SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて


*10/15/2018に「ブラックムービー ガイド」本が発売になりました!よろしくお願いします。(10/15/18)

*『サンクスギビング』のパンフレットにコラムを寄稿。(12/29/23)
*『コカイン・ベア』のプレスシート&コメント&パンフレットに寄稿。 (09/27/23)
*ブルース&ソウル・レコーズ No.173 ティナ・ターナー特集にて、映画『TINA ティナ』について寄稿。 (08/25/23)
*『インスペクション ここで生きる』へのコメントを寄稿。(8/01/23)
*ミュージック・マガジン1月号にて、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のレビューを寄稿。(12/2/22)
*12月2日放送bayfm「MUSIC GARAGE:ROOM101」にて『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』についてトーク。(12/2/22)
*10月7日より上映『バビロン』にコメントを寄稿。(10/6/22)
*奈緒さん&風間俊介さん出演の舞台『恭しき娼婦』のパンフレットに寄稿。(6/4/22)
*TOCANA配給『KKKをぶっ飛ばせ!』のパンフレットに寄稿。(4/22/22)
*スターチャンネルEX『スモール・アックス』オフィシャルサイトに解説を寄稿。(3/29/22)
*映画秘宝 5月号にて、連載(終)&最後のサイテー映画2022を寄稿。(3/21/22)
*「This is Charles Burnett チャールズ・バーネット セレクション vol.1」にコメントを寄稿。(3/19/22)
*キネマ旬報 3月上旬号の『ドリームプラン』特集にて、ウィル・スミスについてのコラムを寄稿。(2/19/22)
*映画秘宝 4月号にて、連載&オールタイムベストテン映画を寄稿。(2/21/22)
*映画秘宝 3月号にて、ベスト10に参加。(1/21/22)
過去記事

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Sweetheart / 日本未公開 (2019) 1721本目

生きることはカッコいい。新感覚のホラー『Sweetheart』

キアシー・クレモンズ、大好きです。唯一無二の存在感を感じる。髪型や表情が違うだけで、雰囲気が全く変わるのも、彼女の強み。なんと言っても『Dope / DOPE/ドープ!! (2015)』でのボーイッシュな感じが凄く可愛かった。そんなキアシー・クレモンズの一人芝居的な作品。サイレント時代が終わり、有声時代に入ってからの映画界で、恐らく最もセリフが少ない映画ベスト10にはランキングしそうなくらい、セリフが殆どない作品。最近では、説明セリフみたいのが多いので、ひじょーーーに珍しいタイプ。そんな画期的な作品に挑んだのが、『Sleight / インフィニット (2017)』がひじょーーーーーに面白かったJ.D.・ディラード監督。ブラムハウス制作のホラーですが、キアシー・クレモンズがキャストアウェイしちゃってホラーが...みたいな感じです。プロットも謎でしょ?プロットは意味不明な時の方が面白いこともある!

ジェン(キアシー・クレモンズ)は、目が覚めたら波打ち際の浜辺で倒れていた。近くには、知り合いのブラッド(ベネディクト・サミュエル)も倒れていて、脇腹に珊瑚が刺さっていてひん死の状態だった。何とかココナッツを見つけ、その中のココナッツ水を飲ませようとするが、息を引き取ってしまう。ジェンはどうやら遭難して、無人島にたどり着いた。たどり着いたのは、ジェンとブラッドだけで、他は見当たらない。ジェンは何とか1人で生還しようと、島を巡るが、人の気配はないが、人が居た気配はあった。夜になり、それが何なのか分かり始める...

セリフもないし、終盤までは何も起きず... 結構長い事、ジェンのキャストアウェイ状態を眺めることになるんだけど、意外とそれはそれで面白かった!ジェンのサバイバルスキルが高い。『孤島部長』っていう漫画を少しだけ思い出してしまう。古藤部長もジェンもサバイバルスキルの高い人間は魅力的。遭難とかゾンビ襲撃とか、ディストピア系のことが起きてしまったら、私はすぐに死にたいと思う方。あんまり生き延びようとは思わないかもと、いつもそういう映画を観る度に思っている。でもこういう映画では主人公は絶対に疑いもなく生き延びようとするよね。それがもうカッコいいと思う。生きようと必死の人はカッコいい。人生、生きてこそですもの。この映画では、キアシー・クレモンズ演じるジェンが、生きることを頑張る。魚を手製のモリで「取ったどー!」してみたり、流れ着いたトランクで小型船を作ろうとして絶望したり、流れついたダサい服を嫌々ながら着てみたり... 大体は絶望的な表情を見せるんだけど、その度に画面に食らい付いて見入ってしまう。ショートヘアのナチュラルな感じが、どことなく歌手のブルーノ・マーズぽくて、可愛い。あと、大事な所で掛かる『ナイトライダー』のオープニングぽい曲が面白い。出るぞ、出るぞみたいな。出てくるモノも80年代ぽいなーと。J.D.・ディラード監督は、こんな風に果敢に新しいものを作り続けていくようで、これからも楽しみ。

ひっきりなしに掛かってくる電話やメールとかに嫌気を感じて、「携帯の繋がらない無人島にでも行って何も考えずにのんびりしてみたい」なんて思ってしまう今日この頃。余分なモノが多い世の中だからこそ、この質素さが新しい。80年代の映画ぽいのに、でも他にはない新しさを感じる不思議な作品。画期的とはこのこと。生きるということは何もしないことじゃない。新感覚のホラー映画だ。

(4.25点:1721本目)
www.blackmovie-jp.com

映画秘宝1月号

映画秘宝1月号

映画秘宝 2020年 01 月号 [雑誌]

映画秘宝 2020年 01 月号 [雑誌]


透明感が尋常じゃないのんが表紙の映画秘宝1月号にて、『Dolemite Is My Name / ルディ・レイ・ムーア (2019)』についての寄稿と、『ファイティング・ファミリー』の監督スティーヴン・マーチャントのインタビューの翻訳を少しだけお手伝いさせて頂きました。

ルディ・レイ・ムーア』については、他でも書かせて頂いたので、それとはまた違う感じで映画秘宝でしか読めない情報や、映画鑑賞後だからこそ楽しめる情報もあるかもなので、楽しんで頂けたら幸いです。これまた日本語字幕には無い部分(他では書いていない別の個所)についても書いております。私の『ルディ・レイ・ムーア』愛が炸裂していると思います。ちなみに今日の写真のシーンが大好きでして、この写真を見ただけで思い出して号泣出来るレベルです!!是非是非、鑑賞前&鑑賞後にも一読いただけると嬉しいです。

『ファイティング・ファミリー』の監督スティーヴン・マーチャントのインタビューは、ロック様ことドウェイン・ジョンソンのカッコいい列伝が垣間見られる楽しいインタビューでした。ロック様が出演していたころのWWEをガッツリと見ていた私には涙モノです。翻訳前に『ファイティング・ファミリー』の映画も観ましたが、すごーく面白かった!!久々にプロレス見たくなった。主人公は健気で可愛いし、お兄ちゃん...(涙)ヴィンス・ヴォーン出ているので、何となく『ドッジボール』思い出した!映画の秘話を色々と話してくれておりますので、是非!
fighting-family.com

という訳で、映画秘宝1月号をよろしくお願いいたします。

映画秘宝 2020年 01 月号 [雑誌]

映画秘宝 2020年 01 月号 [雑誌]

Gemini Man / ジェミニマン (2019) 1720本目

地球にはウィル・スミスの敵は残っていない『ジェミニマン』

ウィル・スミスって、やっぱり天性のスターって感じしますよね。見ているだけで、ワクワクして笑顔になる。色んなタイプの芸能人がいるけれど、ウィル・スミスは人を笑顔にする生まれながらのエンタテイナー。でも、ウィル・スミスだって人なので、そりゃたまには人を怒らせたり、イラっとさせることもあるかと思うけれど、カメラが回っている時には、常にエンタテイナーであり続けるような人だと思う。絶対的なオーラに包まれている感じ。もう生まれた時から次元が違う感じ。正直、インスタを始めた時には、ウィルレベルの人にやって欲しくないなーとは思ったけれど、インスタでもちゃんと「ウィル・スミス」ブランドを保っているのが凄い。やっぱり違う。そんな天性のスター(ウィル・スミス)vs生まれながらのエンタテイナー(ウィル・スミス)が対決するSFアクション映画。監督は、2度もオスカーを獲得しているアン・リー

ヘンリー(ウィル・スミス)は、類まれな才能を持った政府雇われスナイパー。どんなに離れた所からでも、動く高速列車に乗るターゲットを仕留めることも出来る。しかし年齢的に引退をしようと決めるが、無関係者を殺したと虚位の報告をされ、ヘンリーの命が狙われるようになった。接触してきた女性ダニー(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)と古い友人バロン(ベネディクト・ウォン)の手を借り、虚位の報告をしたユーリという男を追う。すると、自分の若い頃にそっくりなジュニア(ウィル・スミス)が追ってきて...

この映画の話を聞いた時には、もう地球にはウィル・スミスの相手になるモノなんて残っていないんだ!己と戦うしかないんだ!と思った。今まで、『ID4』『MIB』...あげたらキリないくらい何度も地球守ってきたからね。そりゃ、最終的には自分vs自分になるでしょう!その作品の監督にアン・リーとは出来過ぎでしょう!と思いました。この映画の脚本は90年代から今まで何度も書き直しになって、監督も主演も何度も交代を繰り返してきた。CGIとかの技術も遥かに進歩した今、そして稀代のスターであるウィル・スミスも年齢重ねてこの役にピッタリで、アカデミー賞を2度も受賞したアン・リーなら、そんな難しさだってクリアに... と思ったけれど、やっぱり難しかったのでしょうね。ジュニアなどのキャラクターに、やっぱり本物さを感じることが出来なかった。動きとか特に。でも表情とかは、とても繊細。ウィル・スミスが後生言われることないと思っていた言葉をジュニアが言われた時、ジュニアが傷ついた表情をするのだけど、その時は胸が割けそうになった。CGでもウィル・スミスは良い表情するなーと。この時の会話と表情が、ラストで効いてくる。ラストは観客に安心感を与える。そして、途中はもっと驚きの事実で切なくさせてくれる。

正直ですね、ウィルのクローンを本気でつくるなら、戦わせるのではなく、世界中に配って世界を幸せにして欲しい!と願う訳です。確かに、映画の中では何度も地球を救ってきて、キレキレ優秀なウィルなのですが、普通にニコニコさせておいた方が、世界が幸せになる気がするのです。

でも何だかんだ書いても、やっぱりウィル・スミスはSFアクション映画で映える!ということ。見ているとワクワクする、あのいつものウィル・スミスだ。劇中で、ウィルの実年齢51歳だということを何度も認識させられる。正直驚く。自分だけが歳を取っていて、ウィル・スミスは永遠の29歳なような気でいたから。あと何回、ウィルはスクリーンで私たちをワクワクさせてくれるのだろうか?この映画のヘンリーと少し重ねてしまい、しゅんとしてしまう自分がいる。

(3.5点:1720本目)
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The Weekend / 日本未公開 (2018) 1719本目

地獄のような優しさの元カレとの週末『The Weekend』

誰でも失恋くらいはしたことがあると思う。ごく稀に初恋を成就させて結婚する人もいるかもだけど、あの玉木宏だって、振られたことがあると語っていたので、まあ世の中の人97%は失恋を経験している筈。私も幾つか経験して大人になりましたが、スッキリと忘れてしまい、今や名前すら憶えていない人もいれば、中には今でも夢に出てくる人までいる(なんかごめん)。まあ相手やタイミングが違えば、結果というか色々と違ってくるものです。この映画の場合、かなーーり尾を引いているタイプの女性が主人公。面白いのが、本人は割りとさっぱり系でイジイジしなさそうなのに、かなーーーり面倒臭い感じで拗らせております。主演は、『サタデー・ナイト・ライブ』のレギュラーだったサシェア・ザマタ。監督は、『Everything, Everything / エブリシング (2017)』のステラ・メギー。恋愛映画監督の新星!

スタンダップコメディアンのザディ(サシェア・ザマタ)は、ステージに立ち観客を笑わせていた。次の朝、ブラッドフォード(トーン・ベル)が迎えに来た。この週末は、ブラッドフォードの誕生日で、ザディの母が経営するB&Bで過ごす予定なのだ。車内で和気あいあいと過ごしていたが、ブラッドフォードはもう一人を迎えに行った。マーゴ(ディワンダ・ワイズ)だった。マーゴは、私が助手席に座るべきだと主張し、ザディは負けて後部座席に移った。そう、ブラッドフォードはザディが3年前に別れた元カレで、今でも何でも話せる親友。そしてマーゴは、ブラッドフォードの新しい彼女。奇妙な3人の週末の旅が始まるが、B&Bには1人で宿泊中のオーブリー(イ’ラン・ノエル)も居て...

ブラッドフォード、いけず...でしょ?別れた彼女を親友として近くに置いておくなんて、凄くズルいよね。2人は付き合う前の大学時代から親友で、その流れで付き合って、別れて...なので、まあ今更、会わないという訳にもいかない部分もあるけれど、ブラッドフォードは保険を掛けているようにしか見えなかった。そして、ザディがこれまた癖の強い女性なので、中々他の人から受け入れて貰えないだろうから、余計にブラッドフォードに固執するのも何となく分かる。ザディの場合、かなり拗らせているのに、割りと前向きで積極的なのが面白かった。マーゴにもズケズケと話すので気持ちが良い。しかし、ブラッドフォードはズタズタですな。まあ自分が招いた悲劇でしょう。映画自体は、会話が重点を置くタイプなので、好き嫌いが分かれる。

有吉弘行が再ブレイクし始めた頃だったと思う。テレビで「結婚する気がなかったら、それはハッキリ伝えて、嫌われて別れた方が彼女のためになる」みたいなことを話していて、それから暫く有吉がイケメンに見えて困ったことがある。この映画を観ていて、何となくそれを思い出した。拗れない別れ方って大事だよねって。紛らわしい優しさは時に地獄。鬼のようなことが、本当の優しさだったりもする。大人の恋愛って分かるまで苦労する。3年気づかなかったけれど、今回の週末でそれを理解したザディは、まだ幸せな方だったとも思う。

(4.5点:1719本目)
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"30 for 30" Rodman: For Better or Worse / 日本未公開 (2019) (TV) 1718本目

ロドマンは狂っている。追憶的ロドマン狂騒記『"30 for 30" Rodman: For Better or Worse』

デニス・ロドマン。きっと誰の脳裏にもあの派手な衣装(特にウェディングドレス)をまとった破天荒な男というイメージが残っていると思う。私が彼の名前を聞くと毎回思い出すのが、まだネット回線が光回線だのDSLだの言う前のネット回線あけぼの...掛け放題の頃を思い出す。信じられないだろうけど、昔はネットに繋げるために電話回線を利用するので、その分電話代がかかるのだ。30分ネットに繋げれば30分の電話代を払うことになる。だけど夜の11時になると掛け放題になる。そのチャンスだけ、ネットに十分に繋がれた時代... その頃にはまだツイッターフェイスブックどころか、ブログすらなかった。人と繋がるのは、メールを介したメーリングリストだった。当時からNBA好きの私はNBAメーリングリストに入っていた。そのメーリングリストで絶大な存在感を放っていたのが、デニス・ロドマンのファンの男性だ(ここまで説明メッチャ長くなった)。名前こそ失念してしまいましたが、デニス・ロドマンの話題になる度に、この頃を思い出す。ちなみにその頃のメールクライアントは、Eudora...(涙目)。みんな元気でしょうか?少なくともデニス・ロドマン本人は元気のようです。ESPNの「30 for 30」シリーズの最新作は、そんなデニス・ロドマンのドキュメンタリー。ジェイミー・フォックスがナレーションと制作総指揮を担当。

軍人の父は幼い頃に家族を捨て、母と姉に囲まれて成長したデニス・ロドマン。今となっては信じられない事だが、非常にシャイな性格でいじめられっ子だった。姉の1人がバスケットボールで才能を開花させるが、デニス本人は目立たない性格で、高校を卒業し、テキサス州ダラスの国際空港で働くも、他の人たちと共に盗みを働き逮捕され解雇。母からも追い出され、1人ホームレス生活まで経験する。しかし、その後に5フィート9インチ(175㎝)だったロドマンが突然11インチ(27㎝)も成長を遂げる。姉の影響で高校のバスケットボールのチームに入ってはいたが、フルシーズンプレーしたことすらなかったが、短大のチームにスカウトされる。そこで目を見張る活躍を見せ、オクラホマ州の小さな大学に転入。大きな大学組織NCAAではなく、小さな大学のアスリート組織NAIAにて更に活躍。所属した3シーズン全てでオール・アメリカンに選ばれ、リバウンド王2回。その成績にデトロイト・ピストンズが目をつけ、ドラフト2巡目27番目に選ばれてNBA入り(サラッと書いたけど、これは物凄い奇跡です)。その頃のデトロイト・ピストンズはチャック・デイリーHCの下、アイゼイア・トーマスやジョー・デュマースなどの若手が成長しつつあり、東の強豪として活躍していた。デニス・ロドマンと同じ年にジョン・サリーも加入。デトロイト・ピストンズのライバルは、同じく若手スター選手マイケル・ジョーダンやスコティ・ピペンなどが所属していたシカゴ・ブルズ。いい子ちゃんブルズ(というのは語弊あるけど)に対抗すべく、デトロイト・ピストンズは「バッド・ボーイズ」を形成しつつあった...

と、長くなりました。そういえば、デニス・ロドマンには自伝映画『Bad As I Wanna Be: The Dennis Rodman Story / デニス・ロッドマン ストーリー (1998)』というテレビ映画がある。ベストセラーとなった自伝本が映画化。ま、映画はアレ(お茶濁す)ですが、映画が作られるほどデニス・ロドマンは人気があったということ。☝の2パラグラフ目はざっと書いたけれど、みんなが良く知るデニス・ロドマンはそのうんと後の事で、シカゴ・ブルズ時代の頃だと思う。デトロイト・ピストンズの頃はパーティも行かない真面目男。ジョン・サリーや元チームメイトは口をそろえて「あの頃はシャイだった。クラブ(踊る方)行ってもミルク飲んでた」という。そんなシャイな男がどうして、あのマドンナと付き合って、ヴァンダムと共に映画『ダブルチーム』に出たり、自分の結婚を発表するのになぜかロドマンがウェディングドレス着ちゃうような人になったのか... このドキュメンタリーで良く分かる。父親の不在が大きいし、あとそれまで目立たなかった人が目立つようになるとコントロールが効かなくなる。

私の記憶の中のデニス・ロドマンは、狂ったようにリバウンドを取っていた。ガードで小さいくせに同じように虎視眈々とリバウンドを狙っているラッセル・ウェストブルックを見ていると、現役時代のロドマンを思い出す。デニス・ロドマンは、ゴール下でひたすらボールがゴールに落ちずに飛び跳ねてくるのを待って絶妙なタイミングでジャンプしてボールを取る姿が忘れられない。「ロドマンは狂っている」。そう言ってしまうと、恐らく人はデニス・ロドマンのウェディングドレスを思い浮かべるだろう。けど私は、狂ったようにリバウンドばかりを狙うデニス・ロドマンの狂気と情熱に敬意を払って言っているのである。ネット回線はいつの間にか繋げ方も回線も速くなっていた。イザコザなんかする暇なかった掛け放題の頃のネット時代を懐かしく思ってしまう。そして、北朝鮮の事で泣いたりしない、リバウンドだけを追っていたロドマンを私は少し懐かしくなってしまうのだ。

(3.75点:1718本目)
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Amazing Grace / 日本未公開 (2018) 1717本目

1972年ワッツは熱かった『Amazing Grace

1972年、ロサンゼルスのワッツは熱かった。気候的な暑さではなく、この年にワッツの歴史を模り、そして語り草となるイベントが2つも起きたのだ。まずは、この映画となったアレサ・フランクリンによるゴスペルライブアルバムの収録、そして、『Wattstax / ワッツタックス (1973)』である。

1972年1月、既に20枚以上のアルバムを発売し、グラミー賞にも輝いていたアレサ・フランクリンは、何か違うことをしたいと模索していた。アレサは、自分が小さい頃から親しんだゴスペルライブアルバムの制作を思いついた。『追憶』や『トッツィー』などで知られるシドニー・ポラック監督が、そのアルバム制作の模様を撮影することが許された。その後発売されたアルバムはベストセラーとなる。ポラック監督が撮影した映像は、ライブ映画として上映される筈だったが、テクニカルの問題でお蔵入り。時を経て、編集し直して、ドキュメンタリー映画として映像は甦った。

ライブにはハプニングがつきものだ。ジェームズ・ブラウンが「Live at the Apollo」というライブ・アルバムを制作した時にも起きた。「俺がJBだ!」という自伝でもそれについて触れている。お婆ちゃんが卑猥な言葉を発し、マイクがそれを拾ってしまった。でもそのライブ感が受けた。JBがそのアルバムを制作した頃は、ライブアルバムの常識はなくて、所属レーベルから猛反対されてしまう。どうしてもライブアルバムを作りたかったJBは、自主制作でアルバムを制作したほどだった。ライブでハプニングといえば、エディ・マーフィの『Eddie Murphy Delirious / エディ・マーフィー/ライブ!ライブ!ライブ! (1983)』のハプニングも思い出させる。エディ・マーフィの見事な切り返しに、アッパレだと感じたものだった。そういったライブでのハプニングの対応に、エンターテイナーとしての真価が問われる。このアレサ・フランクリンのライブには、流石にそういうハプニングはない。バプティスト教会という神聖な場所なので、観客がそれを弁えている。JBやエディ・マーフィのライブとは違うのだ。でも、アレサの迫真のゴスペルを聴いてしまうと、黙っては居られない。徐々に観客が高揚していくのが分かる。立ち上がりリズムを取る者、一緒に口ずさむ者、足を鳴らす者、神の名を叫ぶ者... その観客と共に、アレサの熱も高まっていくのが分かる。そして1月とは思えない熱気で、汗が凄い。そんなアレサの汗をそっと拭くアレサの父C.L.・フランクリン。そしてジェームズ・クリーブランドとの共演とアレサの即興は、圧巻で凄いものを見せつけてくれる。いつの間にか、自分も1972年に行われたその教会に居るように勘違いしてしまう。

一曲目を歌う前のアレサ・フランクリンの顔は、ベテランとは思えないほどの緊張感が漂っている。しかし、歌いだすと、私たちが知るいつもの貫禄のアレサが登場する。ライブ・アルバムだけでは知ることが出来なかった一面も見れるのが映像記録の良さである。

(4.5点:1717本目)
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Canal Street / 日本未公開 (2019) 1716本目

他とは違うブラック・ライヴス・マターを描く『Canal Street』

ブラック・ライヴス・マター。この言葉が使われるようになったのは、2012年にフロリダ州で起きたトレイヴォン・マーティン殺害事件だ。丸腰で無罪の17歳の少年トレイヴォン・マーティンが、自警団を名乗るジョージ・ジマーマンによって殺害されたが、ジマーマンは自衛を主張して無罪になった事件である。その前から、黒人の間では鬱憤が溜まっていた。2009年に起きたオスカー・グラント殺害事件もその要因の一つで、後に『Black Panther / ブラックパンサー (2018)』のライアン・クーグラー監督が『Fruitvale Station / フルートベール駅で (2013)』にて鮮明に映画の中で描いているので記憶している方々も多いだろう。そして、最近では後が絶えずニュースで相変わらず同じような事件が伝えられている。この映画はそんな状況を伝えているけれど、ちょっと趣向が違う作品。シカゴが舞台。

コリ(ブリシェア・グレイ)は、父(マイケルティ・ウィリアムソン)の仕事の関係で、シカゴの割りと良い地域に引っ越し、それまでとは違った白人学生の多い学校に転校した。白人生徒ブライアン(ケヴィン・クイン)から言いがかりを付けられてイザコザとなるが、逆にそれで仲良くなった。ブライアンに誘われてパーティに出かけ、そしてその帰り道、コリが新車で送り届けたブライアンの家の前で何者かがブライアンを射殺した。コリはブライアン殺害事件の容疑者として逮捕される。コリの父は弁護士で、息子の容疑を晴らそうとするが...

ということで、若い黒人が殺人事件の容疑者として展開していく物語。なので、黒人が銃の犠牲となってしまう「ブラック・ライヴス・マター」とは違うのです。でも、その事件を取り囲む様子は「ブラック・ライヴス・マター」と同じ。ラジオDJたちが討論し、大きな教会(メガチャーチ)が関わっていて、そしてメディアとSNSで煽るという状況はそのもの。そして劇中、終盤まで誰が犯人か分からずサスペンス的な要素もある。犯人が分からないので、世間&社会は、コリとその周りの人物たちを人種という枠にはめた偏見だけで語っていく。そんな怖さも描いております。コリを演じたのが、『Empire / Empire 成功の代償 (2015-Present)』にてライオン家の3男ハキームを演じているブリシェア・グレイ。ハキームもそうだけど、見た目が偏見の目で見られそうだよねーと、上手いキャスティングです。監督は、シカゴ出身のライアン・ラマーという新進系の監督。

タイトルは、A$APロッキーの曲に同じタイトルがありますが、それとは意味が異なっている。映画冒頭で説明されているのが、「偏見なく平等に機会に通じる、全ての社会に存在するストリートのこと」という名詞が「Canal Street」。他とは違った感じでブラック・ライヴス・マターを描いているのが面白い。

(3.25点:1716本目)
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