SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて


*10/15/2018に「ブラックムービー ガイド」本が発売になりました!よろしくお願いします。(10/15/18)

*『サンクスギビング』のパンフレットにコラムを寄稿。(12/29/23)
*『コカイン・ベア』のプレスシート&コメント&パンフレットに寄稿。 (09/27/23)
*ブルース&ソウル・レコーズ No.173 ティナ・ターナー特集にて、映画『TINA ティナ』について寄稿。 (08/25/23)
*『インスペクション ここで生きる』へのコメントを寄稿。(8/01/23)
*ミュージック・マガジン1月号にて、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のレビューを寄稿。(12/2/22)
*12月2日放送bayfm「MUSIC GARAGE:ROOM101」にて『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』についてトーク。(12/2/22)
*10月7日より上映『バビロン』にコメントを寄稿。(10/6/22)
*奈緒さん&風間俊介さん出演の舞台『恭しき娼婦』のパンフレットに寄稿。(6/4/22)
*TOCANA配給『KKKをぶっ飛ばせ!』のパンフレットに寄稿。(4/22/22)
*スターチャンネルEX『スモール・アックス』オフィシャルサイトに解説を寄稿。(3/29/22)
*映画秘宝 5月号にて、連載(終)&最後のサイテー映画2022を寄稿。(3/21/22)
*「This is Charles Burnett チャールズ・バーネット セレクション vol.1」にコメントを寄稿。(3/19/22)
*キネマ旬報 3月上旬号の『ドリームプラン』特集にて、ウィル・スミスについてのコラムを寄稿。(2/19/22)
*映画秘宝 4月号にて、連載&オールタイムベストテン映画を寄稿。(2/21/22)
*映画秘宝 3月号にて、ベスト10に参加。(1/21/22)
過去記事

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Tales from the Hood 2 / 日本未公開 (2018) (Video) 1677本目

23年後に再び訪れた語り部『Tales from the Hood 2』

スパイク・リー制作総指揮。大事なことなので一番最初に書いてみました。ツイッターではぜーーーーんぜん反響無かったんですが、この映画のオリジナル『Tales from the Hood / 日本未公開 (1995)』は割りと人気あるんですよ。一部には。2年前にはアメリカではコレクターズコレクションでブルーレイにもなっている程。何と言っても、当時人気爆発したウータン・クランが提供したサントラは、大ヒットしたので、日本でもサントラは持っている人多いと思う。そして映画ファンなら、原題でピンとくると思うけれど、『ハリウッド・ナイトメア』の黒人版。ホラー・ショートストーリーのオムニバス映画。なんとぉおおお!!続編が23年の時を経て完成!!!(1人で勝手にテンション上げておきます!)

シムズ(キース・デイヴィッド)は、研究所に到着した。刑務所を経営し、そしてこの研究所の最高責任者ビーチ(ビル・マーティン・ウィリアムス)が館内を案内し、人工知能(Artificial Intelligence/A.I.)ではなく、本物の知能(Real Intelligence/R.I.)を持つ最新ロボット警察「ロボ・ペイトリオッツ愛国者)」をシムズに説明していた。ロボ・ペイトリオッツならば、ミスすることなく犯罪者たちを取り押さえることができるとビーチは豪語した。ロボ・ペイトリオッツは自らの経験から学び、そして話を聞くことからも情報を学び判断することができる。シムズはロボ・ペイトリオッツに話をする為に呼ばれており、ビーチが所有する刑務所を一杯にするため(刑務所ビジネスで儲けるため)に黒人をリクルートするべく「ブラックス・リヴス・マター」にまつわる話をしていくのだった...

と、ここから4本の話(オムニバス)が始まるわけです。私がオリジナルを好きな理由は、もちろん黒人への差別を訴えている部分に共感するからなんですが、それだけじゃなくて同じ黒人同胞へにも警告を鳴らしているところ。オリジナルの4番目はブラック・オン・ブラック・クライム(黒人同士の殺し合い)を描いており、面白かった。今回もそこは変わらない。差別への訴えと、同胞への警告。そしてこの作品の面白さは、ユーモアも交えている所。ストレートな笑いや、強烈な皮肉もこめていたりする。これは、監督のラスティ・カンディエフらしさが出ている。元々は、『Chappelle's Show / 日本未放送 (2003-2006)』や『Sprung / スプラング/お前にゾッコン (1997)』などのコメディ畑の人ですから。コメディ畑の人がホラー映画という点で、『Get Out / ゲット・アウト (2017)』のジョーダン・ピール監督にも繋がる。ピールも絶対にこの映画観ている筈。今回も4話それぞれに色があって、最高でした。1話目と3話目は、何となく下世話というか下品というか『Black Devil Doll / 日本未公開 (2007)』ぽいいい感じのB級ぽさがある。でも1話目のは物語自体がハッとさせられるというか、ブラック・メモラビリア(黒人人形とか置物など)への痛烈な警告。4話目が一番好き。2話目は割りとオーソドックスながら面白い。3話目はホラー映画に欠かせないエロ。4話目はヒトラーを「OK」だと語ったキャンダス・オーウェンズに見せてあげたい。エミット・ティルやキング牧師などの公民権運動の殉難者が蘇り現代にメッセージを伝える物語。ま、全体的にトランプやブッシュ批判がとても感じ取れます。ビーチという役はトランプ(自分の発言を悪いと思っていないバカ)とブッシュ(デカければ良いというアホ)の交配で出来た最悪な男。と、本当に色が様々。

前回、物語の語り手シムズを演じていたのが、『Purple Rain / プリンス/パープル・レイン (1984)』でプリンスの父を演じていたクラレンス・ウィリアムズ3世。今回は『Dead Presidents / ダーク・ストリート/仮面の下の憎しみ (1995)』のキース・デイヴィッドがシムズ役。デイヴィッドといえば、私の中ではアイス・キューブの名アルバム「Raw Footage」のイントロとアウトロの怖い声の人!毎回聴くたびにゾクゾクします。今回もその声を駆使し、ラストはかなりゾクゾクします!

ゲット・アウト』がジョーダン・ピール監督にしか描けなかったように、この映画もラスティ・カンディエフとダリン・スコットにしか描けない世界。23年経ってしまったが、逆に23年経ったからこそ描ける今のアメリカが見えてくる作品。Now that ... was some sh**!!

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(4.25点:1677本目)

High Flying Bird / ハイ・フライング・バード -目指せバスケの頂点- (2019) (VOD) 1676本目

普通じゃないNBA映画『ハイ・フライング・バード』

私のツイッターをフォローしてくださっている方はご存知だと思いますが、私は現在オクラホマ・シティ・サンダーというチームが死ぬほど好き。ここ何年かは予定が無い限りほぼ82試合リアルタイムで観ている。今年は最初の方は日本への里帰りなどしていたので、1試合は見逃した。でも去年は全部リアルタイムで観た!という位のご贔屓である。私がNBAチームにハマるのは今で2度目である。1度目は、ペニー・ハーダウェイが在籍していた頃のオーランド・マジック。映画『Blue Chips / ハード・チェック (1994)』を見て、ペニーが「コーチ、ホームシックです」というセリフを言った時に、恋に落ちた。でも、その前からNBAは好きだった。マイケル・ジョーダンの頃からチョイチョイ観ていたし、ニューヨーク・ニックスに在籍していたアンソニー・メイソンを応援していた時期もある。ペニーに恋した瞬間は憶えているけれど、バスケットボール自体を好きになった瞬間は憶えていない。それほど私には身近だったのかもしれない。という、バスケへの熱い気持ちを語った所で、今回のこの不思議なNBA映画を!

デトロイト・ピストンズ在籍のレジー・ジャクソンNBAのプログラムについて語っている。そして、スポーツエージェントのレイ(アンドレホランド)は、クライアントの1人であるNBAルーキーのエリック(メルヴィン・グレッグ)にお金の使い方について厳しく注意をしていた。しかしレストランを去る時に、レイのクレジットカードが使用できなくなっていた... NBAは今ロックアウト中で非常事態となっていたのだった。

最初から、若干分かりにくい。そして会話劇なので、更に追うのが難しい。しかもNBA映画なのに、気分爽快なダンクや華麗なパスなどのプレーを観られることもまずない。NBAの象徴であるプレーが、今日の写真のようにバックグランド的でしかない(写真のは厳密には大学NCAAの試合)。でもれっきとしたNBA映画なのだ。NBA映画らしく、現役選手のレジー・ジャクソン、カール=アンソニー・タウンズ、ドノヴァン・ミッチェルが出演している。そしてアメリカのスポーツファンなら知っているスポーツコメンテーターのスキップ・ベイレスとか、元NFL選手で今はスポーツコメンテーターのシャノン・シャープとかも出演。如何にもNBA映画にはありがちなカメオ出演が映画を盛り上げる。でも!やっぱりちょっと変わったNBA映画なのである。ドキュメンタリー以外のNBA映画となると、この前の『Uncle Drew / アンクル・ドリュー (2018)』や、ウーピー・ゴールドバーグ主演の『エディー 勝利の天使』みたいなコメディが主流だが、硬派なドラマ作品なのが珍しいと思った。架空のロックアウト中という出来事を描き、NBAやスポーツエージェントの裏を描いていて、最後はまるでスタイリッシュな強盗映画を観たかのような「してやられた」感というか、逆にレイの立場になって「やってやりました」という爽快感をも味わえる。『オーシャンズ11』のスティーブン・ソダーバーグ監督らしい映画。『Moonlight / ムーンライト (2016)』の原案となった舞台の劇作家タレル・アルヴィン・マクレイニーの脚本。他では味わえない何とも摩訶不思議なNBA映画を2人が生み出した。

OKCサンダーファンとしては、レジー・ジャクソンが元チームメイトのラッセル・ウェストブルックのことを「自由で楽しそうにプレーしているのに、それが成功につながっている稀有な選手」と語っていて、涙出そうになりました。レジーがOKCを去った時に、2人には色々とあったので、まさかそんな風に褒めるとは!私はOKCに居た頃からレジー好きだったよ。今の活躍も嬉しく思う。

と、やっぱり普通にNBA映画なんだなーと思ったり。何はともあれ、主演のアンドレホランドが良かった。彼にはああいう役が合う。いかにも仕事が出来そうな聰明で賢い感じだからこそ、最後の「やってやりました」という爽快感に繋がっている。そういう引き出しのあるこの年頃の俳優が居て嬉しい。

一見全然NBA映画じゃないんだけど、意外としっかりとNBA映画。

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(4.25点:1676本目)

Korla / 日本未公開 (2015) (TV) 1675本目

コーラ・パンディットのゾクゾクする話『Korla』

去年位だったか、夫が見ていた番組から「ミズーリ州生まれのアフリカ系アメリカ人が、インド系だと名乗り以前にテレビで活躍していた...」というのが聞こえてきて、歴史好きな私をウズウズと刺激するワードが沢山で面白そうだなーと思ったけれど、映画を途中から観るのは嫌いなので、後で再放送で観ようと思っていた。けれど、再放送が無く... DVDにもなっていない様子。何度か気になった時にスケジュールを検索していたが、見当たらず... 諦めていたら、なぜかまた夫が観ていた!夫も最初から観れず、あれから気になっていたらしい。しかも今度は録画もしてくれていたみたいなので、助かった。という訳で、私たち夫婦の興味を刺激するワード「コーラ・パンディット」のドキュメンタリー映画を!

1921年ミズーリ州セントルイスで産まれたジョン・レッド。両親ともに黒人ではあったが、ヨーロッパ系の先祖を持つジョンは、いわゆるライトスキンで皮膚の色は薄かった。そして家族は同じミズーリ州のコロンビアという街に引っ越し、ジョンはピアノが上手いことで有名だった。30年代終わりごろ、大人になっていたジョンは、ハリウッドに移る。姉が『Midnight Shadow / 日本未公開 (1939)』という映画で主役を務めたので、その姉を頼った。『Midnight Shadow』という映画は、かの有名な『The Green Pastures / 緑の牧場 (1936)』にも出演していた黒人俳優ジョージ・ランドルが監督した作品で、人の心が読めるアリハバットという王子が、オクラホマの女性(ジョンの姉)を射止めるという映画。この映画のアリハバット王子をターバンを巻いた黒人俳優が演じていたのだ。先に示したように、ライトスキンのジョンは、まずメキシコ人と偽って、ラジオ番組に出演するようになる。当時、音楽家組合は黒人に門戸を開いていなかったが、メキシコ人には開いていたので、組合に属することが出来たのだ。そして姉の友人の1人の白人女性と結婚。この結婚も当時のカリフォルニア州では認められていなかったので、メキシコで結婚。2人は、ジョンにターバンを巻かせ「コーラ・パンディット」というインドから来た男性というキャラクターを作り、名乗っていくことになる。

もう面白いでしょ?このドキュメンタリーでは、↑の部分を軽く取り上げ、コーラがどのように活躍していったかを追う。今ならば、すぐに身元なんてバレてしまいそうだが、当時のアメリカではインド人とは?と、あまり認識されていなかったので、まーーーあ長いことバレなかった(笑)。そしてバレてもバッシングは受けなかった。バレた理由が、同じミズーリ州コロンビア出身のジャズピアノミュージシャンのチャールズ・トンプソン。トンプソンとコーラは同じ高校で学び、トンプソンは「俺よりもピアノが上手い男が1人いた」と覚えていたのがコーラだったのだ。トンプソンも「あいつはインド人じゃなくて、黒人だ!」とバラした訳じゃなく、たまたまインタビューで話をしていて、ジョン・レッドという上手いピアニストが居たと話しただけのこと。聞いたインタビュアーが調べに行ったら、コーラ・パンディットだった。

ところでコーラ・パンディットの音楽面には触れていないが、エキゾチカの分野では一人者。腕は確かなのです。でも当時、黒人というだけで音楽家協会にも入れなかったし、レストランで食事も出来なかった。でも、ターバンを巻いて人種を偽るとなぜか入れたそうだ。それだけで才能まで認められた。なら、巻くでしょ!という訳です。でも、コーラには2人の息子が居て、その息子たちは長年アイデンティティで苦しんだという。

TV草創期にオルガンを弾くだけの番組『Adventures in Music』でコーラは有名になった(コーラは晩年、映画『エド・ウッド』にて、『Adventures in Music』を再現)。インド人じゃないから、喋らない。ただただオルガンを弾く。それが当たった。しかし、プロデューサーの金銭的トラブルで、降板させられ、次に使われたのがリベラーチェ。そう、映画『恋するリベラーチェ』になった、あのリベラーチェです。コーラの後を引き継ぎ、コーラのスタイルを使ったリベラーチェは世界的な人気者になった。

なんだかんだと長くなってしまいましたが、60分ほどのこの短いドキュメンタリー、まだまだ面白い話は詰まっております!特に、姉が出演した映画からコーラに繋がる所は、黒人映画歴史好きには本当にたまらないゾクゾクする展開で、面白い映画でした。

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(4点:1675本目)

The Upside / 日本未公開 (2019) 1674本目

日本でも愛されたあの映画を米リメイク『The Upside』

フランスで大ヒットし評価を受け、そして日本でも人気で、東京国際映画祭ではグランプリにも輝いた『The Intouchables / 最強のふたり (2012)』。うだつが上がらないアフリカからの移民の男性が、ひょんなことから全身不随の白人男性の看護をすることになって、お互いの距離を縮めていくストーリー。今やアメリカのマーベル作品『X-MEN: フューチャー&パスト』にも出演しちゃう位世界的スターとなったオマール・シーの出世作品。その人気作品を『英国王のスピーチ』や『世界にひとつのプレイブック』などの成功で、これでまたオスカー狙うぞぉおおお!とワインスタイン・カンパニーが意気込んで制作したリメイクだが、ハーヴェイ・ワインスタインの性的暴行事件などで、一時はお蔵入りしそうにもなった。別の会社が公開権利を獲得し、公開時期が伸び伸びになって公開。

ニューヨークに住む作家として成功した億万長者のフィリップ(ブライアン・クランストン)は、首から下が動かせない体の不自由な中年男性だった。世話する人もフィリップの気難しさもあって、すぐに辞めてしまう。勘違いで新しく面接に来たのがデル(ケヴィン・ハート)だった。彼は仕事には興味がなく、仮釈放の書類にサインしてもらうだけの為に来た。しかし、フィリップはそんなデルを採用してしまう。嫌がるデルだったが、家から追い出されたのもあって、引き受ける事になった。そんなふたりが生活を始めるが...

この↑プロット部分のパラグラフ、名前とか設定とか違う所は変えましたが、実はわざとオリジナルの『最強のふたり』と同じにして書いてみました。それくらい、かなりオリジナルに忠実。まあ、オリジナルが変える必要がない位、最高でしたからね。でも全く同じならば、オリジナルを観た方が良いに決まっているので、チョイチョイは変えてある。完全に変えた所もある。オリジナルで印象的なのは、アース・ウィンド・アンド・ファイヤーの曲!冒頭からテンションマックスで掛かっていて、その存在感が凄かった。でも、今回はなぜかアレサ・フランクリン!確かにアレサは凄いけれど、なんでEW&Fからアレサに?と思っていたら、なるほど!これは上手い変更でした。あと、なんでニコール・キッドマンがあの役を?と思ったら、やっぱり上手い。

オマール・シーが演じていた男性役には、『Ride Along / ライド・アロング ~相棒見習い~ (2014)』などをヒットさせているコメディアンのケヴィン・ハートが選ばれた。あの役をアメリカでリメイクするならば、今ならやっぱり人気のケヴィン・ハートということになるんだと思う。でも、何だろう、オリジナルでオマール・シーが登場してきた時のパッと画面が明るくなる感じがない。この役にピッタリな良い感じの乱暴さと適当さ、そして擦れてない感じの素朴さと素直さとかが、オマール・シーは凄かった。出てくるだけで、それらを感じた位。あの映画の太陽のような存在。眩しい位に、スクリーンに一瞬にして光を放つ感じ。ケヴィン・ハートカテーテルのシーンとかでは面白さを発揮していたけれど、シー程の圧倒的な存在感を発揮することは無かった。少なくともこの映画では。

オリジナルの良さを再確認。オマール・シーと『最強のふたり』は、本当に最強な映画だったなーと。

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(3.25点:1674本目)

2019年、第91回アカデミー賞予想

2019年、第91回アカデミー賞予想

毎年やっているので、今年も。
私的には、私的にはですよ、心の底から、Black Panther / ブラックパンサー (2018)』が全部門受賞でいいじゃん!それしかないでしょ!!!位に思っておりますし、そう100%信じております。前にもツイッターで書いたけれど、2019年私アカデミー賞では、『ブラックパンサー』が歴史的初の全部門受賞を果たしておりますので。
今年も興味がある部門だけ予想。

- 作品賞 『ブラックパンサー
じゃなかったら、私はアメリカの中心ちかくの田舎町で開催のLAを飛び越えて、ハワイにまで聞こえる勢いで「嘘でしょーーー!!!」と叫ぶ。『ブラックパンサー』は、家族の葛藤や絆を描いた良質なドラマ作品であり、ワカンダの歴史を感じる過去にハリウッドに存在していた歴史大スペクタクル作品であり、真面目な兄とちょっと生意気で賢い妹というアメリカの子供番組であるある設定でノスタルジックな作品であり、紫を基調とした幻想的な世界を垣間見せるアート映画であり、それでいて世界を飛び回りカーチェイスから様々な武器を華麗に振り回して見せる活劇作品であり、そしてマーベルらしい主人公が苦しみながらも世界を守るスーパーヒーロー映画だった。どこを切り取ってもそれぞれの良さがある最高の映画だった。正直、キルモンガー以外の演技部分では少し他(作品・脚本・監督など)よりは弱いかな?と思ったけれど、逆に演技だけが評価されるスクリーン・アクターズ協会(SAG)賞の大賞を受賞したので、もう無敵だと思う。

0.000000000001%の確率で『ブラックパンサー』が逃したら、『ROMA/ローマ』かな。消去法で。


- 助演女優賞If Beale Street Could Talk / ビール・ストリートの恋人たち (2018)レジーナ・キング
ここは99%そうだと思う。日本でも公開されたので、御覧になった方も少なくないと思う。みんな思ったと思う、「ティッシュママ凄い!」って。台詞も印象的だったし、最初から最後まで最高でした。

- 助演男優賞Green Book / グリーンブック (2018)マハーシャラ・アリ
ここも99%そうだと思う。超自信ある。でも、何となくですよ、何となく、助演部門がこの2人でお茶濁される感を少ーーーし感じております。

- 監督賞『BlacKkKlansman / ブラック・クランズマン (2018)スパイク・リー
取って欲しい!!!その願いのみです。スパイク・リーに一度はオスカーの「監督賞」を獲得して欲しいのです。それが最高だという証になるならば。正直書くと最近のスパイクは良くなかった。なのに、この作品は恐ろしい程にスパイクらしさが良い感じでスパークした傑作。これはスパイクにしか撮れない作品。
スパイクが逃したら、多分『ローマ』のアルフォンソ・キュアロン。前哨戦ではスパイク取れてませんし...

-長編アニメ映画賞『スパイダーマン:スパイダーバース』
ここも手堅い気がしている。

-脚色賞『ビール・ストリートの恋人たち』バリー・ジェンキンス
『ブラック・クランズマン』と悩むが、『ブラック・クランズマン』は監督部門で、この部門はバリー・ジェンキンスだと最高だ。あのボールドウィンの名作をあのように脚色したのは上手かった。『ビール・ストリートの恋人たち』は作品賞や撮影賞などでもノミネートされるべき作品なので、ここで取って欲しい!

-美術賞ブラックパンサー』ハンナ・ビークラー&ジェイ・ハート
ワカンダ国、住みたいっす!ハンナ・ビークラーは『ムーンライト』の時といい、キレっキレ。取らないとおかしい。

- 衣装デザイン賞『ブラックパンサー』ルース・E・カーター
正直、助演部門と並んで一番自信ある!アフリカの伝統を取り入れたあの衣装の数々は歴史的快挙。盟友スパイク・リーの監督賞と共に一緒にW受賞して欲しい!

- 作曲賞『ビール・ストリートの恋人たち』ニコラス・ブリテル
スクリーンに華を添えた美しい旋律。『ブラックパンサー』のルドウィグ・ゴランソンも良かったけれど、曲で映画を支えたのはブリテルの方かと。

-歌曲賞『ブラックパンサー』ケンドリック・ラマー&SZA「オール・ザ・スター」
この曲を聴けば、すぐに『ブラックパンサー』のどこかのシーンが脳内を駆け巡る... それくらい、この映画とマッチしていた曲。でも、前哨戦ではレディ・ガガの方が強い。音楽映画だったので、その音楽の持つパワーには負けてしまうかも。


という訳で、ゴリっゴリの個人的信念押しつけがましいオスカー予想ですが、最後には笑いたい!アカデミー賞は、日本時間で2月25日午前10時からです!

映画秘宝 4月号

映画秘宝 4月号
2/21(木)発売の映画秘宝4月号に『If Beale Street Could Talk / ビール・ストリートの恋人たち (2018)』と『Green Book / グリーンブック (2018)』のレビューを寄せております。『ビール・ストリート』の方は映画秘宝発売日の次の日2/22から日本公開、『グリーンブック』の方は3/1から日本公開なので、公開前にも公開後にも是非!

んもう、好きな作品が書けて幸せです。『ビール・ストリート』の方は書く機会ないかな?と思っていたので、尚更。バリー・ジェンキンス監督の『ムーンライト』の尊い儚い感じが好きな人には、絶対に楽しめる作品。言葉少な目でも映像で伝わってくるあの感じ。って、この映画を思い出して、今キーボードを打っているだけでも、ウルウルしてくる。この作品を紹介出来ることの幸せをすごく噛みしめて書きました。

『グリーンブック』は『ヘルプ』とか『ドリーム』とかお好きな方にお勧め。あの当時の状況が分かりやすいと思う。

という訳で、映画秘宝4月号をよろしくお願いいたしまーす!

映画秘宝 2019年 04 月号 [雑誌]

映画秘宝 2019年 04 月号 [雑誌]

If Beale Street Could Talk / ビール・ストリートの恋人たち (2018)

愛によって生まれた『ビール・ストリートの恋人たち』

Moonlight / ムーンライト (2016)』でアカデミー作品賞に輝き、瞬く間に注目監督となったバリー・ジェンキンスの最新作。黒人文学だけでなくアメリカ文学を代表するジェームズ・ボールドウィンの「ビール・ストリートに口あらば」の映画化を次回作にジェンキンス監督は選んだ。監督は人に薦められて読んで決めたという。監督自身が一番注目を集める中で、この原作を選んだこと、それ自体が私にはもう勝者に思えた。なぜなら絶対にまたジェームズ・ボールドウィンの原作を手にする人が増えるからである。そしてこのティッシュとフォニーの物語に初めて触れることになる。それじゃなくても、熱烈な映画ファンならば、この映画をバリー・ジェンキンス監督作品として観る。そしてこの物語を知る。それだけのパワーを今、バリー・ジェンキンスは持っているのである。

「ビール・ストリートとは、ニューオリンズ<正しくはテネシー州メンフィス>の通りの名前で私の父<養父>やルイ・アームストロング、そしてジャズが生まれたところである。アメリカで生まれた黒人全員は、ビール・ストリートで生まれたのだ...」ジェームズ・ボールドウィン。1970年代ニューヨーク、フォニー(ステファン・ジェームズ)とティッシュ(キキ・レイン)は手を繋ぎ歩いていた。視線を交わし「心の準備は出来た?」とフォニーに聞くティッシュ。画面が変わって、刑務所の面会室でガラス越しに受話器でフォニーに妊娠を伝えるティッシュ。フォニーは刑務所にいるはずのない人物だった。職業訓練校で用具の使い方を学び、普段はレストランで皿洗いなどの仕事をこなしていたフォニー。2人は小さい頃からの幼馴染。だからティッシュには分かる。フォニーがあのような犯罪など決して行わないことを。フォニーが語りかけるフォニーとの固く結ばれた愛について...

< >は私が付け加えました。そうなんです。ジェームズ・ボールドウィンは間違えていたのです。ボールドウィンが語ったルイ・アームストロングが生まれたところを基準にすると、If Bourbon Street Could Talkが正しいのです。でも実はそれはポイントじゃない。ボールドウィンが語るように、ビール・ストリートはアメリカどこにでも存在する、つまりこれは普遍的なメッセージであり物語なのだと。この間違いにはジェンキンス監督も、もちろん知っていて、「それがポイントじゃない、ビール・ストリートはアメリカ黒人の生活を美しく描き出したとともに、黒人への不正を映し出した小説なんだ。フォニーが経験したことが黒人にとってとても身近なことなんだ」と語っている。確かに、今でも冤罪で捕まる黒人は多い。そんな話を今でもニュースでしょっちゅう見るし、私もツイッターでその手の話を書く。その度に私が憤るのは、冤罪で捕まった人たちにはこれだけの物語があるからだ。ティッシュという可愛くて奥ゆかしく、そして忠実な恋人は居ないかもしれないけれど、無償の愛で寄り添うティッシュの母のような存在や、息子・義息のために何でもやる2人の父親みたいな存在や、妹を守るティッシュの姉のような存在が被害者に居るかもしれず、残された彼らの気持ちを考えると心が痛むのだ。愛にも色々な形があることを知る。

そのようなボールドウィンのメッセージを、バリー・ジェンキンス監督は繊細に美しく描き出す。時には、ニコラス・ブリテルの美しい旋律とともに、そして魂をゆさぶるビリー・プレストンニーナ・シモンの曲に合わせたり、ステファン・ジェームズとキキ・レインの視線だけで描いてみたり、『ムーンライト』でも組んだジェームズ・ラクストンのカメラに頼ってみたりして。正直、ジェンキンス監督の初長編監督作品『Medicine for Melancholy / 日本未公開 (2008)』の時には、セピアの映像美が圧巻でしたが、そこまで感情を揺すぶられない感じだったのですが、『ムーンライト』からは感情が揺すぶられる。しかもかなり。『ムーンライト』も『ビール・ストリート』も、主人公が脆いからだと思う。脆いとは弱いということでは決してなく、儚いとかそういう意味の脆さ。そういうのを捉え、美しく見せるのが、ジェンキンス監督の巧さ。『ムーンライト』でも、同性愛者というマイノリティの苦悩を捉え、そして彼らの愛の姿を美しく見せた。今回は若いカップルが直面する困難を描き、そしてまた彼らの愛の姿を美しくそして強く見せた。

この映画で語られる様々な「愛」。しかし今テレビで流れてくる悲惨なニュースに「愛」など全く感じない。虐待にテロに人種や国をターゲットにした誹謗中傷ばかり。時代に逆行しているからこそ『ビール・ストリート』のメッセージを儚く、そしてそこに多様な愛の強さを感じたからこそ、美しく感じるのだ。

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(5点満点:1673本目)