SOUL * BLACK MOVIE

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて

「我々は戦う事を諦めない!」あるブラック・パンサー党員の叫び『Passin' It On』

トゥパック・シャクール自伝映画『All Eyez on Me / オール・アイズ・オン・ミー (2017)』の冒頭で使われたのがブラック・パンサー党員ドルーバ・ビン・ワハドのスピーチ。なぜかそれをマルコムXだと思っているバカな批評家もいる。トゥパックならマルコムの前にブラック・パンサー党員のスピーチ使うだろうに、本当にバカ!あの人たちは無知過ぎる。単純すぎる。何も分かっちゃいない。という訳で、ブラック・パンサー党のドキュメンタリーを。

ブラック・パンサー党と言っても、この映画はそのドルーバ・ビン・ワハドと、彼が属していたニューヨーク支部についてのドキュメンタリー。この作品では触れられていないが、トゥパックのママのアフェニ・シャクールもそこに属していて、ドルーバやこの映画でもインタビューを受けているジャマール・ジョセフの先輩であり彼らに教え込んだのがアフェニ。アフェニが逮捕される事になった「パンサー21」なども語られる。しかし、主役というかメインはドルーバ・ビン・ワハド。彼自身もインタビューを受けている。ドルーバはブロンクスで生まれ育ち、マルコムXと同じく刑務所内で転機を迎えて、ブラック・パンサー党に傾倒。ドルーバはパンサー党員となった後にも逮捕されているが、パンサー21とは無関係の事件なのだが関係なくもない。パンサー21を追う地方検事を狙い、検事の家を警備していたNY市警の2人に発砲した罪。2人は重症を負った。で、ドルーバが逮捕されたのが黒人向けナイトクラブで、そのナイトクラブでドルーバはマシンガンを持ち、客を全裸にして虐待していたらしい。なんでもそのクラブでは、警官たちが賄賂を貰う場所として有名で、クラックなどの麻薬売買が見過ごされていたという事で、麻薬なんかするな!という意味で虐待していたらしい。分かるような分からないような... 複雑。

何はともあれ、このドルーバ・ビン・ワハドという人が、とてもナチュラルなスピーチスピーカーというのは分かった。オバマ大統領もそうだったけれど、人に話を聞かせるのが上手い。恐らくアフリカで尊敬されていた語り部「グリオ」とはこういう人たちなのだと思う。言葉選びから話し方が上手い。生まれ持ったもの。

なんでもこれはジョン・J・ヴァラデスというラティーノ系監督の卒業プロジェクトだという。今もドキュメンタリーを撮り続けている。この作品には、あの『Slavery by Another Name / 日本未公開 (2012)』のサム・ポラードが制作総指揮で参加したり、『Symbiopsychotaxiplasm: Take One / 日本未公開 (1968)』の伝説的なドキュメンタリー監督ウィリアム・グリーブスの撮った映像がアーカイブで使われていたりする。この作品自体はPBSにて放送された。

あの時代の力を持って推し進めていく「ブラックパワー」的な革新派のリーダーって、ストークリー・カーマイケルとかエルドリッジ・クリーヴァーとかみんなアフリカやキューバとかに亡命したけれど、ドルーバも亡命じゃないけれどアフリカのガーナに長らく住んでいたみたいで、DVDにはボーナス特典でガーナでインタビューを受けている映像があった。今は、アメリカに戻っている。

で、最初に書いたマルコムXの演説だと思っているアホが、続いて「(マルコムXの演説を使用したという事は)トゥパックがブラック・パワーの英雄という事を述べており...」とか書いていて、本当に無知で嫌になる。マルコムXはブラック・パワーの象徴みたいに使われるけれど、実際にブラック・パワーが台頭した頃には暗殺されてこの世には居ない。なのでブラック・パワーについて公言する事はなかった。「ブラック・パワー」を連呼したストークリー・カーマイケルやブラック・パンサー党でマルコムの思想が受け入れられただけの事。直接的な関係性はまるでない。何なら「ブラック・パワー」という言葉自体は、作家リチャード・ライトが1954年に既に使っている。イメージとかステレオタイプだけで語らないで欲しい。という事で、いかにアメリカのメインストリームでも黒人映画がステレオタイプやイメージだけで語られているのか、よく分かる例でもある。

Passin' It On / 日本未公開 (1993)(4.25点:1577本目)

映画やアイス・キューブと共に見てみる1992年のLA暴動『LA 92』

ロドニー・キングへの暴行ビデオから始まり、その加害者である警察官たちの無罪判決によって始まった一連の出来事を、人々はLA暴動というけれど、黒人、とりわけLAの黒人は「暴動」という言葉を回避しているように思える。このドキュメンタリー映画のタイトルも「LA 92」。敢えて暴動という言葉を使用していない。『Undefeated / アンディフィーテッド 栄光の勝利 (2011)』にてアカデミーのドキュメンタリー賞を受賞したTJ・マーティンとダニエル・リンゼイのコンビによる最新ドキュメンタリー作品。サンダンス映画祭で上映された後、一般的にはナショナルジオグラフィックにて放送。

この映画は1965年に起きたワッツ暴動から歴史を遡る。当時のニュースキャスターが伝えるワッツ暴動。当時のLA市警署長ウィリアム・パーカーは、「動物園のサルのようだ」とその暴動を嘲笑した。そして時は経ち、湾岸戦争終結した3日後の1991年3月3日、ロサンジェルス近郊にて車のスピード違反で止められた黒人のロドニー・キングが警官4名から暴行を受けた。それを目撃しビデオに残したのが、ジョージ・ホリデイ。ホリデイが撮ったビデオはCNNなどを通じて全米を駆け巡った。暴行で膨れ上がった顔と目をやられて血で赤くなった眼球に、ティーザーで火傷した身体...などを見せられた黒人側は怒りを露わにした。しかし「ビデオという証拠があるのだから今度こそは正義は味方するだろう」とも思っていた。

しかし...次の年になる1992年4月29日に言い渡された4人の警官たちの評決は「無罪」だった。黒人たちはそれは仕組まれたものだと理解した。色々な理由をつけて事前に裁判所を白人住民が88%であるシミ・ヴァレーに移したのが大きかった。

元々、黒人側の鬱憤は随分前から明らかにされていた。N.W.Aが1988年に発売した「Straight Outta Compton」の「Fuck the Police」にその怒りは代表されている。N.W.Aメンバーアイス・キューブは続くソロデビューアルバム「AmeriKKKa's Most Wanted」の中でも「Endangered Species」で警告している。なにしろ、アイス・キューブは『Boyz N The Hood / ボーイズ’ン・ザ・フッド (1991)』に出演し、LAに蔓延る暴力的な鬱憤を体現してくれていたじゃないか!

そしてこの時、なぜに韓国系vs黒人になったか?というのもちゃんと記録映像だけで説明している。もちろんその背景にはロドニー・キング暴行時間からたった13日後に起きたラターシャ・ハーリンズ殺人事件がある。アイス・キューブは、この事も暴動になる前の1991年10月にセカンドソロアルバム「Death Certificate」の中の「Black Korea」で両者の確執も語っていた。そして映画『Menace II Society / メナース II ソサエティー/ポケットいっぱいの涙 (1993)』では、ラターシャ事件の結末を真逆に描いてみせた。

このドキュメンタリー映画は、音楽や当時を知る人のインタビューなどのドキュメンタリー映画にありがちな味付けを一切回避している。記録映画という名に相応しい、ただ残っている記録ビデオを編集しただけなのだが、それが余計に当時の臨場感を感じる事なる。いま、そこで起きているかのような感覚。

そうすると流石にレジナルド・デニー(路上でトラックから引きずり出され暴行を受けた男性)への暴行や、店舗での略奪の映像を見ると、LA暴動(LA Riot)ならぬ「LA蜂起(LA Uprising)」だとは言い難い。だがしかし、LA混乱・不安(LA Unrest)だったと痛感する。

しかし黒人の人々はあの時、絶望的だったのは間違いないが、それでも何か変えようと居ても立ってもいられない状況であった事も手に取って分かる。思い思いのプラカードを手にし、中にはマルコムXのTシャツを着ていた人も居た。映画『Malcolm X / マルコムX (1992)』の公開はもうこの暴動が治まった1992年の11月だが、映画は制作前から随分と話題になっていて、先に原作となっているアレックス・ヘイリーの「マルコムX自伝」が1988年頃から売り上げが300倍に跳ね上がっていたのだ。その影響も随所に映像からは伺えた。

そして映画は冒頭の1965年のワッツでのニュースに戻る。一語一句の全てが1992年のLAに当てはまった。フレデリック・ダグラスは「我々は現在と将来に役立つ為に、過去と関係しなければならない」と語った。過去から学ばない者はまた同じ過ちを犯すという事。今、アメリカで起きている無数の無実の黒人が警察の手によって殺されている事件も、あの1965年のワッツのニュースを伝えるニュースリポーターとまた同じな気がしてならない。最近のアイス・キューブでは映画では面白おかしくやっているが、2008年のアルバム「Raw Footage」では「Why Me?」という曲で銃の被害者となった人々の事をラップしている。噂では2017年にアイス・キューブの新譜が出る予定だ。今度こそ彼らの声を聞いて欲しい。しかしあの人がアメリカ大統領である限り、また過去から学ぶ事は無さそうだという絶望しか見つからないのだ。

LA 92 / LA 92 (2017)(5点満点:1548本目)

自国の歴史すら知らないアホで間抜けな人々に捧ぐ『John Lewis : Get in the Way』

今年の1月からアメリカ大統領になった男は、ジョン・ルイスツイッターでこう噛みついた「トークトークトーク。行動も結果もなし!」と。元々、第45代アメリカ大統領”と呼ばれている男”の事はアホで間抜けだと思っていたが、ここまでバカで無知な男だったとは腹が立ってしょうがない。「アメリカを再びグレートにする」予定の男は、そんな自国アメリカの歴史を知らない。どのようにして、また再びグレートにするつもりなのか...理解に苦しむ。

そんな自国の歴史すらしらないアホで間抜けでバカで無知な人々の為に、実にタイミング良く制作されPBSという高いケーブル料を払わずにしても、アメリカに住んでいてテレビがあれば誰でも観れるチャンネルで放送されたのが『John Lewis : Get in the Way / 日本未公開 (2015)』だ。アラバマ州の小さな町の農家に生まれ育ったジョン・ルイス。牧師になる事を夢見ていた。夢を叶えるべくテネシー州ナッシュビルにある神学校に入学した事が彼の人生を変える。マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の説教と彼が指導したモントゴメリー・バス・ボイコットに感銘を受けたルイス。その頃学生たちもキング牧師に続いて何か運動をしようと度々ナッシュビルにある大学生たちが集まっていたのだ。ジム・ローソンがリーダーシップを取り、ダイアン・ナッシュやジェームス・バベル等が居た。そこにルイスは参加するようになる。そこで彼らはシット・インという運動を始める。彼らは後の学生非暴力調整委員会(SNCC)の母体となった。それ以降、ルイスは公民権活動に積極的に参加。映画『Selma / グローリー/明日への行進 (2014)』にもなった「血の日曜日」では、ルイスが殴られている映像が今でも残っているし、ドキュメンタリー映画Freedom Riders / 日本未公開 (2010)』の題材である「フリーダム・ライダーズ」にも参加して、やはり殴られ血だらけになったルイスの写真は有名だ。そしてキング牧師の「私には夢がある」のスピーチでお馴染みの「ワシントン大行進」でもSNCC代表としてスピーチしている。その後ルイスは、アトランタ代表の下院議員となり、1987年から連続で今現在も在職中だ。政治家となったルイスは休む事なく、今も様々な問題と格闘中。銃規制法案を巡ってフィリバスターしたニュースなども記憶に新しい。現在76歳。公民権運動時にはあどけなさすら残っていたルイスも、正直に書くと今はもうおじいちゃんだ。それでも彼は自国での当然の権利を求めて戦い続けている。自国で起きる問題の数々は、問題を解決する「良いトラブルだ」と言い、キング牧師の意思を継ぎ平和で非暴力の解決法を見出すのがルイス。同性愛者の権利を、そして移民たちの権利を求め、今でも歩き続けるルイスの姿をこの作品は追っている。

自国の歴史すら知らないアホで間抜けでバカで無知な大統領と呼ばれる男のツイッターが如何に恥ずかしいかを、この作品は図らずも痛烈に批判しているのだ。トランプよ、ツイッターやる時間あるなら、とりあえず自国の歴史でも勉強しようか?

参考文献

WALKING WITH THE WIND

WALKING WITH THE WIND

John Lewis : Get in the Way / 日本未公開 (2015)(4.5点:1526本目)

映画の持つパワー『Birth of a Movement』

黒人歴史月間になると、アメリカの公共放送PBSは、黒人関連の映画やスペシャル番組に力を入れる。その1作がこの作品。60年代から権利の為に戦う俳優ダニー・グローバーがナレーション。この作品の監督は2人共白人だが、スパイク・リー軍のサム・ポラードとハーバード大学で教鞭を取る黒人歴史の権威ヘンリー・ルイス・ゲイツがプロデュースしている。

映画制作や映画撮影に於けるテクニックなどで、映画史に燦々と輝く『The Birth of a Nation / 國民の創生 (1915)』。ハリウッド初のブロックバスター映画としても有名だ。監督のD.W.グリフィスは、名監督として映画史に名前を残している。しかし、この映画の原作は「The Clansman(ザ・クランズマン)」。白人至上主義秘密結社クー・クラックス・クランのメンバー「クランズマン」を描いた作品なのだ。公開時は、原作と同じ『ザ・クランズマン』として公開されたが、ホワイトハウスにて初めてとなる映画上映の時に『The Birth of a Nation / 國民の創生』とタイトルを変更した。

そんな映画に待ったをかけた男が居た。ボストン在住でハーバード大学卒業のウィリアム・モンロー・トロッターだった。父は有名な軍人で、恵まれた環境で勉学に勤しんだ。ハーバード大の同窓があのW.E.B.デュボイスであり、トロッターとデュボイスは同じ女性に恋をした仲である(その女性はトロッターと後に結婚)。トロッターはデュボイスと共に「ナイアガラ・ムーブメント」を設立。それは後のNAACPとなった。ボストンにて黒人向け新聞「The Gurdian」を発行していた。

このドキュメンタリーは、そのトロッターの『國民の創生』の上映中止を求めた闘いが描かれている。

南北戦争で負けた南部連合軍に属していた男たちがテネシー州で1885年頃に立ち上げたのが、クー・クラックス・クラン(以降KKK)。黒人と白人の共和党支持者を叩きのめして白人至上主義を謳った(ここで注意されたいのが、この当時の共和党は今の共和党とは全く違うという事。奴隷解放リンカーン大統領も共和党)。しかし10年も経たないうちに衰退。1870年頃に連邦裁判でテロリストだと判決が出た事も大きい。

しかし、彼らは突如として復活する。それは1915年、『國民の創生』が上映された時だ。野蛮でどうしようもない黒人ガス(白人俳優による黒塗り演技)は、我々の無垢なフローラを襲おうとして、フローラは自らの命を絶った...そんな鬼畜なガスを懲らしめてくれたのが白い布を被ったヒーローであるクランズマン!というのが『國民の創生』なのである。1915年2月、『國民の創生』のプレミアが行われたロサンジェルスには3000人の人々が集まったという。集まった人々は、グリフィスの斬新で素晴らしい映画テクニックに酔いしれた。そして、多くの人が白い布を手にしたのだ。

トロッターは自身の新聞「The Gurdian」にて激しく映画を批判した。実はそれよりも先に「ザ・クランズマン」が舞台化された時に、ボストンでの上演の中止を求めていた。トロッターの運動は成功を収め、ボストンでの舞台上演中止となった。1915年にボストンで行われた映画のプレミアも多くのプロテスト達が駆け付け、大混乱となった。劇場が黒人へのチケットを売らなかった事もあり、プレミアやそれ以降の上映を禁止されるまでには至らなかった。しかし、その後のリバイバル上映を禁止にさせる事には成功させた。

未だに日本では『國民の創生』について「白人の視点から描かれた」と書かれているが、正しくは「白人の差別者からの視点で描かれた」であり、肝心な部分が抜けている。白人=差別主義者ではないので。「白人の視点から描かれた」は、『國民の創生』で描かれた事を賛同しない白人に対して非常に失礼な表現である。

このドキュメンタリーでとある人が言っていた。「この映画(『國民の創生』)は、決して素晴らしい映画じゃない。ただ単に豪華なんだ」と。そして別の人が言っていた。「人種ポルノグラフィー」だと。

『國民の創生』制作&上映から100年もの時を経た今... 映画が持つパワーは失われてはいないが、映画自体の使い方が進歩し、少しは映画も人も成長したと思わないだろうか?

Birth of a Movement / 日本未公開 (2017) (TV)(1525本目:4点)

『Sweet Micky for President』とハイチとフージーズ

ターコイズ色の海に白浜という美しいカリブ海に浮かんでいる島をドミニカと共有しているハイチ。2010年の大地震も記憶している人は多いだろう。そんな大地震の直後に行われた大統領選と、ハイチが生んだ世界的スーパースターのフージーズのメンバーであるプラズとワイクリフを追うドキュメンタリー。脚本は、そのプラズ。個性的な低予算のインディペンデンス映画が集まるスラムダンス映画祭でベスト・ドキュメンタリー賞を受賞。

2010年、新年早々の1月12日の夕方、マグニチュード7.0という大地震がハイチを揺らした。その後の復旧は中々進まない。しかも大統領選が控えていた。生まれも育ちもアメリカだが、両親がハイチ出身のプラズは、ハイチでの復旧作業が進まない事に心を痛めていた。「リーダーシップを取れる人がいない」... そこでプラズに浮かんだのが、「ハイチのマイケル・ジャクソン(って劇中紹介されていたが私は認めないぞ!)」と言われ絶大なる人気を誇るスイート・ミッキーこと、ミシェル・マテリ。パンツ一丁で腰を振るなど、やや下品な芸風で知られ、度々論争を呼ぶ歌手だった。しかし彼には人々を惹きつける魅力があった。プラズは、マテリと共闘していく事を決める。

しかし、そこで予測していなかった事が起こる。プラズの仲間ワイクリフが大統領選に出馬するという。それによってプラズとワイクリフは決別してしまうのだった。しかし結局は、ワイクリフはハイチに住んでいない期間がある為、候補者とは認められなくて、出馬断念。ワイクリフもマテリ支持に回った。それでも少しギクシャクはしている様子だった。

この映画ではハイチでの大統領選の仕組みが分かるようになる。アメリカは2大政党(厳密は他の政党もあるが、別政党からの大統領誕生は1853年以降ない)で、まず政党内で代表を決めて、その両政党の代表が大統領選で争う事になる。ハイチは、政党関係なく取りあえず第一回戦みたいな感じでみんながそれぞれ競い合い、勝ち残った2名が大統領の座を掛けて一騎打ちとなる。このやり方は合理的で分かりやすく、そして平等だと思った。それ故に人々が自分の応援する支持者に熱くなっていくのも分かった。

この時の選挙は、マテリが候補者という事もあり、人気合戦になったような印象を受けた。相手は元大統領夫人。政治経験を盾に決戦まで上り詰めた。一方、マテリは改革や新しさを売りに、そして得意の音楽に乗せた「Tet Kale(意味は心と魂らしいが、多分ノリだけ)」をスローガンにパワーを付けていく。

選挙で混乱や暴動など全く起きないのが日本。秩序があると日本の人々は言うけれど、投票した人の数とか割合を見ていると、ただ単に選挙や政治に全く情熱も興味がないだけに思える。ハイチという国を良くしたいという国民の熱意は凄く感じた。フージーズのハイチでの国民的人気、それを壊してまで自分たちの政治理念を貫こうとする姿勢も感じる。かつての英雄トゥーサン・ルーヴェルチュールの蜂起により、生まれた黒人国家ハイチ。ルーヴェルチュールが灯した火はまだまだ根強くハイチの進む道を照らしている。

Sweet Micky for President / 日本未公開 (2015)(1523本目:4.25点)

Dead Homies in AmeriKKKa

They killed a homie that I went to school with, I tell ya life ain't shit to fool with, I still hear the screams of his mother, While my nigga laid dead in the gutter...
(一緒に学校に行っていたダチを奴等は殺しやがった、お前の人生なんてあいつ等にはどうって事ない事なんだ、まだ奴の母さんの叫び声が聞こえている、あいつが側溝で死に横たわっている中...)

アイス・キューブの1990年に発売された『Kill at Will』アルバムの1曲「Dead Homiez」の一節。1990年に書かれた詩がそのままの状況になってしまったのが、8月9日にミズーリー州セントルイス郊外ファーガソンで起きた18歳のマイケル・ブラウン(マイク・ブラウン)の死亡事件である。

マイク・ブラウンは、友人と歩いている時に車道に居たので、目撃された警察官ダレン・ウィルソンに呼び止められた。警察側によると、マイク・ブラウンがウィルソンの拳銃に手を伸ばしたので、取っ組み合いになり、逃げたブラウンを射殺したと発表。しかし目撃者や一緒にいた友人の証言によると、ブラウンは逃げようとしたが、警察官が2発ブラウンの背後を目がけて発砲したので、その後ブラウンは振り向き、手を挙げて降伏したが、ウィルソンはその後も発砲を続け射殺されたという事である。

丸腰の18歳が射殺された事で、ファーガソンの60%を占める黒人住人が反発。しかも警察はウィルソンを守るかのように、その警官の名前の発表を渋った。次の日の10日にマイク・ブラウンを追悼するキャンドル通夜にて住民が集結。事件が起こった付近で集まった人々が「No Justice, No Peace(正義なければ、平和なし)」とチャントを始めた。警察がライフルや暴動鎮圧用盾を持ち駆けつけた。それにより緊張感が高まり、元々地元の警察官に不満を抱えていた人々は、その警察の高圧的な状況に怒りを爆発。暴動へとなり、略奪も行われた。

11日、ツイッターなどのSNSファーガソンの状況が伝えられると、事態を重くみた当局がFBIがこの事件に介入する事が伝えられた。一方で、ファーガソンの住民はブラウンを殺した警官の名前を明らかにする事などを抗議し続けたが、警察からの正式な発表はなし。警察側と住民の衝突はエスカレート。

12日、正式に警察が警察官の名前を明かす事を拒否したと伝えられる。白昼堂々と、警察の武装車とSWATチームが登場。警察側と住民の衝突は激しさを増し、住民達は平和的な行進や抗議を続けていたが、警察側が催涙ガスや火炎びんにゴム弾まで使用し、市民を刺激し、市民側にはゴム弾が当たるなどの被害も出る。

13日、引き続き警察と住民の衝突は続く。この頃には各地から大手のジャーナリストがファーガソンに集まっていた。ワシントンポストウェズリー・ロウリー氏とハフィングトン・ポストのライアン・J・ライリー氏が、ファーガソンマクドナルドに入って携帯を充電していたら、警察官に不法侵入で一時拘束される。同じく、ファーガソンの市会議員で現場からずっとツイッターで状態をツイートしていたアントニオ・フレンチ氏も警察に拘束される。ジャーナリストの2人は割りとすぐに開放されたが、フレンチ氏は次の朝まで拘束。3人が警察に拘束された事で、大手のニュースCNNなどもライブで状況を伝えるようになる。

14日、休暇中のオバマ大統領が休暇先から声明を発表。それと同じくして、ファーガソンの警備が地元警察から州のハイウェイ・パトロールに変更されると発表。黒人のキャプテンであるロン・ジョンソン氏が、「催涙ガスなどを使うのではなく、住民と対話して理解を深める」と、住民と手を取り一緒に行進。この日はやっと衝突もなく暴動や略奪も起きなかった。

15日、事態の収束を見据えて、警察側がようやく正式に警察官の名前ダレン・ウィルソンの名前を発表(しかし写真は正式に発表せず)。それと当時に、マイク・ブラウンが射殺される前にコンビニで強盗をしたという証拠の防犯カメラの映像と、警察リポート19ページを発表。住民はマイク・ブラウンの性格を汚す行為で、これだけ発表に時間のかかった防犯カメラの映像も作り物ではないか?と、夜になって、そのコンビニや他の店が暴動に荒らされる。しかし一方で、住民が盾となり店を守るという光景も見られた。そして名前が発表されたダレル・ウィルソンの方は、警察から優秀で表彰される予定だった事や、友人のそんな事する人ではないという談話がマスコミで流される。

16日、ジェイ・ニクソン州知事が「緊急事態」を発令。町には深夜12時から朝5時までの外出禁止令が出される。ハイウェイ・パトロールのキャプテンのジョンソン氏は、催涙ガスなどは使わないと言っていたが、店が襲われそうになったので、催涙ガスを使用。7人が逮捕され、1人が銃弾を受けて重体。

17日、夜になり暴動は激しさを増す。翌朝にはジェイ・ニクソン州知事がナショナル・ガードを投入を発表。ナショナル・ガードはアメリカ軍の一部。州で災害などが遭った時に出動する。

Michael Brown’s Shooting and Its Immediate Aftermath in Ferguson - The New York Times

ここまで住民を怒らせているのは、ブラウンが手を挙げて降伏したという点、マイク・ブラウンの死体を無意味に長い間ずっと放置した事、そして市民ではなく警察官を守り名前をずっと伏せた事、射殺された事と関係ないのに(ウィルソンは強盗の件は知らなかった)強盗の証拠映像が流れた事...

彼らの怒りは理解出来るが、だからと言って暴力や略奪を正当化は出来ない。そこにリーダーの不在を感じずにはいられない。ジェシー・ジャクソンやアル・シャープトンという人たちがファーガソンを訪れたが、彼らはブーイングで迎えられた。今回の催涙ガスなどや警察との対立の映像は、60年代の公民権運動でも見た映像とそっくりではあるが、完全に違うのは公民権運動はキング牧師の指導により非暴力を貫いた。彼らは非暴力で耐えたからこそ、自分達の権利を正当化出来、訴える事が出来たのだ。なぜ黒人は自分達の素晴らしい歴史から学ばないのだろう?と思う。

正直、この手は毎日のように起きている。先日もニューヨークのスタテンアイランドの黒人男性エリック・ガーナーが、警察から後ろから首を腕で押さえつけられ、窒息して亡くなった。彼は喧嘩の仲裁をしたが、税金逃れの違法なタバコを売っていた容疑で警察から質問を受けていた。「警察からのイジメはウンザリだよ」と言っていただけで、警察を威圧するような行為も言動も無かった。近くに居た知り合いが携帯でその様子を録画していて、ネットで広がった。しかしその様子を撮っていた人も、別の容疑に掛けられて警察に捕まっている。

ロサンジェルスでも25歳のイーゼル・フォードという男性がロサンジェルス市警から射殺された。彼もまた警察官と揉めていて、フォードが警察官の拳銃に手を伸ばそうとしたので撃たれたと警察側のリポートにあるが、目撃者によるとフォードと警察官が揉めていた様子もなかったという。フォードは精神的な病気を抱えていた。こちらはファーガソンの事が起きて、すぐ後に起きた事である。ロサンジェルスでも抗議行進が行われている。
LAPD shooting of mentally ill man stirs criticism, questions

日本でも公開された『Fruitvale Station / フルートベール駅で (2013)』は見た人なら忘れられないであろう。マイク・ブラウンにイーゼル・フォード、そしてエリック・ガーナーにもオスカー・グラントのような平凡な1日を送っていたのだ。エリック・ガーナーには6人の子供が居て、2人の孫もいた。彼らの未来は父の存在が無くなるのだ。

黒人側にも問題があるから仕方ないと言ってしまえば簡単な問題かもしれない。黒人だから... それは白人だったら起きなかった事。つまり白人の特権って奴だ。白人でも悪い奴は同じほど要るけれど、白人には起きない。でも黒人は悪いから起きるんだ。だからいつも殺されるのは黒人なんだ。決め付けられて殺されるんだ。

冒頭に書いたアイス・キューブは2008年のアルバム「Raw Footage」に収録している「Why Me?」でも、殺された黒人について語っている。

Why the fuck you wanna murder me? Your punk ass never heard of me, I never did nuttin to your family, Still you wanna kill a young nigga randomly, Mr. Gun Man, your plan is workin, Cause niggas is dyin, and mommas is hurtin
(なんで俺なんかを殺したんだ?お前みたいな弱虫は俺の事聞いた事ないだろ?俺はお前さんの家族になんもしちゃいない、けどまだ若い黒人の奴等を無作為にに殺したいってか?ガンマンさんよ、お前のプランは機能している、なぜから黒人たちは死んで、かあさんたちは傷ついてる)

Dedicated to all the niggas, That's dead and don't know why, Who wanna look at the nigga who shot 'em, And ask these questions, Why me homey, why me?
(黒人たちに捧げる、なんで死んだか分からない奴等にね、そして殺人者の顔を見て、こう聞きたい奴等にね。なんで俺なんだ?なんで?)

なんで?

Enough is Enough!!

アメリカの黒人に殆ど興味のない日本では、残念ながらあんまり報道されていないようだけど、ジョージ・ジマーマンという男に殺された17歳のトレイヴォン・マーティンの「殺人」事件の裁判で、なんとジマーマンが無実の判決が昨夜遅くに出た。

トレイヴォンとジマーマンの事はここのブログでも何度も書いたし、ツイッターでも散々書いてきた。

昨日は判決がいつ出るか分からないので、「今度こそは!」と思いながら、ニュースを一日見守った。しかし夫の心情は私とは違った。でも夫だって内心は「今度こそは」と思っていたのか、私が一日中CNNをつけていても、いつもは文句を言ったり、タイミングを伺って、いつの間にかチャンネルを変えている夫が、昨日はそのままずっとCNNを見ていた。夫は判決が出る前から、もう希望なんて無いねという感じで「どうせ無実だよ。分かってる」と嘆いていた。判決後にアイス・キューブも「判決は驚きもしなかった。サンフォードは元々ジマーマンを逮捕する気無かったんだから!」と嘆いていた。黒人の人々にとっては、もうこの手の脱落感や絶望感は日常茶飯事になって麻痺し、希望なんて持っていないのだ。残念ながら。

それはそうだ。奴隷としてアメリカに渡ってきて400年間、全く変わらないのだから。ざっと思い出すだけでも、1919年にオマハで起きた人種暴動の際にリンチされて殺されたウィル・ブラウン、1955年に白人の女性に口笛吹いただけでリンチの末に殺されたエミット・ティル少年(14歳)、1963年のNAACPの活動家メドガー・エバース、1964年の白人2人と黒人1人というCOREのメンバーへのリンチ殺人、1965年アラバマで起きたジミー・リー・ジャクソンが州警官隊に殺された事件、1970年には映画「Blood Done Sign My Name / 日本未公開 (2010)」にもなったヘンリー・”ディッキー”・マーロウ殺人事件、1991年LAで起きたロドニー・キング事件、1999年にニューヨークで起きた警察によるアマドゥ・ディアロへの射殺事件、そして2006年同じくNYで次の日に結婚を控えていたショーン・ベルへの警官による射殺事件、そして2013年トレイヴォン・マーティン殺人事件。黒人が被害者でなぜか無実になった裁判は、思い出せるだけでこれだけある。調べればもっとある(ここに最近のだけど一部のリストあり)(更に追加。こちらはもっと詳しい)。ちなみに1965年のジミー・リー・ジャクソンのリンチ殺人事件は、42年後の2007年に犯人が自首をしてたった6ヶ月の刑を言い渡されている。1991年のラターシャ・ハーリンズは韓国人の経営するお店で店主の韓国人女性に後ろから撃たれて殺された。陪審員はその韓国女性に16年の刑を言い渡すが、なぜか裁判官が刑を変えて5年の刑期とコミュニティサービス、そしてたった500ドルの罰金を言い渡した。2009年のオークランドのBARTで起きたオスカー・グラントへのBARTの警官による殺人事件は、過失致死で2年の刑期だが、実際には146日ですでに刑を終えている。このオスカー・グラントに関しては映画「Fruitvale Station / 日本未公開 (2013)」になっていて、サンダンス映画祭で大賞を受賞、カンヌ映画祭でも賞を取り、次期のオスカーへの期待も高い。こんだけあれば、さすがに希望なんてなくなる。私だってアメリカでハロウィーンの時に起きた服部君の殺人事件だけで、結構ビビッてるもの。

でも今回は「Manslaughter(過失致死傷罪)」位はあるんじゃないかと信じていた。Manslaughterは日本語でも殺人。でも、第一級殺人や第二級殺人とは違う。今回のケースでは、第二級殺人か、過失致死傷罪か、無実か、審理無効の4パターン。第二級殺人罪だと最高で終身刑で最低で25年、過失致死傷罪だと最高30年で最低10年。私はせめてトレイヴォンが生きた17年は、ジマーマンに刑で罪滅ぼしをしてもらいと思っていた。

しかし、6人のフロリダ在住の女性達が決めた判決は「無罪」。ジマーマンが主張した「正当防衛」が認められたのだ。

私は何度も書いているんだけど、もしジマーマンがあの時話しかけなければ、こんな事にはならなかった。自分から話しかけて、それで乱闘になって(良い大人なんだから話掛ければ喧嘩になるのは分かっていた筈)、ジマーマンが引き金をトレイヴォンの心臓に向かって引いたから、トレイヴォンは殺された。これで正当防衛になるんだったら、これから幾らでも正当防衛になる。死人に口無しである。本当の正当防衛なら、脚や腕を狙えばよかっただけ。警察官を気取ったジマーマンなら、尚更そんな事は分かっていた筈。ジマーマンから通報(緊急911ではない通報番号)を受けた警察の人も「何もするな」と忠告している。でも6人のフロリダ女性はそれを「正当防衛」と決めたのだった。

だったらあの時、トレイヴォンはどうするべきだったのか?気持ち悪い自分より年上の男に付き纏われ挙句に、白人が住む高級住宅街を歩いていただけで、怪しいとジマーマンにいきなり「こんな所で何やってんだ!」と声を掛けられた。ここでいきなり逃げるという選択肢があったかどうか?

とある人々は、トレイヴォンは学校での素行が悪いし、マリファナも吸っていたし、フード帽はギャングに見えるし、フェイスブックではギャング「風」のポーズをしていたから、こうなったのは仕方がないと言う。ちょっと待ってください!トレイヴォンはあの時何もしていない。確かにマリファナが体内に残っていたかもしれないが、それをジマーマンが罰する権利なんて無いのだ!!

マーロン・ウェイアンズも判決が出た後にツイッターに書いていたが、黒人の血を引く子供達に、この事件をどうやって伝えればいいのか?「残念ながらアメリカでは、貴方を守ってくれる法律は期待出来ない」と、そんな悲しい事を自分の子供達に言えるだろうか?親にとってどう子供達に自分の身の守り方を教えてあげるというのか?何も無い。夫とも話し合ってみたが、答えは見つからなかった。

今回の判決を受けて、全米の各地ではちょっとしたデモがあった。ちょっとした小さい火事や商店のガラスが割れる被害があったが、ほぼ平和的なデモであった。次の日の日曜日の黒人教会での説教はこの問題一色となっており、教会に救いを求める人が多かった。一番辛い思いをしている筈のトレイヴォン・マーティンの両親は判決が出る前に、「もし判決が我々が望むような判決じゃなかったとしても、私達はその判決を平和的に受け止めるので、両親じゃない皆様方はそれが可能な筈です」とコメントしている。確実に黒人の多くの人々は進化をしている。ただ、ホンの一握りの人々は進化していないのだ。

映画では両者は進化していた。この前見た「White House Down / ホワイトハウス・ダウン (2013)」という映画は、白人の若い青年が黒人の大統領を命がけで守るという、1955年にエミット・ティル少年が殺された頃には考えられなかったような内容の映画だ。一昨日見た「Pacific Rim / パシフィック・リム (2013)」だって、黒人がトップの部隊指揮官を演じ、日本人女性が巨大ロボットの操作官となって、白人の男性と共に、世界を守り抜くという映画をメキシコ人が撮っている。なんだか映画の世界では、人種摩擦はいい感じになっていた。

でも実生活は全く違うのだ。一部の人の偏見のせいで、1955年と全く変わらずで、進化なんてしていなかったのだった!

Further reading(全て英語記事)
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