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Sugar Cane Alley / マルチニックの少年 (1983) 43本目

カリブ海に浮かぶフランス領の島マルチニックで生まれ育ったユーザン・パルシーの作品。90年代初頭のスパイク・リー旋風が日本にやって来た頃に、ユーザン・パルシーも雑誌等で特集を組まれたりしていたので、ご存知の人も多いと思う。とは言え、マルチニックはフランス領なので、フランス語だしフランス文化が根付いているので、アメリカの90年代の映画とはかなり違う。当たり前だけど。しかも80年代初期の作品だし。どちらかと言えば、同じ女流監督のジュリー・ダッシュの「Daughters of the Dust / 自由への旅立ち (1991)」に近い感じを受けた。いや、それとも全然違うオリジナリティを感じました。フェミニズムがくどく感じられないし、女性の素晴らしさと男性の素晴らしさのバランスの良さを感じて人間賛歌のようだ。それでいてスクリーンの絵がアーティスティック。暗闇の炎とか綺麗。マルチニックの慕情とか奥ゆかしさとかフランスに影響を受けただろう文化とか、悲しい歴史とか全てが大胆に映し出されている感じを受けました。その映し出し方に芸術的なものを感じました。

何でもユーザン・パルシーが14歳の時に原作を読んで映画化したいと思ったらしいです。優秀だったパルシーは映画学校とフランスの名門ソルボンヌ大を掛け持ちして通っていた頃に台本を書き上げていたという。たまたまその時のルームメイトがあのフランス映画の名監督フランソワ・トリュフォーの娘と友人で、ルームメイトがトリュフォーの娘に台本を読ませて、更に娘がトリュフォーに台本を読ませて気に入ったらしいです。トリュフォーと言えば「大人は判ってくれない」。私の大好きな作品の一つ。小さいジャン・ピエール・レオが物凄く可愛かったと共に切ない物語だった。作文の宿題の件がこの映画と「大人は判ってくれない」とちょっと似ている。結果も過程も違うのだけど。また大人も「大人は判ってくれない」ではどうしようもない大人達だったのに対して、こちらの作品では大人も素晴らしい。少年達の憤りの無さは似ているのだけど、全然違う趣の作品をトリュフォーが気に入っていたのも興味深いと思った。両方共に少年が大人になっていく過程を描いているのだけど、それが全然違う。2人の少年共に憤りの無さを感じているが、片方は飽くまでも大人の姿を見て自分も前向きに生きていこうとする。片方はとことんまで落ちてしまってからやっと感情を表して生きていく。もちろん両方があって当然だとも思う。2つ共にその存在意義の説得力がある。

所でこの映画で素晴らしい大人の1人を演じたメドゥーズ爺さんは、あのウスマン・センベーヌの「Xala / 日本未公開 (1975)」にも出演していたらしい。センベーヌの作品はセネガル作品なので、インターナショナルな俳優の一人。2つの優れた作品に出演しているのも凄いぞ!この映画では、本当に素晴らしかった。昔話を話す時がなんとも威厳に満ち溢れていて、それでいてどことなくエキゾチック。よく「子供1人を育てるのには村がかり」という諺があるけれど、それがよく分かるような物語。私もこの映画の主人公のジョゼよりももうちょっと小さい頃には、近所のオバサンにお世話になった事を思い出した。自分の子供じゃないのに、凄い可愛がってもらったっけ。今じゃ日本では失われているんだろうなーと思います。でも私の子供の頃には確実に日本でもあったメドゥーズ爺さんとジョゼの風景。マルチニックという島を全然知らなかったけれど、この作品を通してその悲しい歴史を知る事も出来たし、何よりも人の温かさや人間の素晴らしさに改めて出会えたので素直に感動しちゃいます。

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(5点満点:DVDにて鑑賞)