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ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて

LAタイムズのブラックムービーの記事

LAタイムズの日曜版にブラックムービーの今と黒人監督についての記事が掲載された。
中々面白い。
タイラー・ペリーの映画の成功と、その後に出てきた黒人監督が置かれている状況。タイラー・ペリーによって道が開かれたけれど、インディペンデンスで自分の映画をマーケットするのが難しいとの事。スクリーン・ジェムス社は、「タイラー・ペリーにはもちろん関心があるけれど、そのコピーは要らない」と言いつつ、タイラー・ペリーの映画ソックリな「This Christmas / 日本未公開 (2007)」を公開させている。
「Black Directors in Hollywood」の著者メルビン・ドナルドソンはタイラー・ペリーの映画を「タイラー・ペリーは賞賛されるべき。教会を使い家族と信仰の前向きな部分を表現する事を自分で作り出したんだ。」。またUSCにてブラックムービーの講義をしている教授トッド・ボイトはタイラー・ペリーの映画について「Cooning(道化の黒人)だ。黒人のイメージを良くするんじゃなく、もっと悪くしたんだ。」と両者は語っている。

また「Talk to Me / 日本未公開 (2007)」や「The Great Debaters / グレート・ディベーター 栄光の教室 (2007)」、「Akeelah and the Bee / ドリームズ・カム・トゥルー (2006)」等の批評家にも受け入れられ、多くのメジャースターが登場する真面目なドラマ作品から、黒人の観客が足が遠のいているのでヒットしない事も書かれている。「Killer of Sheep / 日本未公開 (1977)」の監督チャールズ・バーネットもインタビューで、自身の最新作「Namibia: The Struggle for Liberation」の配給会社を探しているが、「何か変えようとする作品、そしてインディペンデント精神を支えるような作品を、我々の仲間がそれらを応援してくれないんだ。」と語っている。

俳優でもあるレジナルド・T・ドーシーは「Kings of the Evening」を監督した。この作品は、この前行われたPan African Film Festivalで賞賛されたが、スタジオや支援者からは「ブラックムービーは、海外では興味が低い」とハッキリ言われてショックを受けている。

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ここからは私の意見。

レジナルド・T・ドーシーがそういう風に言われない為にも、ここのブログとかホームページで頑張ってるんですけどね。自分が無力なのも理解してます。でもゼロじゃなくて、1にはしたいんです。日本の配給会社が買ってくれないから仕方ないですけどね。タイラー・ペリーの作品だって日本ではビデオ発売すらしてない。「Talk To Me」や「The Great Debaters」すら日本では公開・販売されない→観客、そういう作品知らずにポカーン→ブラックムービーは誰も見ないと日本の配給会社が思い込む→ラッパーの名前だけに頼ったB級・C級ブラック映画が大量にビデオ店に並ぶ→ブラックムービーは質が悪いと思われる→観客興味無し→良質のブラックムービーは日本では公開・販売されない。

悪循環です。

上のメルビン・ドナルドソンの言葉「観客は多様性に準備が出来ていると思う」という言葉で、この記事を〆ている。
ペリーのような映画ばかりでなく、良質のドラマは多くのアート系の映画館に支えられて、黒人コミュニティに逆に戻ってきている。ドナルドソンは「今は上手くバランスが取れていない。けど、観客はいて、多様性の準備が出来ている」と語っている。

確かにそう思います。この前書いたように、今後は黒人監督が黒人である故の経験とは違う映画を監督する事が多い。逆に、別に黒人が主役じゃなくても成り立つような作品に、黒人が主役という事も多くなってきた。その多様化の波はすでにもう来ている。

日本の皆さん、多様性の準備は出来てますか?