この前のLawrence Hilton-Jacobs (ローレンス・ヒルトン=ジェイコブス)も好きなんですが、一時期ハマっていたのがこの映画でアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされたハワード・E・ロリンズ・ジュニアです。というのも、昔関東では夜中に「夜の大捜査線」が放送していて、私はそれを夢中で見ていたんです。シドニー・ポワチエのオリジナルの映画版「In the Heat of the Night / 夜の大捜査線 (1967)」も、もちろん好きですが、テレビ版には愛着があって大好きなんです。ポワチエが演じたヴァージルを演じていたのが、このハワード・E・ロリンズです。何て言うんでしょうか?ハンサムで真面目な正統派。70年代だったらポワチエが演じていそうな役で、90年代から今だったらデンゼルが演じていそうな役を80年代に演じていたのが、このロリンズです。80年代には、その後継者となるデンゼル・ワシントンと「A Soldier's Story / ソルジャー・ストーリー (1984)」で共演しています。もちろんロリンズが主役で、デンゼルが共演者。ロリンズがデンゼルを...って書いちゃうとネタバレになるので書きませんが、とにかく「ソルジャー・ストーリー」は80年代の名作なので絶対に見て欲しい!!でもロリンズは若くして悪性リンパ腫で1996年に亡くなってます。
という私のロリンズへの思いが長くなりました、この映画は随分と昔から見たいと思っていたけれど、今みたいにEベイとかオークションとか無かったので諦めていた作品。そしたらさ、DVDが発売したのよ。2004年に(笑)と、あんなに昔は見たかったのに、手に取った瞬間に安心して中々見ませんでした。2時間40分位ある大作なのよ。
この映画の舞台は20世紀に入ったばかりのニューヨーク。まだニューヨークがニューヨークに完全にはなっていなくて、多くの移民で溢れかえっていた頃。その時に起きたスキャンダルが、後に「世紀の裁判」とも言われた、ハリー・ソウという大富豪が有名な建築家スタンフォード・ホワイトをマジソンスクエアガーデン(今のとは違う)の劇場で銃によって射殺するという事件があった。その事件はハリー・ソウの妻エヴァリン・ネズビットがモデルという裸体の銅像から始まった。その銅像を設計したのが、スタンフォード・ホワイト。ホワイトとエヴァリンはかつて恋人同士であったのです。その実際あったスキャンダルをこの映画の中では物語や登場人物と絡めているのです。ちなみにブッカー・T・ワシントンなんていう人物まで出てくるので、歴史好きにはゾクゾクしますね(私もある意味タイプの違う歴女)。しかもワシントンを演じているのが、Moses Gunn (モーゼス・ガン)。「Shaft / 黒いジャガー (1971)」のバンピーです。昔のニューヨークの町並みとか車等が、歴女の私をワクワクさせてくれます。この映画にはそういう見ごたえがタップリ。
あ、サミュエル・L・ジャクソンがチョイ役で出てます。最後にロリンズに協力するメンバーの一人。台詞は殆どなく、たまにタイミング悪く笑ってました。サムと一緒のグループで、サムよりも少しだけ台詞があって役名もあったのがFrankie Faison (フランキー・フェイゾン)。「Coming to America / 星の王子ニューヨークへ行く (1988)」の大家さん、又は「White Chicks / 最凶女装計画 (2004)」のウェイアンズ兄弟の上司。
でも何と言ってもタイトルが「ラグタイム」という位ですから、ラグタイムの音楽もこの映画の時代とか時代背景と深く関わっていて良いです。ロリンズが演じた役がラブタイムを弾くピアニスト。ロリンズはこの映画について「ラグタイムの頃の話だけど、人種差別という点においては、今でも十分に通用する”ナウタイム”な物語」と語っておりました。その通りです。この映画で20年の引退から一度切り復活したジェームス・キャグニーは、台詞の「Nワード」が言いたくないと「バック(Buck)」という言葉に変えています。その言葉も差別語なんだけど、Nワードよりは意味合いが薄いと判断したみたいです。
ちなみにロリンズが演じた役は、元々はO.J.シンプソンにと考えられていたが、監督が断固拒否。正解ですね。
(4.75点/5点満点中:DVDにて鑑賞)