The Topdog Diaries / 日本未公開 (2002) (TV) 608本目
ドン・チードルと「Basquiat / バスキア (1996)」のジェフリー・ライトが出演したオフ・ブロードウェイ「Topdog/Underdog」のビデオ日記。劇作家はスーザン・ロリ・パークス女史。この作品で彼女はピューリッツア賞を受賞。公演は2001年。ドンチーとジェフリー・ライトがこの舞台に出演する!というニュースを聞かされた時、どんだけニューヨークに住んでない事を悔やんだ事か... すごく見たかった作品。演出は最近は「Lackawanna Blues / ブルース・イン・ニューヨーク (2005)」とか「Nights in Rodanthe / 最後の初恋 (2008)」等の映画監督もしているジョージ・C・ウルフ。ウルフは元々は舞台演出家であって、タップダンスの若き獅子Savion Glover (セイビアン・グローバー)の舞台などを演出してトニー賞を受賞している有名演出家であります。グレゴリー・ハインズが出演したブロードウェイ「Jelly's Last Jam」の演出・作で有名となりました。
ブロードウェイ等で行われている演劇やミュージカルは、エンターテイメントで芸術の一つでその最高峰でもあると思うのですが、映画とちがって世界各地どこでも見れるという訳じゃないのが、非常ーーに残念ですよね。来日公演やメディア化される舞台も多々ありますが、やっぱりその場に居て感じられる臨場感とかが、生とビデオでは全然違うと思うのです。それだけに本場に行って触れたいという人が多く、観光客がニューヨークに押し寄せる一つでもあると思うのですが... でも、やっぱりビデオでも何でもいいから見たい!とファンは思うものであります。残念ながらこの作品は舞台がメディア化されたものでなくて、タイトルにもあるように「日記」なんです。スーザン・ロリ・パークスを追う制作日記です。もう、それでもいい...と藁をもつかむ思いでこの作品にすがりました。
なんとなーくですが、劇作家というと気難しい性格を思い浮かべてしまうんです。映画のリアリティさ、逆にファンタジーさを追い求めて、台詞は実際の言葉と変わらないのとは違って、舞台劇はミュージカルもドラマも詩的な台詞やリズムを感じるのです。これも私の勝手な推測なんですが、詩って絶望とかの淵に立たされた時に生まれるものというイメージもありまして... なんとなくギリギリの所に追い詰めて生活しているようなイメージがあるんです。勝手な想像力・妄想力なのは分かっているんですが... 映画の脚本家はカリフォルニアの暖かい空気の下で燦々とコーヒー片手に物語を書いているイメージなんですが、劇作家はニューヨークの寒い冬のどんよりした天気の下で黙々とココア片手に書いているイメージなんです。しかし、スーザン・ロリ・パークスは明るい。普段は大学で教えているのもあってロサンジェルスで生活しているらしく、ノビノビと書いてました。私のブロードウェイの劇作家への偏見がバッサリと切り捨てられました。でもパークス女史には私がイメージしていたアーティスト気質もあって、ニューヨークの個性的な夜道を歩いている姿も印象的でしたね。やっぱりああいうのに感化されるんだなーって思いました。そしてこの物語は2人の兄弟のお話。男性の事が綴られているので、女性からバッシングも少しあったそう。でも男性からは「この話しはおちんち○がついてないと書けないよ!」と絶賛されたそう。この日記の中にもドンチーがエロ本片手にしているシーンもありました。作品はコメディであり悲劇。パークスは「コメディと悲劇はとなり合わせね」と言います。これはコメディアンがいつも言う事。舞台が映るシーンでは、やはりコメディの部分と白熱した部分の両方が見れました。リハーサルや演出家が決まる瞬間など...珍しいシーンも多かったです。
パークスはマウントホリヨーク大(モー・マネーでデーモンが通っていたと面接で嘘言った名門女子大学)時代に、あのジェームス・ボールドウィンの師事していて、ボールドウィンが劇作家になる事を勧めたらしい。授業が終わるとみんなボールドウィンと話したいが為に周りを囲んだけれど、パークスは恥ずかしくてそれすら出来なかったらしい。「だって小さい頃から彼の作品を読んでたのよ!無理よ」と話してました。分かるな、その気持ち。好き過ぎると尻込みしちゃう感じ。
ちなみにオフじゃなくって、ブロードウェイに進出した際には、ドンチーからモス・デフにキャストが変更されています。
うーーーん、やっぱり生で見たかった!今となっては悔やんでも悔やみきれない... せめてメディア化してくれた良かったのにー!
(4.25点/5点満点中:DVDにて鑑賞)