SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて


*10/15/2018に「ブラックムービー ガイド」本が発売になりました!よろしくお願いします。(10/15/18)

*『サンクスギビング』のパンフレットにコラムを寄稿。(12/29/23)
*『コカイン・ベア』のプレスシート&コメント&パンフレットに寄稿。 (09/27/23)
*ブルース&ソウル・レコーズ No.173 ティナ・ターナー特集にて、映画『TINA ティナ』について寄稿。 (08/25/23)
*『インスペクション ここで生きる』へのコメントを寄稿。(8/01/23)
*ミュージック・マガジン1月号にて、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のレビューを寄稿。(12/2/22)
*12月2日放送bayfm「MUSIC GARAGE:ROOM101」にて『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』についてトーク。(12/2/22)
*10月7日より上映『バビロン』にコメントを寄稿。(10/6/22)
*奈緒さん&風間俊介さん出演の舞台『恭しき娼婦』のパンフレットに寄稿。(6/4/22)
*TOCANA配給『KKKをぶっ飛ばせ!』のパンフレットに寄稿。(4/22/22)
*スターチャンネルEX『スモール・アックス』オフィシャルサイトに解説を寄稿。(3/29/22)
*映画秘宝 5月号にて、連載(終)&最後のサイテー映画2022を寄稿。(3/21/22)
*「This is Charles Burnett チャールズ・バーネット セレクション vol.1」にコメントを寄稿。(3/19/22)
*キネマ旬報 3月上旬号の『ドリームプラン』特集にて、ウィル・スミスについてのコラムを寄稿。(2/19/22)
*映画秘宝 4月号にて、連載&オールタイムベストテン映画を寄稿。(2/21/22)
*映画秘宝 3月号にて、ベスト10に参加。(1/21/22)
過去記事

メール

映画秘宝 7月号

映画秘宝 7月号

映画秘宝 2020年7月号 [雑誌]

映画秘宝 2020年7月号 [雑誌]

  • 発売日: 2020/05/21
  • メディア: 雑誌
5月21日(木)発売の映画秘宝7月号にてスタンダップコメディと『ウォッチメン』について寄稿しております。

スタンダップコメディは、比較的日本でも鑑賞できるものを中心におススメしております。「これ絶対的」なマストな作品からマニアックなものまで、かなり広い範囲で人&作品をご紹介できたのではないでしょうか? と、思っております。こんなご時世ですから、笑っていきましょう!

ウォッチメン』のコーナーでは、『ウォッチメン』で描かれた黒人の歴史や文化を掘り下げております。これは書いていて、「うぉーーーーーーーーーーーーぉおおおおぉぉぉおおおーーーー!」ってなりました。凄いです。このシリーズが描いていることは凄い深いです。その深さを堪能頂けるように分かりやすく書いたつもりです。シリーズには直接的には関係ないので、省いたこともあったりするので、それは追々ツイートしますねー。凄いですよ。私の歴史好きが疼きました。

と、いう訳で、映画秘宝に復活させて頂きました。復活で早速、私の2大好きな物を書かせて頂きまして、楽しくて楽しくて... タイプしている手が踊っていたと思います。

アマゾンのリンクを貼っておりますが、販売状況は映画秘宝ツイッターがいつも確かな情報を流しておりますので、そちらでご確認を!是非ともよろしくお願いいたします。

twitter.com

The Clark Sisters: First Ladies of Gospel / 日本未公開 (2020) 1751本目

ゴスペルの深さを堪能せよ!『The Clark Sisters: First Ladies of Gospel』

南部に来て一番驚いたこと。それは教会の多さ(いつも書いているが人口より多い気がする)と、私よりもゴリゴリにラップを聞いてそうな若者でも車内でゴスペルを聞いているということ。これはビックリした。意外性。そして、日本で親しまれているゴスペルとも、また違う。音楽ではあるのだけど、それ以上にキリストのためにという感情が凄く強い。全てはキリストのため。そんなゴスペルを歌う5姉妹「ザ・クラーク・シスターズ」というゴスペルのファーストレディたちを描いた作品。なんと、クイーン・ラティファメアリー・J・ブライジミッシー・エリオットというヒップホップ3大ファーストレディたちが制作総指揮を担当!ライフタイム・チャンネル制作で放送したテレビ映画。

1960年代のデトロイトの早朝。いきなり母(アンジャンヌ・エリス)に起こされ、歌うように強要された5人のまだ幼いザ・クラーク・シスターズ。5人も70年代には大人になって、父が主教を務め、母がクワイアを指導する教会で歌っていた。オルガンが弾けるトゥインキー(クリスティーナ・ベル)は、母に付いて指導のために全米を回るために学校を中退していた。長女のジャッキー(アンジェラ・バーシェット)は看護師をしながら歌い、デニース(レイヴン・グッドウィン)は夜遊びに夢中で、ドリンダ(シーリー・フレイジャー)はスレンダーで男性にモテており、末っ子のカレン(キーラ・シアード)は一番歌が上手いが恥ずかしがり屋でソロが出来ずにいた。昔から有名だった母の指導もあり才能を開花させていく5人だったが、父がレコーディングを嫌がっていた...

ライフタイム・チャンネルはとてもチープだ。テレビ映画でも、HBOとかショータイムとかESPNならお金をつぎ込むので良い作品が多い。でもライフタイムは違う。毎回チープだ。大抵は役者も「誰?」と知らない人ばかり。しかもチープなラブロマンス映画を作っている印象しかない。私を心底怒らせたアリーヤの自伝映画『Aaliyah: The Princess of R&B / 日本未公開 (2014)』もライフタイム制作&放送。そしてクイーン・ラティファの制作会社フレイヴァー・ユニットが制作。正直に書くと、ここ制作の作品も『Bessie / BESSIE/ブルースの女王 (2014)』以外はあんまり好きじゃない。だからいくらラティファやメアリー・Jやミッシーが関わっていたとしても...と期待は全ーくしておりませんでしたよ。でも見たのは、アンジャンヌ・エリスが出ていたから。私が本当に好きな女優の一人。過小評価され過ぎているといつも思う。そしてこのアンジャンヌ・エリスがやっぱり凄く最高でした。厳しいけれど、根本的には娘たちを愛し、そしてゴスペルというものに身を捧げている姿が素敵でした。エリス特有のカッコ良さと強さと貫禄が最大限にマティ・モス・クラークという役に出ていた。完璧な人に見えるけど、やっぱり弱いところもあったりで、そういう所を見せるのがエリスは抜群に上手い。完璧な人に見えるからこそ、そういう部分を見せられるとこっちも弱い。今回は強すぎで笑ってしまうことがあるのも良い。いつかこのエリスの凄さが認められて欲しい。そして、5人の姉妹も良かった。ドリンダ以外は姉妹ゆえに(ドリンダも姉妹ですが)みんな似たようなルックス&体系なので、4人ともにジル・スコットに見えて、見分けが難しかった。よくも似た人たちを集めてきたなと感心したくらい。でも慣れてくると、似ているのはトゥインキーとデニースくらいだと分かってきて、そこから個々の個性も描かれるので面白くなる。作り的には、成功からの転落を描いていて、オーソドックスな音楽自伝映画ではありますが、女優たちの才能によって面白くて飽きない展開になっている。しかも歌パートは女優たちが歌ったとのことで、その歌がまあ圧巻!本当によくこの5人を探してきたものだと思いました。でもまあそのせいで、一番上手い筈のママが一番アレでしたけど。歌はアレだけど、演技は上手いですから!

制作総指揮を担当したクイーン・ラティファメアリー・J・ブライジミッシー・エリオットというヒップホップの3大ファーストレディたちも、このザ・クラーク・シスターズというゴスペルのファーストレディたちに憧れ、そして影響されたに違いない。ゴスペルの奥深さと、その凄さを知る。

www.blackmovie-jp.com

寄稿のお知らせ

寄稿のお知らせ

ありがたいことに色々と寄稿させてもらっております。

friday.kodansha.co.jp

まずは、初めての経験をさせて頂いたFridayデジタル。アメリカ地方都市で感じる新型コロナウイルスの影響について書いております。私にとって初のルポ書き。ドキドキでした。どう書いたら良いんだろう?と、結構悩みながら書きました。今回、完走出来たのは、全て編集者の方のお陰でございます!この前のCinraでの『Just Mercy / 黒い司法 0%からの奇跡 (2019)』の時みたいに、映画に付随したルポ的なことは書いていましたが、映画全く関係なしのルポは初めてで本当に緊張しました。自分の緊張感解くためにも、映画タイトル1作だけ書いてます(笑)。
リアル過ぎで、何も起きていない感じではありますが、それこそがリアルじゃないか?と... 真剣に、ここでは自衛しないと怖いですから。よろしくお願いいたします。

cinemore.jp

cinemore.jp

あとは、定期に書かせて頂いているCinemoreにて、『Purple Rain / プリンス/パープル・レイン (1984)』と『The Pursuit of Happyness / 幸せのちから (2006)』について書いております。『パープル・レイン』は今回再見して、本当に号泣しました。まさか、自分がプリンスについて書ける日が来るなんて... 


以上、よろしくお願いいたします。

Death Force / 日本未公開 (1978) 1750本目

We go 0 to 100, real quick『Death Force』

もうこういう時(コロナとかいうウィルス)は、絶好調なブラックスプロイテーションでも観て、ぱぁああああああっと現実逃避でもしていくっきゃないよね。と、そんな私の気持ちを察するかのように、この映画はいきなり幸せそうな音楽から始まります。フィリピンの浜辺に突き刺さった何か... 一応DVDで観ましたが、画像が悪くて、正直浜辺に突き刺さったモノが何だか分からなかった。けど、それは最後に判明する。と、画像が悪い。私のDVDプレイヤーのせいではなくて、ブラックスプロイテーションあるあるのひとつ、元の映像がごっつい悪い!VHSプレイヤーにはあったトラッキング機能を駆使したい感じではある。ブラックスプロイテーションロジャー・コーマンの元で多く手掛けたシリオ・サンチャゴの作品。フィリピン出身で、フィリピンの大学を卒業して映画を撮っていたサンチャゴだが、コーマンがフィリピンに立ち寄った際に出会い、会社興したら映画撮ってねと言われて、その後に至る。とは言え、この映画はコーマン関係なさそう。そのサンチャゴが、『Bamboo Gods and Iron Men / アイアンマンと不思議な仏像 (1974)』のジェームズ・イーグルハート(主演・制作も参加!)と撮った作品です。

フィリピンの米空軍基地。ベトナムからアメリカに帰る前に何人かの兵士たちが滞在していた。ラッセル(ジェームズ・イーグルハート)とマッギー(レオン・アイザックケネディ)は黒人同士ということもあって仲が良かった。そんな2人に話しかけたのが、同じ兵士のモレーリ(カーメン・アルジェンツィアノ)。モレーリは、押収した金の延べ棒を盗む計画を話した。彼らはまんまと計画を成功させ、富を得たが、モレーリはマッギーに2人で山分けしようと話を持ち掛け、ラッセルを罠にはめ... ラッセルは気づくと2人の残留日本兵無人島と思われる場所に居た...

ツイッターで先に書いてしまいましたが、アメリカ人のベトナム帰還兵x残留日本兵が『キャスト・アウェイ』して『ベスト・キッド』して、ブラックスプロイテーションする映画です。簡単に説明すると。『キャスト・アウェイ』して『ベスト・キッド』な割りには、ちゃんとしたブラックスプロイテーションなのは、軸となるストーリーが復讐だからです。前半はフィリピンが舞台なのですが、後半はアメリカのロサンゼルスが舞台。70年代後半のロサンゼルスというか、リトル東京の雰囲気がバッチリを堪能出来ます。正直、余り期待はしていなかった。期待度0%な映画だったのですが、最後は割りと前のめりで観てしまった楽しさ100%な作品。チープさは勿論ある。でも奇抜というか、『セブン』的な残酷なシーンがあるけれど、サラっとしているというか、わざとらしい「これでもか」というグロさはなく、私は好きです。何ていうか、若者たちが集まって観たら「うぇーい!」となってしまう感じですかね。主人公ラッセルの怒りが狂気へとなったのがよく表現されていると思った。

と、私はすっかり気に入っているのですが、監督のシリオ・サンチャゴは生前受けたインタビューで「あの2人(後で説明)が出ていたのに、配給も全然上手くいかず、しかもタイトルも変えられ、結局は誰も見なかった作品」と、本作をボコボコにしています。でも、元々は脚本のコンセプトが気に入って参加しているので、嫌いという訳ではなく、配給会社への不満って感じですかね。この映画は、『Penitentiary / 日本未公開 (1979)』のレオン・アイザックケネディと、実の妻(当時)でハル・ベリーと同じミス・オハイオ出身のジェーン・ケネディが共演。この2人は一般にはそんなに知名度ないかもだけど、黒人には割りと知名度があった。そんな2人の共演なので、配給会社も2人の知名度を利用しようとしたけれど、それでも上手くいかなかった。そしてジェーン・ケネディはその後に、かの有名な「プレイボーイ」誌の表紙を黒人女優として初めて飾った人物。その後にもこの映画は「あのプレイボーイのジェーン・ケネディが出演」&タイトルを『Fighting Mad』と変えて公開されたが上手くいかず... 監督が「あの2人が出ていたのにね...」と嘆いていたのです。ケネディ夫妻もですが、この作品には主演のジェームズ・イーグルハートの息子が、息子役で出演している。私、てっきりジェームズ・イーグルハートはこの当時に多かった元NFL選手から転身した俳優とばかり思っていたのですが、元野球選手(マイナーリーグ)らしいです。で、その息子は今や舞台の最高峰トニー賞を受賞する超有名舞台俳優ジェームズ・モンロー・イーグルハートです!あの『ハミルトン』や『アラジン』や『メンフィス』という有名どころの舞台に出演している人気舞台俳優!そんな彼のデビュー作となる訳です。

日本兵が日本人じゃないしとか、ジェーン・ケネディが出し惜しみしているとか、ブラックスプロイテーションらしい「じゃない」的な部分はあるけれど、それがもはや味となっているし、何しろ監督が話した通りやろうと思っていたコンセプトは面白いし、普通にワクワクして飽きない時間を過ごさせて貰えた。やっぱり現実逃避にはブラックスプロイテーションだ!と思わせてくれた。

(3.25点:1750本目)
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Clemency / 日本未公開 (2019) 1749本目

心に残る静『Clemency』

タイトルの『Clemency』とは、恩赦の意味。大統領やら州知事やら権力のある人が、死刑執行を直前で止めたり、減刑したりすること。ただあまり期待は出来ない。私がこの映画を観て、すぐに思い出したのが、トロイ・デイヴィスのことだ。会った事もない知らない人だけど、今でもふと何気ない時に思い出したりする。詳細は「トロイ・デイヴィスのこと」のリンク先で読んで頂きたい。冤罪ながら死刑で殺された40歳の男性だ。彼も恩赦はされなかった。ジェイミー・フォックスが出演した『Redemption: The Stan Tookie Williams Story / クリップス (2004)』のスタン・トゥッキー・ウィリアムスも恩赦が受けられなかった。こちらもマスコミでかなり取り上げられたのに。そんな「恩赦」を、死刑執行する側である刑務所長を描いた作品。監督は、『alaskaLand / 日本未公開 (2012)』のチノニェ・チュク。ナイジェリア生まれのアラスカ育ち。ダナイ・グリラ制作・脚本、ルピタ・ニョンゴ主演という『Black Panther / ブラックパンサー (2018)』コンビのこれから始まるHBOシリーズ『Americanah』の監督もしている、今注目を集めている新人監督の作品です。

刑務所長であるバーナディン(アルフレ・ウッダード)は、控えている死刑執行の準備を整えていた。死刑が控えているヒメネス(アレックス・カスティーヨ)の妻を宥めたり、死刑台の最終確認をしていた。死刑は注射によるものだったが、中々針が上手く刺さらず、看護師が苦労した。途中、不手際があったが、刑務所長としてバーナディンは冷静に対処し、執り行われた。しかし、この事がバーナディンを蝕んでいく。そして、もう一人、この刑務所で死刑を待っていたのが、アンソニー・ウッズ(オルディス・ホッジ)だった。彼は最後まで無罪を主張し、目撃者と名乗っていた4人のうち3人が目撃情報を覆す発言をしており、証拠不十分なまま死刑を言い渡されていた。彼の弁護士マーティ(リチャード・シフ)は恩赦を求めて策を練るが...

かなり重たいドラマ。しかも、誰もが分かるような単純な作品ではない。所謂、とっつき難い映画だ。しかも淡々と描いているので、余計に見る者を選ぶだろう。キャスリン・ボスティックというブラックムービーでは知られた作曲家がこの映画の為に曲を書き下ろしているが、他の映画に比べたら、最近のヒット曲やアーティストを使っている訳じゃないので地味だ。そして派手なアクションもないし、派手な展開もない。唯一派手さがあるとしたら、ヒメネスのシーンがホラーなところだろう。それでも、私はこの映画のことを、トロイ・デイヴィスのことのように、ふと思い出すことがあるだろう。アルフレ・ウッダードの静かなる激怒を、オルディス・ホッジの真っすぐな感情を、チノニェ・チュクの淡々とした演出を思い出してしまうだろう。アルフレ・ウッダード演じた刑務所長は、死刑を執行しないとならない。その死刑に対してどう思い感じようと、やらなければならない。ロボットのように感情を殺す時だってある。それは他人には分からない/見えない。「殺さないで」という死刑囚家族の一つの感情。刑務所長だってそう思う時だってあるだろう。でもそれは全て感じないようにしている。被害者の家族からしたら「殺せ」という感情しかない。刑務所長もそう思ってしまう時だってある。真っすぐに一つある感情を双方からぶつけられる。そんなうちに刑務所長の感情は壊されてしまい、ロボットになった方が楽なのだ。っていうのを最後になってようやく気付かさせる。最後までは、正直、オルディス・ホッジ演じた死刑囚に肩入れして観てしまうのだ。しかし、それは刑務所長もそうだったと感じた。最後に全てが結びつく。

こんな静かな激怒は観たことない。派手で目立てば心に残るってもんじゃない。この静かさこそが心に残る。

(4.75点:1749本目)
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Uncorked / ワインは期待と現実の味 (2020) 1748本目

熟成と新鮮さが同居する『ワインは期待と現実の味』

配信後に私界隈では割りと話題になった作品。私界隈って何よ?って感じですよね。私がフォローしている有名人の間。この作品の監督・脚本・制作のプレンティス・ペニーが業界では友達が多いんでしょうね。彼は、TVシリーズInsecure / インセキュアー (2016-Present)』とか『ブルックリン・ナイン-ナイン』とかで脚本・制作しております。実際に面白かった!薦めたくなるのは分かる。主演は、『パティ・ケイク$』や『ゲット・ダウン』のママドゥ・アティエ。共演には、『American Crime Story / 日本未放送 (2016-Present)』のコートニー・ヴァンス。

ワイン店にてバイトしているイライジャ(ママドゥ・アティエ)。店にやってきた女性タンヤ(サーシャ・コンペレ)にラッパーを用いてワインを説明しナンパ成功。そんなイライジャの実家はBBQの激戦区メンフィスにて、歌手フランキー・ビバリー脳卒中を起こしたという逸話があるほどのBBQの老舗。父(コートニー・ヴァンス)は、自分のようにイライジャもBBQ店を継ぐものだと思っている。しかし、本当の所は、ワインを突き詰めソムリエになりたいと思っていた。しかし、家族は「ソムリエって何?美味しいの?」という感じで、理解は全くされない。ソムリエ学校に通い始めるイライジャだったが、学校内、そして家族内でも距離が出来てきて...

珍しいですよね、メンフィス舞台!そこがまず気に入った。現代の普通ーーーの物語がメンフィスで起きている。って当たり前なのだけど、中々描かれることがない。そして、メンフィスだから、メンフィス出身のYo Gottiの曲が多め。でもそれだけじゃなくて、古くからのメンフィスも感じられる音楽が多い。それを用いて世代を描いているのも凄く良かった。そして、メンフィスといえば、ワインじゃなくて、当然BBQ!全米でも1位か2位を争うほどの知名度。メンフィスは、ドライBBQなんですよね。ドライBBQとは、スパイスだけで味付けるタイプ。BBQソースは焼く時には使わない。食べる時につける後付けパターン。メンフィスのBBQは本当ーーーーーーーーーーに美味しいので、是非行く機会があれば食べて欲しい。有名店とか沢山ありますが、どこも美味しい筈。種類があってどれを選んでいいのやら困った場合は、大抵「サンプラー(Sampler)」っていうのがあって、通常のリブにプルドポークやらブリスケットやソーセージが食べられると思いますって、映画の話に戻しましょう...

セリフがとにかく楽しい!もう本当に黒人の人たちの生の会話という感じ。「ソムリエ」って聞いた時の家族の反応は、我が家でもそのまま当てはまるほどに想像が容易い。NBAの地元チームであるメンフィス・グリズリーズについての会話も笑ってしまう。まだマイク・コンリーが居たころの会話。最近のワカンダは、ああいう使われ方するよね。

物語は父と息子の話。ありきたりかもしれないけれど、最後が凄くスマートで良いですよね。そこはありきたりじゃない。父と息子で息子に合わせて一緒にワインを飲むけれど、昔からのドミノ(昔から黒人はドミノをやると言わている)を2人でやるのも良い演出でした。熟成された古き良さと新しい新鮮な良さが、心地よく同居する作品。

(4.5点:1748本目)
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The Banker / ザ・バンカー (2019) 1747本目

只者ではない人たちが銀行を作ったサクセスストーリー『ザ・バンカー』

ブラックムービーには伝記モノが多い。そしてサクセスストーリーが非常に多い。随分前に、「黒人映画はサクセスストーリーの伝記映画ばかり」と、少し意地悪な書き方をした文に出会ったことがある。その人は「なぜ黒人映画にはサクセストーリーが多いのか?」と、根本的なことを考えたりしなかったのだろう? と、逆に私は思ったりした。差別うんぬん...という多くの人たちが煙たがる「常套句」をこの際置いておいても、絶対的に黒人は厳しい状況に置かれていることが多い。もちろん、最初から恵まれている黒人もいる。でも誰が見たって確実に厳しい状況なのは、いつも黒人やマイノリティの人々だ。その人たちが見て楽しい&勇気づけられるのは、いつだってサクセスストーリーである。あの厳しい状況でも屈せずに運命やら状況を変えていった主人公を見れば、「自分だって」と思ってしまう。とは言え、「いつも辛い状況で我慢して苦労しなくちゃいけない姿を見るのは嫌!」という人も居る。人それぞれなので仕方ない。この作品は、ゼロではないけれど、割りとそういう苦労は描かれていない。どちらかというと、「痛快に」成功を収めていくタイプの物語。主演のバーナード・ギャレッドにはアンソニー・マッキー、共演にはサミュエル・L・ジャクソン。アップルが最近始めたApple TV+のオリジナル作品。

1939年、テキサス州の小さな街の経済が集まる建物の近くで靴磨きをしていたバーナード少年。大人たちの会話を盗み聞きして、富を得るためにメモを一生懸命取っていた。1954年、バーナード・ギャレッド(アンソニー・マッキー)は、妻(ニア・ロング)のおじに仕事を紹介すると言われるが、不動産を始めると断る。黒人が不動産業なんてとビックリされるが、本気だった。とあるアパートを買おうとするが、資金が足りず、妻が働くクラブのオーナーであるジョー・モリス(サミュエル・L・ジャクソン)に話を持っていくが嫌われる。銀行でも門前払い。アパートの持ち主のバーカーは、バーナードの話を聞いて取引をする。順調に事が進んでいたが、バーナードに不幸があり、また振り戻しに戻る。バーナードは、ジョーに再び会いに行き、びっくりする提案をする。白人の知り合い(ニコラス・ホルト)を代理人にして、白人が所有するLAの大きなビルを2人が買収しようというものだった...

黒人であることを隠すというか、白人を代理人にしてしまうという大胆な方法で、成功していってしまうのです。もう「痛快」という言葉がぴったり。裏で手を引き富を手にするのは黒人であるバーナードとジョーだけど、表立っているのは白人の男性。見事なトリックですね。古い黒人民話のような面白さがある。「出し抜いている」感が痛快なのです。見た目だけを気にしていると、そうなるっていうことです。

Apple TV+の初陣を飾る作品として、この映画はオスカーを狙う予定だった。しかし、この映画の主人公であるバーナード・ギャレッドの息子がプロデュースに参加。しかし、彼が虐待していたと異母姉妹の告発により、全米公開が流れ、なんとか配信だけはされた作品である。オスカーを狙うだけあって、俳優たちの演技が素晴らしい。サミュエル・L・ジャクソンはいつもながら豪快であるが、主演を食わない程度に抑えていて、とても好感が持てる。何より、ちょっとやらしい(お金・女・欲といういろんな意味で)クラブのオーナー役だという説得力が凄い。ニコラス・ホルトのどこか頼りなさげで隙があるけど憎めない青年役も印象的。主役のアンソニー・マッキーも主演としての風格がある。真面目で努力家だけど、どこかずる賢い所が見え隠れする。そしてこの映画で使われているのは、たった2曲(多分)。レイ・チャールズスティービー・ワンダーの曲だけだ。その2曲が本作にピッタリで印象的である。

硬派で普通の伝記映画の顔して、実は小気味の良い胸がスッとする痛快サクセスストーリー。この映画自体が見事なトリックスター。只者ではない!

(4点:1747本目)
The Banker / ザ・バンカー (2019)