オスカーに備えて、「Precious: Based on the Novel Push by Sapphire / プレシャス (2009)」にて黒人として2人目となる監督賞にノミネートされた(受賞すれば初)リー・ダニエルズ作品を。と言っても、今回はプロデュースだけで監督はしてません。でもメイキングを観ると、かなり口は出してるみたいです。
マライア・キャリーが出てます。「Glitter / グリッター きらめきの向こうに (2001)」で大失敗(ラジー賞でもゼロ世代の最低女優賞にノミネートしちゃいましたものね。多分受賞だろうけど)。この映画の出演が「Precious: Based on the Novel Push by Sapphire / プレシャス (2009)」への出演と繋がり、女優として汚名返上をしました。この映画では、コントロールフリークの夫と結婚してしまった歌手を夢見ていた女性を演じております。これが、また... 私、マライア・キャリーという歌手はそんなに好きじゃなかったです。証拠に彼女のアルバムは一枚も持ってません。ですが、この映画で彼女が歌うシーンがあるのですが、その歌に涙しましたね。カントリーの曲を歌うのですが、マライアは今みたいな曲よりも実はカントリーの方がいいのかも??でも演技は下手ですね。でも、ビヨンセよりは大胆というか、脱ぎっぷりが良く、ヌードではないですが、下着姿とかまで披露しちゃってます。
物語はリー・ダニエルズぽく「虐待」がテーマ。彼の映画で唯一虐待がテーマじゃなかったのは「Shadowboxer / サイレンサー (2006)」位かな?でもあの映画も血の繋がりはないけれど、継母と息子が出来ちゃってる話ですしね。きっと「壊れた家族関係」がリー・ダニエルズの人生のテーマかもしれませんね。でも次回作からは「虐待」や「家族」とは全然関係なくなるみたいですね。「プレシアス」があれだけ注目を集めているので、メッセージは伝わったと思ってるのかもしれないですね。
今回は2人の兄弟が主役。それに絡むのがマライア・キャリー。兄が父から執拗に肉体的・精神的に虐待を受けていた過去があります。弟はまだ小さくて被害は無かった。兄が高校から帰ると、母が父から虐待を受けていて、兄が止めに入って、父が蹲っている時に母と兄と弟は逃げるのです。でも兄は恋人も居て、学校ではフットボールで有望視されていたスター選手。でも全てを捨てて逃げなくちゃいけなかった。切ないです。兄としては虐待されても自分が我慢すればと思っていたけれど、母が虐待されているのを見たらそうはいかなかった。逃げてきてからの生活も、やっぱり兄が犠牲になっている事が多いんですね。しかも、成人してからは弟が白血病にかかってしまって... 兄ではドナーマッチしなかった為に、父を探しにテネシーの故郷へ戻るんですね。そこまでのロードムービーでもあります。立ち寄るそれぞれの州の色が出ていたり、色んな事が起きていきます。
ラストがいいですね。思わず泣いてしまうと思います。分かってはいるんだけど...ラストではいい感じで想像が付かず。
弟役を演じたのがイーサン・ペックという俳優。あ、麒麟の川島君では?と思ったのですが、なんと日本では「ローマの休日」等で御馴染みのあの名優グレゴリー・ペックの孫なんですって。それに関してリー・ダニエルズは「彼の祖父の名前はキャスティングには関係なかったけれど、でも宣伝する上で少し使えるかな?と思った」と素直に語ってました。お金を稼がないといけないというプロデューサーの顔を見せてましたね。
日本でも全然いける映画だと思いました。リー・ダニエルズの映画の中ではかなり分かりやすい設定と演出。それに兄は普通だけど、イーサン・ペックは中々の男前だし。あ、リー・ダニエルズといえば、アリーヤの最後の恋人で元ジェイZの相棒であるデイモン・ダッシュ。彼は何作かでリー・ダニエルズの映画でエクゼクティブ。プロデューサーでクレジットされてますよね。「Precious: Based on the Novel Push by Sapphire / プレシャス (2009)」は絡んでないみたいだけど、この映画ではクレジットされてます。もう昔みたいにお金はないみたいだけど、プロデューサー業は頑張ってるんですよね。
(4.5点/5点満点中:DVDにて鑑賞)