これは「Ganja & Hess / ガンジャ&ヘス (1973)」と全く同じパターンですね。製作が70年代故にブラックスプロイテーションの枠にはめられていますが、プロットが芯のあるしっかりとした内容。しかも80年代・90年代に映画とは全く関係ないジャケットとタイトルで再発されてB級扱いされました。私もIMDBのインフォメーションを見て「ブラックスプロイテーション末期に作られたB級映画」なんて書いてしまってます。でもこの映画の場合はオリジナルタイトル「Abar, the First Black Superman」っていうのも、かなり怪しい&危ないですよね。オリジナルタイトルでも良い作品とは中々想像出来ないです。B級ではあるけれど、これは良いB級作品です。伝えたいメッセージがこの映画には沢山詰まっています。そしてそのメッセージがグイグイと伝わってくるんです。
今回は「アンクルトム」呼ばわりされた真面目な医者が研究に研究を重ねてとあるプロジェクトを遂行しております。本人はアンクルトム呼ばわれされてますが、相当な被害を被っています。皮膚の色だけで平気で差別をする近所の白人という見える敵、黒人仲間からのピアプレッシャーという見えない障害。白人に従順な黒人という意味の「アンクルトム」という言葉は白人から発せられる事は余りなく、ほとんどが黒人からの嫌味で使われる言葉だ。仲間である筈の黒人から散々言われ、家族も犠牲にしながらも、彼はプロジェクトを止めない。そのプロジェクトが泣けるんですね。主人公はマーティン・ルーサー・キング牧師の死にとっても心病んだのでしょうね。その脱力感がこの映画の主人公を変えていくんですよね。まあ、本当だったら医者になる位頭がいいのなら、自分がキング牧師のようになればいいのにと思うのですが、そこまでの勇気と様々な嫌がらせに耐えられる程の精神的にも肉体的にも無理なんでしょうね。だからこそ自分で出来る事をした。
確かにブラックスプロイテーションな復讐劇でもあり、その復讐の仕方とかも笑っちゃう場面もあります。でも、ロサンジェルスのワッツをメインとしたロケーションとか面白かったです。ワッツと言えば、ワッツタワー。そこでの攻防戦は面白かった。ただ夜のバイクシーンはちょっと照明が足りなくて見難くて残念。物語も結構バラバラと話が転調しちゃいます。でもプロットがいいので見れちゃいます。
タイトルのエイバーを演じたのがトバー・マヨという俳優さん。ボールド頭で、ボキーム・ウッドバインにそっくり。ボキームでリメイクしてもらいたいです。監督も脚本家もこの映画しか作品を残してないみたいです。医者を演じた俳優が脚本も手伝っているみたいですね。悲しくて切ない台詞が多かったので、もっと色んな作品が見たかったです。
この映画が作られた70年代は「Black is Beautiful」とか「Black Power」等が台頭していた頃。パワーを持つ事で対等になろうとしていた時期で、ブラックスプロイテーションも同じく主人公はパワーを持って暴力には暴力をでストレスを発散していた時期。その中でキング牧師の非暴力の精神で作られたこの映画は異色で面白い。
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(4点/5点満点中:DVDにて鑑賞)