SOUL * BLACK MOVIE

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて

Enough is Enough!!

アメリカの黒人に殆ど興味のない日本では、残念ながらあんまり報道されていないようだけど、ジョージ・ジマーマンという男に殺された17歳のトレイヴォン・マーティンの「殺人」事件の裁判で、なんとジマーマンが無実の判決が昨夜遅くに出た。

トレイヴォンとジマーマンの事はここのブログでも何度も書いたし、ツイッターでも散々書いてきた。

昨日は判決がいつ出るか分からないので、「今度こそは!」と思いながら、ニュースを一日見守った。しかし夫の心情は私とは違った。でも夫だって内心は「今度こそは」と思っていたのか、私が一日中CNNをつけていても、いつもは文句を言ったり、タイミングを伺って、いつの間にかチャンネルを変えている夫が、昨日はそのままずっとCNNを見ていた。夫は判決が出る前から、もう希望なんて無いねという感じで「どうせ無実だよ。分かってる」と嘆いていた。判決後にアイス・キューブも「判決は驚きもしなかった。サンフォードは元々ジマーマンを逮捕する気無かったんだから!」と嘆いていた。黒人の人々にとっては、もうこの手の脱落感や絶望感は日常茶飯事になって麻痺し、希望なんて持っていないのだ。残念ながら。

それはそうだ。奴隷としてアメリカに渡ってきて400年間、全く変わらないのだから。ざっと思い出すだけでも、1919年にオマハで起きた人種暴動の際にリンチされて殺されたウィル・ブラウン、1955年に白人の女性に口笛吹いただけでリンチの末に殺されたエミット・ティル少年(14歳)、1963年のNAACPの活動家メドガー・エバース、1964年の白人2人と黒人1人というCOREのメンバーへのリンチ殺人、1965年アラバマで起きたジミー・リー・ジャクソンが州警官隊に殺された事件、1970年には映画「Blood Done Sign My Name / 日本未公開 (2010)」にもなったヘンリー・”ディッキー”・マーロウ殺人事件、1991年LAで起きたロドニー・キング事件、1999年にニューヨークで起きた警察によるアマドゥ・ディアロへの射殺事件、そして2006年同じくNYで次の日に結婚を控えていたショーン・ベルへの警官による射殺事件、そして2013年トレイヴォン・マーティン殺人事件。黒人が被害者でなぜか無実になった裁判は、思い出せるだけでこれだけある。調べればもっとある(ここに最近のだけど一部のリストあり)(更に追加。こちらはもっと詳しい)。ちなみに1965年のジミー・リー・ジャクソンのリンチ殺人事件は、42年後の2007年に犯人が自首をしてたった6ヶ月の刑を言い渡されている。1991年のラターシャ・ハーリンズは韓国人の経営するお店で店主の韓国人女性に後ろから撃たれて殺された。陪審員はその韓国女性に16年の刑を言い渡すが、なぜか裁判官が刑を変えて5年の刑期とコミュニティサービス、そしてたった500ドルの罰金を言い渡した。2009年のオークランドのBARTで起きたオスカー・グラントへのBARTの警官による殺人事件は、過失致死で2年の刑期だが、実際には146日ですでに刑を終えている。このオスカー・グラントに関しては映画「Fruitvale Station / 日本未公開 (2013)」になっていて、サンダンス映画祭で大賞を受賞、カンヌ映画祭でも賞を取り、次期のオスカーへの期待も高い。こんだけあれば、さすがに希望なんてなくなる。私だってアメリカでハロウィーンの時に起きた服部君の殺人事件だけで、結構ビビッてるもの。

でも今回は「Manslaughter(過失致死傷罪)」位はあるんじゃないかと信じていた。Manslaughterは日本語でも殺人。でも、第一級殺人や第二級殺人とは違う。今回のケースでは、第二級殺人か、過失致死傷罪か、無実か、審理無効の4パターン。第二級殺人罪だと最高で終身刑で最低で25年、過失致死傷罪だと最高30年で最低10年。私はせめてトレイヴォンが生きた17年は、ジマーマンに刑で罪滅ぼしをしてもらいと思っていた。

しかし、6人のフロリダ在住の女性達が決めた判決は「無罪」。ジマーマンが主張した「正当防衛」が認められたのだ。

私は何度も書いているんだけど、もしジマーマンがあの時話しかけなければ、こんな事にはならなかった。自分から話しかけて、それで乱闘になって(良い大人なんだから話掛ければ喧嘩になるのは分かっていた筈)、ジマーマンが引き金をトレイヴォンの心臓に向かって引いたから、トレイヴォンは殺された。これで正当防衛になるんだったら、これから幾らでも正当防衛になる。死人に口無しである。本当の正当防衛なら、脚や腕を狙えばよかっただけ。警察官を気取ったジマーマンなら、尚更そんな事は分かっていた筈。ジマーマンから通報(緊急911ではない通報番号)を受けた警察の人も「何もするな」と忠告している。でも6人のフロリダ女性はそれを「正当防衛」と決めたのだった。

だったらあの時、トレイヴォンはどうするべきだったのか?気持ち悪い自分より年上の男に付き纏われ挙句に、白人が住む高級住宅街を歩いていただけで、怪しいとジマーマンにいきなり「こんな所で何やってんだ!」と声を掛けられた。ここでいきなり逃げるという選択肢があったかどうか?

とある人々は、トレイヴォンは学校での素行が悪いし、マリファナも吸っていたし、フード帽はギャングに見えるし、フェイスブックではギャング「風」のポーズをしていたから、こうなったのは仕方がないと言う。ちょっと待ってください!トレイヴォンはあの時何もしていない。確かにマリファナが体内に残っていたかもしれないが、それをジマーマンが罰する権利なんて無いのだ!!

マーロン・ウェイアンズも判決が出た後にツイッターに書いていたが、黒人の血を引く子供達に、この事件をどうやって伝えればいいのか?「残念ながらアメリカでは、貴方を守ってくれる法律は期待出来ない」と、そんな悲しい事を自分の子供達に言えるだろうか?親にとってどう子供達に自分の身の守り方を教えてあげるというのか?何も無い。夫とも話し合ってみたが、答えは見つからなかった。

今回の判決を受けて、全米の各地ではちょっとしたデモがあった。ちょっとした小さい火事や商店のガラスが割れる被害があったが、ほぼ平和的なデモであった。次の日の日曜日の黒人教会での説教はこの問題一色となっており、教会に救いを求める人が多かった。一番辛い思いをしている筈のトレイヴォン・マーティンの両親は判決が出る前に、「もし判決が我々が望むような判決じゃなかったとしても、私達はその判決を平和的に受け止めるので、両親じゃない皆様方はそれが可能な筈です」とコメントしている。確実に黒人の多くの人々は進化をしている。ただ、ホンの一握りの人々は進化していないのだ。

映画では両者は進化していた。この前見た「White House Down / ホワイトハウス・ダウン (2013)」という映画は、白人の若い青年が黒人の大統領を命がけで守るという、1955年にエミット・ティル少年が殺された頃には考えられなかったような内容の映画だ。一昨日見た「Pacific Rim / パシフィック・リム (2013)」だって、黒人がトップの部隊指揮官を演じ、日本人女性が巨大ロボットの操作官となって、白人の男性と共に、世界を守り抜くという映画をメキシコ人が撮っている。なんだか映画の世界では、人種摩擦はいい感じになっていた。

でも実生活は全く違うのだ。一部の人の偏見のせいで、1955年と全く変わらずで、進化なんてしていなかったのだった!

Further reading(全て英語記事)
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