美しさに圧倒されました。在り来たりな言葉ではありますが、素晴らしい。アカデミー賞の外国語部門、カンヌ映画祭、ゴールデングローブ賞という名立たる賞を獲得しています。ここまで色を美しく表現出来るとは凄い事です。ギリシャ神話をカーニバルを控えたブラジルのリオ・デ・ジャネイロに置き換えて出来た作品です。ヒロインのユリディスが田舎からリオに船でやってくるのですが、船を降りようとした盲目の老人がユリディスにぶつかってしまい、ユリディスは最初ビックリして怒るのですが、相手が盲目だと分かると今度は逆に手を取って一緒に降りてあげます。そうするとその老人は、ユリディスに黄色の首飾りをプレゼントします。ユリディスの白いドレスと褐色の肌に、その平和を意味する黄色の首飾りが綺麗に映るんです。もうその瞬間から、この映画の虜になりました。そしてユリディスと老人のお互いの優しさを見て、これから見るこのこの映画はいい映画だなって感じたのです。
ここまで色が綺麗な映画も珍しいかと思います。芸術って色が大事ですよね。ファッションにしても色の組み合わせが大事だし、写真でもカラーにするかモノクロにするかで全然違うし光の加減でも全然違う、絵画に至っては色が無いと描けない。映画もそうなんですよね。思い知らされました。この映画にはその綺麗な色彩が必要だったと思いました。ブラジルのリオ・デ・ジャネイロは情熱的なビビッドな色が目立ちます。そしてユリディスがカーニバルの衣装を纏いながら逃げ回り、丘にたどり着いた時に映し出されるパステルカラーのライトブルーのドレスがフワっとなる瞬間、これが物凄く恐怖心を誘いながらも綺麗なんです。こんなに綺麗な人が...と観客の心を鷲掴みにします。夜の風景と昼の風景の違いも良かったですね。カメラへの映し方が上手いんです。俳優達のフェードアウトの仕方とか、俳優達を直接じゃなくて何か越しに見せたりと。
そして主人公を演じた俳優達がこれまた綺麗。ユリディスを演じたマルペッサ・ドーンはこの役の為に生まれてきたかのよう。もう一人の美人であるミラ役の人がスレンダーでモデルのような美しさなら、ドーンは田舎からやってきた純粋な美人役にピッタリ。可憐という言葉が良く似合います。ドーンは母がアメリカの黒人で父がフィリピン人だそうです。どことなくエキゾチックなのです。そして主役のオルフェを演じたブレノ・メロがHarry Belafonte (ハリー・べラフォンテ)のような2枚目なんです。しかも目の色がヘーゼル色なので、彼もまたどことなくエキゾチック。アメリカの黒人とはまたちょっと違うんですよね。顔や肌の色艶や筋肉の付き方も若干違うように思います。
そしてリオ・デ・ジャネイロの情熱を伝えるサンバの音楽と、ボサノヴァの美しい音色が全ての美しさをこれまたスクリーンで一つにまとめているのです。
そしてバラク・オバマはこの映画の事を自分の本「マイ・ドリーム―バラク・オバマ自伝」の中で、母のアンがこの映画に影響を受けた事を語っています。彼女が初めて見た外国語の作品がこの映画だそう。この映画が無かったらオバマは存在していなかったかも??変な外国語作品だったら、彼女の目はあのように外国に向かなかったでしょうからね。
実はこの作品この前書いたNAACPが選ぶ100本で見つけたんです。存在は知ってましたが、そういえば見てなかったわ...と。また興味深いのが、1999年にはブラジルの監督(本作はフランス人監督)により新しい作品が作られているのですが、その時のタイトルが「オルフェ」。タイトルから黒いが消えたのが興味深い点。
感想はこちら。
(5点満点:DVDにて鑑賞)