SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて


*10/15/2018に「ブラックムービー ガイド」本が発売になりました!よろしくお願いします。(10/15/18)

*『サンクスギビング』のパンフレットにコラムを寄稿。(12/29/23)
*『コカイン・ベア』のプレスシート&コメント&パンフレットに寄稿。 (09/27/23)
*ブルース&ソウル・レコーズ No.173 ティナ・ターナー特集にて、映画『TINA ティナ』について寄稿。 (08/25/23)
*『インスペクション ここで生きる』へのコメントを寄稿。(8/01/23)
*ミュージック・マガジン1月号にて、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のレビューを寄稿。(12/2/22)
*12月2日放送bayfm「MUSIC GARAGE:ROOM101」にて『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』についてトーク。(12/2/22)
*10月7日より上映『バビロン』にコメントを寄稿。(10/6/22)
*奈緒さん&風間俊介さん出演の舞台『恭しき娼婦』のパンフレットに寄稿。(6/4/22)
*TOCANA配給『KKKをぶっ飛ばせ!』のパンフレットに寄稿。(4/22/22)
*スターチャンネルEX『スモール・アックス』オフィシャルサイトに解説を寄稿。(3/29/22)
*映画秘宝 5月号にて、連載(終)&最後のサイテー映画2022を寄稿。(3/21/22)
*「This is Charles Burnett チャールズ・バーネット セレクション vol.1」にコメントを寄稿。(3/19/22)
*キネマ旬報 3月上旬号の『ドリームプラン』特集にて、ウィル・スミスについてのコラムを寄稿。(2/19/22)
*映画秘宝 4月号にて、連載&オールタイムベストテン映画を寄稿。(2/21/22)
*映画秘宝 3月号にて、ベスト10に参加。(1/21/22)
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Undercover Brother 2 / 日本未公開 (2019) 1727本目

Not Solid『Undercover Brother 2』

Undercover Brother / アンダーカバー・ブラザー (2002)』、好きだった。ジェームズ・ブラウンブーツィー・コリンズやビリー・ディ・ウィリアムスという本当にカッコいい人たちを引っ張りだして、パロディを本格的に仕上げたことも上手さの一つだった。なんといっても、後に『12 Years a Slave / それでも夜は明ける (2013)』にてアカデミー脚色賞を受賞したジョン・リドリーが、エッジのきいたコメディの世界観を創り出している。その続編。前作ではコメディアンのエディ・グリフィンが主役のアンダーカバー・ブラザーを演じていたが、今回はアクションスターのマイケル・ジェイ・ホワイト。監督もマルコム・D・リーから、レスリー・スモールに変更となっている。ちなみに前作から引き続き出演している人は居ない。

2003年、前作で描かれた任務を終えて、アンダーカバー・ブラザー(マイケル・ジェイ・ホワイト)は、フッドに戻ってきた。そこで、アンダーカバー・ブラザーは弟のライオネル(ヴィンス・スワン)が、犬のトリマーになっていたことを知る。ライオネルは、アンダーカバー・ブラザーのように「ブ・ラ・ザ・-・フ・ッ・ド」でシークレットエージェントになることを夢見て、トレーニングするが上手くいかず兄に一蹴される。アンダーカバー・ブラザーが任務で乗り込んだところで包囲され、アンダーカバー・ブラザーは絶体絶命の危機に陥るが、ライオネルが踏み込んできて... それから16年が経ち2019年に...

ってね、意外とちゃんと『アンダーカバー・ブラザー』なんですよ。プロットにはまだ出てきていませんが、ザ・マンとその息子も登場します。まあでも、DVDのジャケとかから想像するにチープな感じするでしょ?そのチープさは拭いされていない。私ですら、この映画に出た人で知っているのは、マイケル・ジェイ・ホワイトとアフィオン・クロケットとゲイリー・オーウェンスくらいですもの。あ、でも監督と脚本家の1人は知っております。監督のレスリー・スモールは、スタンダップコメディライブの監督で有名。スタンダップコメディライブだったら、レスリー・スモールかスタン・レイサンですね。『アンダーカバー・ブラザー』絡みで書けば、エディ・グリフィンの『Eddie Griffin : Freedom of Speech / 日本未公開 (2008)』もレスリー・スモール。でもこういう長編作品の監督のイメージはない。そして脚本家の1人、イアン・エドワーズはスタンダップコメディアン。何度か見たことある。セリフとかは、今回もアンダーカバー・ブラザーぽい。フッドで人気だったクラブが、コーヒーショップになってしまっているのは、何となく前作の設定を引きずっていて面白かった。ライオネルも、今風になっていて面白い。でも、ピリっとするような風刺とか時事とか無かった。そしてぇーーーーーーーーー、マイケル・ジェイ・ホワイトが主役ならば、『Black Dynamite / 日本未公開 (2009)』の続編が観たかった。こちらはアクションも少な目だし、ネタバレになるのでプロットには書かなかったけれど、マイケル・ジェイ・ホワイトにその設定はあり得ない!っていうくらい、勿体ない使い方をしている。マイケル・ジェイ・ホワイトの個性殺してしまった。というか、やっぱりマイケル・ジェイ・ホワイト知名度あるからギャラ高かったんだろうね。ライオネル役で話を動かしたいという魂胆が見えてしまった。前作の車のシーンのようなのが無いんだよね。あの「Give Up The Funk」を聴きながらキャデラックを運転していて、飛び出してきた車を避けようとドリフト繰り返し、片手で持っている着色料たっぷりのオレンジソーダをこぼさないあのシーン。で、決め台詞に「Ain't no thing」ですよ。ああいう最高のシーンがこの映画には無い。

主役も監督も制作者も全て変えた続編。だったら普通にマイケル・ジェイ・ホワイトのアクションが観たかった!と、思うのは私だけじゃないと思う。ない訳じゃないんだけど、物足りない。マイケル・ジェイ・ホワイト映画としても、アンダーカバー・ブラザー映画としても...

(3点:1727本目)
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Harriet / 日本未公開 (2019) 1726本目

水の中を歩いて渡るモーゼ、ハリエット・タブマン物語『Harriet』

ハリエット・タブマン、いずれはアメリカの20ドル紙幣になるかもしれない歴史的な人物。その女性は、奴隷状態の人々を率いて約束の地まで連れていったモーゼと同じ状況でだったので、「モーゼ」と人々から呼ばれるようになった。この映画を観ると改めて思う。ハリエット・タブマンこそ、アメリカ20ドル紙幣に相応しいと。監督は、『Eve's Bayou / プレイヤー/死の祈り (1997)』や『Talk to Me / 日本未公開 (2007)』のカシー・レモンズ。私の大好きな監督の1人で、過小評価されている監督の1人だと思っている。ちなみにレモンズは女優でもあり、スパイク・リーの『School Daze / スクール・デイズ (1988)』に出ていたり、『Fear of a Black Hat / 日本未公開 (1994)』では大きな役だったり、あとは『羊たちの沈黙』などにも出ているベテラン女優です。今回、主役のハリエット・タブマンを演じたのが『Widows / ロスト・マネー 偽りの報酬 (2018)』に出演していたイギリス出身のシンシア・エリヴォ。

朝靄の中、ハリエット・タブマン(シンシア・エリヴォ)は地べたに寝転がって回想していた。妹たちは、別の家に売られ、離ればなれになった日の事を... 奴隷ではなく自由人ジョン・タブマン(ザッカリー・モモー)と結婚したハリエットたちの元に生まれてくる子供は、自由人と約束して欲しいとマスターに願いを言うが、ハリエットとその母親が奴隷なので、奴隷になると言われる。そのことを言われたハリエットは1人で泣くが、マスターの息子ギデオン・ブローデス(ジョー・アルウィン)に涙を拭われそうになったのを拒み、そして頬を叩かれる。そして、マスターが亡くなり、借金の多いブローデス家は、ハリエットを売り出す予定だと噂が立つ。その噂を聞いたハリエットは、ジョンや家族に別れを告げ、北に向かって走った...

この映画を観る前に予習として、買いぱなしで読んでいなかったアン・ペトリー著の「Harriet Tubman: Conductor on the Underground Railroad」を読みました。これがドンピシャだった。大体、この本の通りに話が進む。そしてこの本がとても読みやすく、そして面白い!アン・ペトリーって児童文学も執筆するので、変に難しい言葉を使わず、とても伝わりやすい言葉で書いてくれる天才。私が好きなタイプの作家でした。もっと色々と伝記を書いてもらいたかった!という訳で、映画に話を戻すと、この映画もドンピシャ!冒頭から、カシー・レモンズの才気煥発。『プレイヤー/死の祈り』でも見せたように、南部独特の土の匂いを感じさせる絵面なんです。緑に囲まれた広い大地からは、清々しい空気が感じられる筈なのに、何か妖しい淀んだ雰囲気を身にまとっている南部の空気。あれを凄く感じるんですよね。そして、ハリエット役のシンシア・エリヴォもドンピシャ!ルックスから声から体格から動きから演技力から、もうハリエット・タブマンを演じる為に生まれてきたとしか思えないほどにピッタリ。この上ない配役。唯一、演出し過ぎたかな?というのが、ハリエットと夫のジョン・タブマンの仲。アン・ペトリーの本ではもっと切ない&辛い。でもその辛さが余計にハリエットが奴隷たちの解放の手伝いに突き進めることになるので、あの切なさと辛さは必要だったかと...

ハリエット・タブマンで大事な部分って、もちろん奴隷たちを北部やカナダに逃がす「地下鉄道」の活躍だと思うんだけれど、それともう一つ、軍人だったというのも大事。時代が時代なので、女性のハリエットが正式な軍人だった訳ではないけれど、彼女は軍を率いて道を導いたり、彼女のフットワークとネットワークを生かして軍スパイみたいなこともしていた。今だったら確実に上官として働いていただろうし、色んなメダルを貰っていたことでしょう。

そしてアン・ペトリーの本を読みながら私が調べたことは、南北戦争の年。南北戦争は、1861-1865年。南北戦争は、ハリエットが(誕生年が1822年だとして)39-43歳の頃に起きている。ハリエット自身が逃亡したのが27歳の時なので、南北戦争が始まる12年前。南北戦争が始まる前の混乱とかも伝わる映画。

南部の黒人教会で、人々が歌う生の「Wade in the Water(水の中を歩く)」を聞いて、御世辞にも上手いとは思えなかったけれど、何かこみ上げるものを感じたことがある。彼らのかすれた声に、彼らの長い歴史の哀傷を感じた。「自由になりたい」と、愛する者とも別れなくてはならなかった時代。それでもハリエット・タブマンは、道なき道、そして水の中さえ歩いて、自分の手と足で道を開いた。あの時私が聞いた「Wade in the Water」は、ハリエットの哀傷も含まれていたから、何かこみ上げてきたのかもしれない... と、ふと思った。自由とは?その意味をかみしめる。

(4.5点:1726本目)
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Farming / 日本未公開 (2018) 1725本目

俳優アドウェール・アキノエ=アグバエはなぜスキンヘッドになったのか?『Farming』

俳優アドウェール・アキノエ=アグバエの監督デビュー作!トロント映画祭でワールドプレミアしてから気になっておりました。なんでも、アキノエ=アグバエの自伝的な作品とのことで、それがなんと白人至上主義なスキンヘッドのリーダーになってしまうという物語らしい。そんな人生をアキノエ=アグバエが歩んでいたとも知らず、とても興味を持ってしまったのです。第一、なぜアキノエ=アグバエがスキンヘッドのリーダーになってしまったのか?その過程がとても知りたいと思った。正直、盲目の黒人老人がクー・クラックス・クラン(白人史上主義)のメンバーになってしまうという、デイヴ・シャペルのコントが頭をよぎる。

1960-1980年代の間、多くのナイジェリアの子供たちが親元を離れ、イギリスに住む労働階級の家庭に里親として育てられる「ファーミング(Farming)」というシステムがあった。エニも妹と共に、カーペンター家に預けられていた。8歳になったエニは、養母(ケイト・ベッキンセイル)に「私のお気に入りになりたいでしょ?」と言われ、店でネックレスを万引きしようとして捕まってしまう。事なきこと得たが、エニは家でも学校でも居場所がなかった。そんな時、両親(アドウェール・アキノエ=アグバエ&ジェネヴィーヴ・ナジ)が迎えに来て、ナイジェリアに戻った。しかし、言葉や慣習にも慣れず、トラブルを起こして、エニだけカーペンター家に戻った。高校生になったエニ(ダムソン・イドリス)は、相変わらず居場所がなく、近くでたむろっていたスキンヘッドたちにもイジメられて、その場を止めようとしてくれた唯一親身になってくれる先生(ググ・ンバータ=ロー)に対しても「黒人クソ野郎」と呼んでしまう...

まず、タイトルとなった「ファーミング」について知れたのが良かった。あまりイギリスの歴史に明るくないので、知らないことを知れるのは楽しい。イギリスには移民が多いことは知っていたけれど、子供たちだけが里親制度で出されていたことは知らなかった。アキノエ=アグバエの場合は、両親ともにイギリスで勉強に勤しんでいたのもあって、そのシステムが使われた。環境も国も全然違うけれど、オバマ前大統領を思い出した。オバマの両親も勉強が忙しくて、祖父母に育てられていたよね。オバマの場合は血の繋がった家族だから良かったけれど、アキノエ=アグバエは違った。養父母は凄い悪い人たちではないけれど、凄い良い人たちって訳でもなく、実母なら愛情ある育て方したんだろうけど、結局はお金目的みたいなところもあって、愛情には欠けていた。それが、アキノエ=アグバエのアイデンティティ崩壊に繋がってしまった。母国ナイジェリアでの疎外感も辛かったのもある。それによってグレてしまった。アキノエ=アグバエがスキンヘッドに入ってしまったのは、日本で言うところの暴走族に入ってしまったというのに似ている。居場所が欲しかった。そこは絶対に居場所じゃない筈なのに。イギリスの小さな街では、黒人だけの不良グループっていうのは存在していないのかもしれない。彼らスキンヘッドの喧嘩相手は、隣町のスキンヘッドだったり、航海で立ち寄ったんだか、それとも基地が近くになるのか海軍の黒人水兵たちだった。

そこまでしていた男が、どのようにして世界的な俳優にまで上り詰めたのか?この映画では、それが駆け足で描かれているが、相当の努力をした筈である。こんな風に脚本を書き、監督まで担当している。そして、その脚本、感動的な言葉や名文句があるわけじゃない。驚くほどに殆どが罵り言葉だ。それでも人生って変えられる。人からの名言だけが人生を変える訳じゃない。自分次第。なるほど、実際そうかもね、と、思った。

(4.5点:1725本目)
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Brian Banks / 日本未公開 (2019) 1724本目

知って欲しい、そして話を聞いて欲しい不屈の男『ブライアン・バンクス

ブライアン・バンクスのことは、ずいぶん前から知っていて、ニュースで聞くたびに気を揉んでいた。もう最近では日常化し過ぎている気がする、冤罪により刑務所暮らしをした人の物語だ。その手の話の映画化も非常に多い。最近では、エヴァ・デュヴァネイ監督の『When They See Us / ボクらを見る目 (2019)』が成功したばかり。以前にそのような映画をまとめているので、こちらでどうぞ。その多くの中でも、特にブライアン・バンクスのことは気になっていた。私が好きなアメリカンフットボールの有望な選手だったこともあると思う。それでも、この映画で初めて知った事実が沢山あった。主演は、『Straight Outta Compton / ストレイト・アウタ・コンプトン (2015)』ではMCレン役だったオルディス・ホッジ。監督は、『The Nutty Professor / ナッティ・プロフェッサー/クランプ教授の場合 (1996)』のトム・シャドヤック。LA映画祭でワールドプレミアとなり、人気の為チケットが取れず、急きょ上映回数を増やしたほど。

ブライアン・バンクス(オルディス・ホッジ)は、カリフォルニアのロングビーチの高校でアメリカンフットボール選手として頭角を現していた。当時の地元の強豪大学USCの有名ヘッドコーチ(現NFLシアトル・シーホークスHC)のピート・キャロルから奨学金の打診もされている程だった。しかし、現在のブライアンは、法改訂で足にはGPSがつけられ、学校や公園に近寄ることができなかった。遡ること高校時代、学校で女子生徒に誘われてイチャイチャしていたが、途中で止めた。そのことが気にくわなかった相手の女子生徒が「ブライアンにレイプされた」と告白され、ブライアンは逮捕されてしまう。司法取引で罪を認めれば、刑期はなく保護観察だけで済むと言われ、未成年にも関わらず10分で司法取引をするかどうかの決断を迫れてしまう。ブライアンは5年の刑期を終えて出所するが、刑罰により職が見つからず苦労していた。そんな時、ブルックスグレッグ・キニア)のカリフォルニア・イノセント・プロジェクトを知り、連絡を取るが...

私はずっとブライアンが刑期を遂行している途中で無罪を証明して、出所したのものだとばかり思っていたのです。5年の刑期を終わらせてから、無実を証明したのは知りませんでした。それにしても、アメリカという国は法律が守ってくれるのではなく、法律が人々を苦しめる恐ろしい国だなって、こういう映画を観る度に思ってしまう。弁護士も色々とあり過ぎる。ブルックスみたいな人もいれば、最初の弁護士みたいなダメな人もいる。その人たちに人生左右させられてしまう。もちろん、使えない検察も含めて。司法取引って本当に怖い。無実ならば絶対に司法取引をしない方が良い。でも、悪質な弁護士は仕事しない検察に上手く言いくるめられて司法取引を薦める。「もし有罪になったら終身刑だよ。絶対に無実だって証明できるの?」とかいう脅しを使って。私は上でリンクしている冤罪映画を死ぬほど見てきたので知っている。司法取引は絶対にダメ!麻薬と同じくらいダメ!でもね、観てきたからこそ知っている。司法取引に応じてしまうことも。アメリカの裁判の場合、『ボクらを見る目』の時のように検事側がでっち上げて有罪になってしまう時もあるので、司法取引が逃げ道になることもある。そして親身で良い弁護士はお金が掛かる。カリフォルニア・イノセント・プロジェクトみたいなところもある。でも、ブライアンみたいに「有望な選手だった」とか、そういう色がないと恐らく取り合ってもらえないんだ。アメリカというか、そういうのは全世界一緒だと思う。社会の恐ろしさ。

ブライアンを演じたオルディス・ホッジが良い。凄い選手ぽい体だし、頑張ってーとつい応援したくなる表情をみせてくれたりする。目が真っすぐで良いです。あ、モーガン・フリーマンが出ています。出演しているのを知らなかったので、すごくビックリした。この映画でのモーガン・フリーマンは、ディスカバリーチャンネルの時のモーガン・フリーマンみたいです。

何が自分を救うのか?やはり知識だと、この映画で思う。ヘイビアスコーパスなんていう法律や、司法取引のこと、駄目な女の見分け方、味方につける人の見分け方、などなど、人生は豊富な知識が必要なのだ。そんな知識を養うためにも見て貰いたい作品。不屈のブライアン・バンクス、知って欲しい。

(3.75点:1724本目)
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Dolemite Is My Name / ルディ・レイ・ムーア (2019) 1723本目

ドールマイト』&ルディ・レイ・ムーアをより魅力的にした自伝映画の最高級品『ルディ・レイ・ムーア

やりよった。エディ・マーフィはやりよった!元々やる男だとは思ってた。特に『Dreamgirls / ドリームガールズ (2006)』で見せた演技力からずっと期待していた。やっぱり面白さは本物。第一、ルディ・レイ・ムーアで泣くとは思わなかった。ラストがビックリするほど最高で、完璧です!ルディへの尊敬と愛を物凄く感じる。自伝映画で示すべき姿と姿勢です。なので、アカデミー賞はもうエディ・マーフィで良いと思う。コメディでああいう演技するのって凄いこと。歴代のアカデミー賞受賞者にやって欲しいねー。絶対に出来ないから!

とは言え、映画秘宝1月号とCinemoreにて(あとツイッターでもチョイチョイ)、この作品についてかなり出し切ったので、そちらで読んで頂けると幸いでございます!(ぺこり)

映画秘宝 2020年 01 月号 [雑誌]

映画秘宝 2020年 01 月号 [雑誌]

cinemore.jp

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(5点満点:1723本目7)
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Dolemite / ドールマイト (1975) 1722本目

史上最高に緩い映画は史上最強に愛くるしい映画であった『ドールマイト

あのエディ・マーフィルディ・レイ・ムーアを演じる。そう聞いた時、正直言って驚いた。「いやいや、エディ... その前にレッド・フォックスやリチャード・プライヤーを演じて!」と私は思った。エディがプチ引退を撤回してまで挑んだルディ・レイ・ムーア映画。その映画については、また別で書くとして... その映画の題材となっているこの映画を先に。前に100本映画で書いているかもだけど、改めて。

ドールマイトルディ・レイ・ムーア)は、ロサンゼルスでクラブ経営をして儲けており、護衛の為に女カラテ軍団を作ったりして、結構モテていた。しかし、ライバルのウィリー・グリーン(ダーヴィル・マーティン)にハメられて、今は刑務所暮らし。クイーン・ビー(レディ・リード)が、何度も刑務所長を説得し、自分で無実を証明することを条件に出所となった。早速、女たちが手厚い歓迎でドールマイトの出所を迎える。無実を証明しようと動くが、なぜか警察たちも執ようにドールマイトの動向を見張り、嫌がらせをしてくるが...

何度でも書くけれど、『ドールマイト』は決して素晴らしい映画ではない。ブラックスプロイテーション映画のパロディ映画『Black Dynamite / 日本未公開 (2009)』でも、ガンマイクが見きれちゃうというパロディをやっていたが、それはこの『ドールマイト』からだ。全てが緩いのだ。まず、刑務所長が囚人を勝手に出所させることは無いですから!全てにおいて緩い。でもその緩さが最高に良かった。駄作と言われるダメな映画は一杯ある!でも、駄作のまま人々に忘れられて終わる映画と、そうじゃない映画っていうのが存在する。これはその後者。どういう訳か「駄作ってだけじゃない映画」として、カルト人気となったのだ。この映画の場合は、緩さが丁度良かった。ダメな映画なんだけど、ルディ・レイ・ムーアがハチャメチャで、でも一生懸命で... それが愛くるしさとなった。ダメな所が魅力になってしまったのだ。カッコいい訳じゃないけれど、何だかんだと人には愛されている。悪い人のくせに、フッドを必死に守ろうとはしている。カッコいいシャフト(リチャード・ラウンドトゥリー)とかハンマー(フレッド・ウィリアムソン)も必要だけど、スタイルもルックスも悪いドールマイトも必要だった。だって世の中には、カッコいい人だけじゃないし、そうじゃない人だって英雄とはまではいかなくても、世の中に役立つってことを証明したいものだから。そんな人たちの希望がドールマイト。だから、ラッパーたちのヒーローになった。ラッパーって割りとルックスには恵まれていない人たちが多いのもある。ドールマイトはあんな感じなのに、女にはモテるし、良い車乗っているし、クラブ経営も上手くいっている「出来る男」だ。何ていうか、今でいうIT社長みたいな感じだ。

そして『Dolemite Is My Name / ルディ・レイ・ムーア (2019)』のプロモで、出演者たちが集まってワイワイと会話している映像を観ていたら、この映画に出てくるジャンキーの話題になって、エディが「あれはルディの知り合いの本物のジャンキーだろうね。もしあの人が本物のジャンキーじゃなかったら、オスカー級だ!」と、みんなで爆笑していた。彼には役名がちゃんとついていて「ハンバーガー・ピンプ」。ハンバーガー・ピンプの残した印象は強く、後の『Menace II Society / メナース II ソサエティー/ポケットいっぱいの涙 (1993)』のチーズバーガー男に受け継がれていく訳です。で、『メナース』などをパロディにした『Don't Be a Menace to South Central While Drinking Your Juice in the Hood / ポップ・ガン (1996)』には2回も出てきましたね!

改めて『ルディ・レイ・ムーア』を観て思う。やはりこの映画の制作秘話もルディ・レイ・ムーア本人も愛くるしい。だからこんなにカルト人気となる愛おしい映画となったのだと。それにおっぱいもカラテもあるし間違いない!!

(3.75点:1722本目)
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Sweetheart / 日本未公開 (2019) 1721本目

生きることはカッコいい。新感覚のホラー『Sweetheart』

キアシー・クレモンズ、大好きです。唯一無二の存在感を感じる。髪型や表情が違うだけで、雰囲気が全く変わるのも、彼女の強み。なんと言っても『Dope / DOPE/ドープ!! (2015)』でのボーイッシュな感じが凄く可愛かった。そんなキアシー・クレモンズの一人芝居的な作品。サイレント時代が終わり、有声時代に入ってからの映画界で、恐らく最もセリフが少ない映画ベスト10にはランキングしそうなくらい、セリフが殆どない作品。最近では、説明セリフみたいのが多いので、ひじょーーーに珍しいタイプ。そんな画期的な作品に挑んだのが、『Sleight / インフィニット (2017)』がひじょーーーーーに面白かったJ.D.・ディラード監督。ブラムハウス制作のホラーですが、キアシー・クレモンズがキャストアウェイしちゃってホラーが...みたいな感じです。プロットも謎でしょ?プロットは意味不明な時の方が面白いこともある!

ジェン(キアシー・クレモンズ)は、目が覚めたら波打ち際の浜辺で倒れていた。近くには、知り合いのブラッド(ベネディクト・サミュエル)も倒れていて、脇腹に珊瑚が刺さっていてひん死の状態だった。何とかココナッツを見つけ、その中のココナッツ水を飲ませようとするが、息を引き取ってしまう。ジェンはどうやら遭難して、無人島にたどり着いた。たどり着いたのは、ジェンとブラッドだけで、他は見当たらない。ジェンは何とか1人で生還しようと、島を巡るが、人の気配はないが、人が居た気配はあった。夜になり、それが何なのか分かり始める...

セリフもないし、終盤までは何も起きず... 結構長い事、ジェンのキャストアウェイ状態を眺めることになるんだけど、意外とそれはそれで面白かった!ジェンのサバイバルスキルが高い。『孤島部長』っていう漫画を少しだけ思い出してしまう。古藤部長もジェンもサバイバルスキルの高い人間は魅力的。遭難とかゾンビ襲撃とか、ディストピア系のことが起きてしまったら、私はすぐに死にたいと思う方。あんまり生き延びようとは思わないかもと、いつもそういう映画を観る度に思っている。でもこういう映画では主人公は絶対に疑いもなく生き延びようとするよね。それがもうカッコいいと思う。生きようと必死の人はカッコいい。人生、生きてこそですもの。この映画では、キアシー・クレモンズ演じるジェンが、生きることを頑張る。魚を手製のモリで「取ったどー!」してみたり、流れ着いたトランクで小型船を作ろうとして絶望したり、流れついたダサい服を嫌々ながら着てみたり... 大体は絶望的な表情を見せるんだけど、その度に画面に食らい付いて見入ってしまう。ショートヘアのナチュラルな感じが、どことなく歌手のブルーノ・マーズぽくて、可愛い。あと、大事な所で掛かる『ナイトライダー』のオープニングぽい曲が面白い。出るぞ、出るぞみたいな。出てくるモノも80年代ぽいなーと。J.D.・ディラード監督は、こんな風に果敢に新しいものを作り続けていくようで、これからも楽しみ。

ひっきりなしに掛かってくる電話やメールとかに嫌気を感じて、「携帯の繋がらない無人島にでも行って何も考えずにのんびりしてみたい」なんて思ってしまう今日この頃。余分なモノが多い世の中だからこそ、この質素さが新しい。80年代の映画ぽいのに、でも他にはない新しさを感じる不思議な作品。画期的とはこのこと。生きるということは何もしないことじゃない。新感覚のホラー映画だ。

(4.25点:1721本目)
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