SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて

Outrage / アウトレイジ (2010) 720本目

アンチはアンチのままで良いって言ってるんだよ、バカ野朗この野朗ーーー!!!!!!
また順番が狂いますが、こちらを先に。何て言ったって、感想書き拒否ってますから。というか、本当に時間が無いのです。明後日にじっくりと。と言う訳で、観て来たって言うんだよ、バカ野朗この野朗ーーーー!!と、カンヌ映画祭のインタビューで全ての台詞に「バカ野朗」をつけたと言っていた北野武監督。お陰で観た後には自分の全ての発言に「バカ野朗この野朗」を心の中(小心だから)でつけている私です。

結論から言えば私向きで面白かった。北野監督の思想が冷酷でシンプルに描かれている。この前の「Belly / BELLY 血の銃弾 (1998)」とは大違い。暴力には暴力を。死には死を。着地点が素晴らしい。北野監督の久々のヤクザ映画でありますが、決してヤクザを美化し称賛した作品という訳じゃないです。むしろその逆。ヤクザ社会に見る社会の縮図と申しますか...どこにでも存在するヒエラルキーを冷酷に描いております。北野武が演じたヤクザ大友はサラリーマンでいう係長クラス。上司の言葉に板ばさみ。だからと言って、中年男性の哀愁を漂わせて大友という人物をアンチヒーローに仕立て無かった部分が私が好きな理由です。単なるサラリーマンなら、アンチヒーローでも良かった。でも大友はヤクザの組長。悪い事は沢山している。アンチはアンチのままなんですよ。北野監督はそこを冷酷に描写してましたね。誰だって一番可愛いのは自分。ヤクザという世界だからこそ余計に効果的に醜く描けたのだと思います。

後は誰もが認めると思うのですが、キャスティングが素晴らしい。役者の個性がピッタリとはまってましたねー。でも三浦友和は見事に印象を覆す面白いキャスティング。椎名桔平は前に松嶋菜々子と出ていたドラマが非常に好きだったんですが、今回も良かった。ラブシーンが良い。彼だけは愛情ある役だったかな?でも人間だものいろんな人が居て当然。後は英語も話す組員も良かったですね。最近ぽい感じ。彼はどんどんスクリーンの中で顔が悪へと変化していったのが分かる。中野英雄は本物ぽい。

という訳で、「Brother / Brother (2001)」では私のオマー・エプスに「アニキ!」と言わせていた北野監督ですが、今回はどこか架空の(アフリカぽい)国の黒人の大使館員を効果的に登場させてます。彼もいちよう小さな悪だったので、ビートたけし演じる大友とその手下に虐められてます。でも...ハリウッド映画とはその扱いが全く違うんですよね。ハリウッドだったらこの前の「Prince of Persia: The Sands of Time / プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」のセソのような結末。つまり真っ先に殺されちゃうって事。でも武映画はそこが全然違うんだな。

ま、登場人物も多いしヤクザの舎弟関係とか細かく分からない外国人には無理だったんでしょうね。アメリカのこの手のギャングスター映画とかも、割りと舎弟愛を描いている物も沢山あるけれど、その関係を美しく描いている作品が好まれますからね。最近で言えば「American Gangster / アメリカン・ギャングスター (2007)」もそうだったでしょ?フランク・ルーカスの兄貴ぶんであるバンピー・ジョンソンとの関係を美しく描いていたけれど、実生活ではお互い嫌いだった。そういえば、私は「アメリカン・ギャングスタ」の着地点が嫌いだった。今回はスッキリ!北野監督はそういう本音をクールに描いてましたね。暴力も目で見てすぐに痛いと分かる、血の気が引く演出。残酷。銃だけじゃなくて、普通に私達の身の回りにある物が凶器になるので、ぞっとする。

だから、面白いって言ってるんだよ、バカ野朗、この野朗!!

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(4.5点/5点満点中:劇場にて貧血気味で鑑賞)