Imitation of Life / 模倣の人生 (1934) 617本目
先日書いた通り、同じような作品が続きます...が、3本見た中でこの作品が一番好きです。女性のガッツが見える作品です。とは言え、主人公の1人であるルイーズ・ビーバーズが演じたディライアというキャラクターはアント・ジェミマ(ジェミマ小母さん)というステレオタイプな役でもあります。アント・ジェミマはアメリカの昔からある有名なパンケーキ(ホットケーキ)のイメージキャラクター。(詳しくはこのオフィシャルで)今でもあります。昔は黒人マミー(乳母)をイメージするエプロンに頭には頭巾を被っていて、数々の黒人女性がそのイメージを演じてきました(所謂「風と共に去りぬ」のマミーを演じたハティ・マクダニエルのような姿)。今でも黒人女性がイメージキャラクターではありますが、さすがにエプロンに頭巾という姿ではありません。いずれにしろ、アント・ジェミマは女性版アンクル・トム...マスターに従順で献身的な女性のステレオタイプのイメージです。この映画でのディライアも、正にそのイメージそのもの。ディライアは未亡人で色の白い娘ピオーラと共に家を失い、メイドの仕事を求めて主人公のビーの家に間違えてやって来ます。そこで運命が変わってしまうんですね。ビーも同じく未亡人。メイドなんて雇えるお金がある訳でもなく...夫が残したのは、メープルシロップの会社だけ。色んなお店を巡って商品を置いてもらおうとするが、女性なのであんまり相手にされなかったり。お金は要らないからとビーの家に居ついたディライアが作るパンケーキを食べてびっくり。美味しい。私にはメープルシロップがあるからと、そのパンケーキと抱き合わせでお店で出す事を思いつく。都会で美味しいパンケーキが食べられると店は繁盛。でもその店を出す工程とかも、バイタリティがあって面白い。ある時店にやってきた怪しいコメディアンのような男が、ビーにコカコーラはなんで儲かったか分かるかい?と聞いてくる。「Bottle it(ボトルに入れたからだよ)」と言う。パンケーキを「Box it(箱に入れなよ)」というアドバイスを貰って、パンケーキ工場を作ってしまいます。女性が成功していく過程がテンポが良くて見ていて気持ち良いです。ビーを演じたクローデット・コルベールも小粋で慎ましくて素敵です。
と、この映画のテーマは女性成功記みたいですよね。でもこの映画には先日見た映画と同じく「Passing」...黒人が白人で通すというテーマもあります。この映画ではフレディ・ワシントンという黒人女優がそのピオーラという役を演じています。ポール・ロブソンと「The Emperor Jones / 巨人ジョーンズ (1933)」に出ていたりと、当時を代表する女優で、この映画以降は特に期待のニュースターという事で持て囃されました。でもこの映画と同じく彼女もまた色が白いという理由で、あまりいい役につける機会がありませんでした。映画を諦めてニューヨークの舞台へ移ったそうです。フレディ・ワシントンの陰のあるそしてヤンチャな演技がこのピオーラという女性をより悲劇的にしていくんです。とは言え、やはりディライアのキャラクターは献身的過ぎるかな?とも思います。ビーがパンケーキで儲かっていく過程で、ディライアに「自分の家も自分の車もすべて思い通りになるのよ!」と言うと、ディライアは「奥様は私を家から追い出す気ですか!」という台詞。まあ彼女達の数奇な運命を物語る台詞でもあるんですが。そしてメイドをやる事で娘ピオーラを養っていくんですが、ディライアにとってはそれが術の全てだったと思う。でも白人の家庭で白人の環境で育てられたという事が黒人への憎悪に変わってしまったという悲劇ですね。
2005年に米国立フィルム登録され、2007年にはタイム誌が選ぶ「人種に関する作品でもっとも重要な25作品」の1作品に選ばれたりと評価されている作品。もちろん当時のオスカーの作品賞にもノミネートされている。
この作品は20年もの歳月を経て1959年にリメイクされています。その作品も続けて見ているので後日。色々ありますが、でもこちらのオリジナルの方が好きですかね。女性の生き様としての見せ方が好きです。ああならなきゃねと思わせてくれます。ビーもディライアもピオーラもこちらの方が凛としている。最後が素晴らしいです。女性だけど母親という立場を守り抜いているラストが好き。ただ両者ともに主人公の白人の娘役は代わらずウザキャラでしたね。
先に書いたアント・ジェミマの商標を大手の食品会社が取得したのが1937年の事(アント・ジェミマのキャラクターは元々古くからある)。この映画はその先をいっている訳です。女性として、やっぱり女性がカッコいい映画は見てきて気持ちがいいものです。
感想はこちら。
(4.25点/5点満点中:DVDにて鑑賞)