところでこの原作を書いた白人男性は大学教授になったと書きましたが、彼の専門分野はアフリカ系アメリカ学。そして映画の中で彼の父親を演じたのが、リック・シュローダー。「チャンプ」で「ねえ、チャンプ起きてよ」で全世界を泣かせた名子役。あー、ダメだ、涙出てくる。あの「チャンプ」のラストシーンを思い出しちゃう。顔変わらないよね。そしてベン・チェイヴィスを演じたのが、「The Great Debaters / グレート・ディベーター 栄光の教室 (2007)」のネイト・パーカー。実際のベン・チェイヴィスは、今現在モスリムに改宗。そして活動家としては珍しくヒップホップに歩みよって、ラッセル・シモンズと組んで「ヒップ・ホップ・サミット」を開催し、ヒップホップを通じて若いリーダーの育成や教育等を行っている。
そしてベン・チェイヴィス本人が映画について書いたエッセイはこちら。最後にこの映画と原作のタイトルの意味が分かるような1文がありますね。
と褒めてきましたが、一つだけ。この年代を舞台にする映画はステイプル・シンガーズの「I'll Take You There」に頼りすぎだと思う。確かにこの曲だけであの当時を再現出来ちゃいますけど... 素晴らしい曲ですけど... でもみんな頼りすぎ。
(4.25点/5点満点中:DVDにて鑑賞)