ソロモン・ノーサップという実在した人物が書いた「Twelve Years a Slave(12年間の奴隷)」という本が原作のテレビ映画です。「Shaft / 黒いジャガー (1971)」等で御なじみのゴードン・パークスが監督。それだけで見たくなるでしょ?
ソロモン・ノーサップは、ニューヨークのサラトガスプリングという所で自由黒人として家族と共に暮していた。バイオリン弾きの才能があって、パーティー等に呼ばれていた所にサーカス団体と名乗る白人の男2人に声を掛けられた事から人生が変わってしまいます。彼等は多額の出演料を提示した。けれどワシントンDCに行かないとならない。ワシントンDCは、奴隷州との境の線とされるメイソン・ディクソン線で南部に位置している。つまり奴隷が合法な場所。有名な議会議事堂のすぐ裏には奴隷を入れる檻があったという。その議会議事堂も奴隷が建てるのに従事している。彼等はソロモンを睡眠薬で記憶を失わせて、ソロモンが気がついた時には地下にある檻で手錠と足枷がはめられていたと言う。自由黒人だと主張したが、すでにとある男が自分がソロモンの所有者だと名乗り、彼から激しい折檻を受けた。北部での自由黒人を証明する紙など、南部には通用しないのだ。そして暫くして、他の奴隷達と共にどこに行くか分からない舟に乗せられた。気がつけば、ルイジアナで奴隷として名前を勝手に「プラット」と変えられて働かされていた。
壮絶です。
こんな事があっていいのか...と呆然とします。
他の奴隷達とのふれあいの中で、彼は「自由」である事意味を知ります。ずっと奴隷として生まれてきた人との感情の衝突とか、フィクションでは描けない生々しさもあります。ソロモンをいつもいい形でアシストしていた老人が「Crossroads / クロスロード (1986)」でウィリー・ブラウンを演じたジョー・セネカ。本当にいつも良いタイミングで出てくるんです。そして彼との最後の約束(これは映画の演出で事実じゃないみたいですが)。ソロモンはこの映画の題材となった「Twelve Years a Slave」を出版する事で果たしています。1853年にニューヨークに戻り、その年にはもう「Twelve Years a Slave」を出版しています。
ゴードン・パークスはいつものように美しい描写で楽しませてくれます。右上のジャケットもいい感じでしょ?小さいから見難いかもしれないけれど、黒人達が話している所に怪しい影が差し込んできてます。その影は容易に想像できますよね?今回その美しさのお手伝いをしたのが日本がルーツのヒロ・ナリタという方。この前の「Space Is the Place / スペース・イズ・ザ・プレイス (1974)」でも日系の方が活躍してましたね。
こういう風な経験をしたのはひょっとしたらソロモンだけじゃないかもしれないと思うと、心が痛みます。表になってないけれど、ある話かもしれません。
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(5点満点:DVDにて鑑賞)