見てきましたよ。この前からずっと見たい、見たいと言っていた映画。「The Harimaya Bridge / はりまや橋 (2009)」です。本家舞台となったはりまや橋は日本の3大がっかり名所なんて言われていますが、この映画はそんな事ありませんでした。見たいという期待の気持ちの方が強すぎて、がっかりだったらどうしよう?なんて思う事もあるんですが、この映画は大丈夫でした。期待通り。アメリカ人監督が作ったとは思えないほどに日本的。ハリウッド的なテンポなんて無かった。台詞でもハリウッド映画を批判していて面白かった。ああいう日本人の学生絶対に居るもんね。笑ってしまいました。絶対に居ると言えば、ここに出てくる人々が絶対に居る感じなんですよね。現実的。私は主人公とより近い立場なので余計そう思えてしまったのかもしれません。でも私の環境とより近い映画が過去に日本映画で作られた事もあるのですが、そちらはそんな風に現実的だななんて思えませんでしたからね。きっと外見的な部分じゃなくって、内面を描いたからこそそう思えたんだと思います。最後はトントン拍子で上手過ぎるなーなんて事も思いますが、やっぱりああでなきゃ...とも思いました。
面白いのは両方にある偏見を描いている所です。父親が第2次世界大戦中で、捕虜となって日本人兵士によって見せつけの為に無残に殺された。その事は兄(ダニー・グローバー)ですら知らない(このエピソードでダニエルが本当は家族思いで優しい事を知るのだけど)。一人ずっと日本を憎んできたのが主人公となるダニエル・ホルダー。そんな日本に息子が行くと言ったものだから、大喧嘩。勘当して息子は日本に来る。そしてその地で事故死。またもやダニエルは日本という国を恨む。愛する人を2人も日本という国が関わって死んでしまった。余計に日本という国に心を閉ざしていくんですよね。そして息子の葬儀に見知らぬ日本人女性。息子の亡骸を見て泣いている。そんな姿を見て、ダニエルは怪訝そうな顔をします。葬儀後に、息子の遺品が日本にあると聞いてどうしようかダニエルは悩み、甥に代わりに日本に行ってくれと頼む程に嫌いなんです。みんなに説得されて自分で遺品である息子の描いた絵を探しに単独日本に来ます。ちょっと普通より大きめのダニエルの体が日本の高知の空港に飛び降りた時のスクリーンの絵はちょっと面白いです。敵地に乗り込んで来たぞ!って感じなんです。そしてダニエルの息子が世話になっていた高知の教育委員会の人達は、そんな状況も知らないので明るく出迎えてしまいます。きっとアメリカ人特有な明るいノリの良いダニエルを想像したのでしょうね。教育委員会の人達は、仏頂面のダニエルにとっても戸惑ってしまう。ダニエルは息子の絵を返してくれと、半ば強引に接します。教育委員会の人達も表情を強張らせたりして、空気を出そうとしていますが、アメリカ人にはそんなの通用しない。そういうお互いの文化の違いと抱えている偏見が出ていて面白いんです。私も感じる事が多々あります。アメリカ人には直接言わないと何にも通じません。世話係の教育委員会の人が、ようやく感づいてダニエルと第2次世界大戦について衝突するシーンが見物です。清水美沙がその教育委員会の世話係を演じていたのですが、思っていたよりも良かった。清水美沙も国際結婚なんですよね。彼女もアメリカに住んだりしていたので、思う所があったんだと思います。彼女が結婚した時にスポーツ新聞でチャールズ・バークレイと結婚!と書いてあったので、私はあのサー・チャールズ事、NBAのチャールズ・バークレーかと思って腰が抜けそうになりました。後から名前もちょっと違う事を知って、やっと納得しましたけれど。
ダニエルの息子ミッキーと恋に落ちるのが、高岡早紀です。彼女の演じた日本人女性は、私とは違って元々はアメリカも黒人というのにも興味の無かったような人に思えました。その2人が高知で出会って恋に落ちます。その設定も面白いですね。でも私みたいな元々興味のある女性達はなぜか偏見の目で見られてしまうのも悲しいですが... 私と夫なんて、六本木や横須賀・横浜とは全然関係ない場所で出会ってるんですがね...
ちなみに私が見た時の館内の平均年齢が非常に高かったです。もうちょっと若い子に見てもらった方がいいかと思うのですが... うちの母も連れて行きましたが、感動して号泣してました。いい映画を見れて幸せな気分と言ってましたわ。うちの子供も連れて行ったけれど、後から聞いたら「まあまあ」だったそう。あんまり子供の心には響いてくれてなかったみたい。残念。この優しいゆったりとしたテンポは子供には無理だったみたい。
この監督の作品楽しみになりました。最初にスクリーンに映る絵の具の色から気を使って作っていると思いました。芸術家思考ですね。ダニエルの息子のミッキーが描いたという絵や部屋に描いてある「冒険」という文字が味があるんですよね。また日本に伝わる古いはりまや橋の歌を元に、こんな風に現代劇で使うとは面白いです。私も最初間違えていたのですが、はりやま橋じゃなくってはりまや橋なんですよね。私が買った前売り券のレシートははりやま橋になってた。間違いやすいみたい。
いちよう触れておくと、とんねるずの貴さんの娘の穂のかは表情によっては貴さんにソックリ。物語で要となる女の子を演じてます。白石美帆がやっぱり可愛かったわー。ミソノがテレビに出て、この主題歌をプロモーションする時に恥ずかしそうに「私ハリウッド映画に出させてもらって...」というのが妙に気になるのは私だけですかね?
ダニー・グローバーは殆ど出てきません。残念だけど。そのダニーのインタビューを見て知ったのですが、ダニーやダニエルを演じたベン・ギロリが居たサンフランシスコの劇団では「Yohen」というこれまたアメリカ黒人の男性と日本人女性の結婚30年を描いた戯曲があるらしいです。こちらは第2次世界大戦後に結婚した初老の2人が主役。男性の方は、ダニー・グローバーも演じた事があるらしいです。見てみたいです。舞台Yohenのついてはこちら。
感想はこちら。
(4.75点/5点満点中:久々に劇場で鑑賞!)