SOUL * BLACK MOVIE * ブラックムービー

ブラックムービー、ブラックスプロイテーションなどについて


*10/15/2018に「ブラックムービー ガイド」本が発売になりました!よろしくお願いします。(10/15/18)

*『サンクスギビング』のパンフレットにコラムを寄稿。(12/29/23)
*『コカイン・ベア』のプレスシート&コメント&パンフレットに寄稿。 (09/27/23)
*ブルース&ソウル・レコーズ No.173 ティナ・ターナー特集にて、映画『TINA ティナ』について寄稿。 (08/25/23)
*『インスペクション ここで生きる』へのコメントを寄稿。(8/01/23)
*ミュージック・マガジン1月号にて、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のレビューを寄稿。(12/2/22)
*12月2日放送bayfm「MUSIC GARAGE:ROOM101」にて『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』についてトーク。(12/2/22)
*10月7日より上映『バビロン』にコメントを寄稿。(10/6/22)
*奈緒さん&風間俊介さん出演の舞台『恭しき娼婦』のパンフレットに寄稿。(6/4/22)
*TOCANA配給『KKKをぶっ飛ばせ!』のパンフレットに寄稿。(4/22/22)
*スターチャンネルEX『スモール・アックス』オフィシャルサイトに解説を寄稿。(3/29/22)
*映画秘宝 5月号にて、連載(終)&最後のサイテー映画2022を寄稿。(3/21/22)
*「This is Charles Burnett チャールズ・バーネット セレクション vol.1」にコメントを寄稿。(3/19/22)
*キネマ旬報 3月上旬号の『ドリームプラン』特集にて、ウィル・スミスについてのコラムを寄稿。(2/19/22)
*映画秘宝 4月号にて、連載&オールタイムベストテン映画を寄稿。(2/21/22)
*映画秘宝 3月号にて、ベスト10に参加。(1/21/22)
過去記事

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For Ahkeem / 日本未公開 (2017) 1667本目

全米を騒がした事件が起きた中、同じ街の片隅で生まれた命『For Ahkeem』

ミズーリ州セントルイス近郊のファーガソンで起きたマイク・ブラウン殺人事件(あえて殺人事件と書かせてもらう)... 近年勃発している警察官による過剰な銃暴力により亡くなった無実の黒人青年。そしてその直後に起きた大規模な抗議集会でも、警察側と一般市民が衝突し、日本でもTVなどを通じて報道された。フロリダ州で起きたトレイヴォン・マーティン殺人事件(犯人は警官ではなく自警団風...あくまでも風の一般人)もそうだったが、アメリカ黒人を取り巻く社会問題が浮彫となり、近年を語る上で欠かすことが出来ない悲しい事件となった。そんなファーガソン近くの高校に通う17歳のダジェ・シェルトンを追うドキュメンタリー映画。ベルリン映画祭のドキュメンタリー部門にも参加し、数々の賞を受賞している。

高校生のダジェは、学校で喧嘩をし、母を連れ添って法廷の裁判官の前に居た。ダジェは少々気性が激しく、怒りやすい。近所の友達は何人か銃などで亡くなっている。そんな彼女に裁判官が下した判決は、オルターナティブ・スクールへの転校。問題ある生徒が集まる高校へと転校になった。そこで出会ったのがアントニオ。彼女にとって初の恋人となる男の子だった。アントニオも問題があり、何度か逮捕歴があった。将来には希望が持てず、「将来はごみ収集員か土木作業員になる」と語っている。ダジェも高校卒業を目指して、少しやる気を見せていたが、アントニオがサボり始めると、ダジェもサボり始めてしまう。そして妊娠。ダジェはもう少しで卒業だったが、雲行きが怪しくなる。そして、マイク・ブラウン殺人事件が起きた。そしてダジェは出産する。

マイク・ブラウン殺人事件という、全米を騒がした事件が起きた中、同じ街で同じ年頃の女性を追ったというのが面白い。上の説明でも分かるように、事件前から撮っているので、凄い偶然。そして、そのセントルイスがTVで注目を集める中、「大手のメディアはセントルイスの真実を語っていない」と、1人の女子生徒が嘆いていたのが印象的だ。彼女は「私たちの中には暴動の中、ごみを拾ったりした者がたくさんいるのよ!暴力的な事ばかりをクローズアップしないで!」ということだ。そしてダジェは新しい高校の授業で新聞を作るのだけど、そのトピックは「ブラック・パンサー党」だった。この前の『Step / 日本未公開 (2017)』の時にも思ったけれど、若い子はブラック・パンサー党とかマルコムXが好きなんだなーと。やっぱりマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師じゃないんだなーと。もっとキング牧師のことも勉強して欲しい!

あと印象的だったのが、妊娠発覚して超音波の時のアントニオの表情。全然モニター見ない。あー、これダメな奴と私は思いました。それでも、出産した時は泣くほど喜んでいたので心変わりしたのかな。しかもこっちが引くほどの号泣。可愛い奴。そのアントニオにも支援する団体があって(ファーザー・プロジェクトとか言っていた気がする)、大人の男性が職などの面倒を見るらしい。でもアントニオぉおおおおお!!!

そして『Step』の時みたいに、今はどうしているんだろう?と気になって検索してみる。ダジェはまあ今も看護系の資格を取る為に頑張っている。垢抜けた。アントニオは分からず。変わるって自分次第。ダジェはその1歩を踏み出しただけでも変わった。でも、現実には本当に難しいこと。でも踏み出すことの大切さ。実感する。

www.blackmovie-jp.com
(3.75点:1667本目)

Tell Them We Are Rising / 日本未公開 (2017) 1666本目

我々は上昇中です『Tell Them We Are Rising』

ドキュメンタリー映画を撮り続けているスタンリー・ネルソンの新作。アメリカの黒人大学の長い歴史と、大学が担った役割を追っている。スタンリー・ネルソンは、『Freedom Riders / 日本未公開 (2010)』にてエミー賞を受賞している実力者。毎回、重厚感溢れるドキュメンタリー映画を制作している。今回は、アメリカでは通称HBCU(Historically Black Colleges and Universities)と言われている歴史ある黒人大学にスポットライトを当てた作品だ。そういえば、『Marvel ルーク・ケージ』のシーズン2の1話目では、ルークが「AACA(The African American College Alliance)」のフーディを着ていましたね。あれは90年代に流行ったもの。TVシリーズA Different World / 日本未放送 (1987-1993)』が流行って、黒人大学にスポットが当たるようになって、マーティン・ローレンスとかクイーン・ラティファとかラッパーたちが着だして流行ったもの。それをルークが着ていたわけです。

まずは奴隷時代には、文字の読み書きはご法度とされていた。読み書き出来るとバレると、お仕置きをされるのだ。というのは、色んな映画やTVなどでも御覧になっている方は多いと思う。1863年奴隷解放宣言が執行されると、元奴隷たちは一斉に聖書を読むようになる。そして、教会では日曜学校が盛んになり、そして教師育成の為の教育も始まる。そこに入ってきたのが、北部の聖職者たち。とはいえ、北部の大学でも黒人という理由だけで入学を拒否していたそうだ。あのイエール大学ですら。そして奴隷解放宣言後には、黒人へのリンチが増加し、黒人大学で教えていたという理由だけで白人の教授もリンチの被害に遭っていた。

興味深かったのが、タスキーギ大学の設立者ブッカー・T・ワシントンが学んだハンプトン大学の学長アームストロングは、黒人は教育には向いていないので、技術を身に着けた方が良いという事で、農業や技術系の大学にしたという事。だからタスキーギも技術系の大学になったんですよね。フィスク大学でも、黒人を偏見の目で見ていた学長により厳しいルールが設けられたりもしていた。と、黒人大学とは言え、上の人が白人だと(北部白人でも)、割りと教える方にも随分と偏見があったんだなーと。

タイトル長いんですが、その由来が素敵。ハワード大学の名前の由来になったOO・ハワードが「元奴隷たちにとってとても厳しいこの状況を、北部の人たちにどう伝えればいいか?」と尋ねたところ、13歳のリチャード・ロバート・ライトが「サー、我々は上昇中ですと伝えてください」と答えたことから。このライトは、後に大学を主席で卒業し、後に教育者となった人物。

最後は今の黒人大学の状況が語られている。今は、マーチングバンドが有名な所や、大学自体が廃れてしまった所もある。かつての役割を終えた感じを受けた。で、マーチングバンドで、フロリダA&M(FAMU)が紹介されていた。コモンが通っていた大学。でもあそこって、ドラムメージャーの子がいじめというかしごきで亡くなって殺人事件で騒がれた所だよね。それはカットされていたのが残念でした。あの事件、とても衝撃を受けたので。

Tell Them We Are Rising: The Story of Black Colleges and Universities / 日本未公開 (2017)

Step / 日本未公開 (2017) 1665本目

ステップ・バイ・ステップ、徐々に成長する女性たち『Step』

2015年、ボルチモア。ナイフを保持していた25歳のフレディ・グレイが身柄を抑えられ、護送中に気を失い、そのまま亡くなった。警察が護送中にグレイに過度に暴力を加え、背中の骨を圧迫して折った事が死亡の原因と言われ、その死亡事件に関わったのにも関わらず、6人の警官は謹慎処分となったが、その間は給料が支払われ、いわゆる「有給」よりも良い処分だった(有給は使えば減るが、この場合は減らない)ために、多くの市民の反感を買い、街では連日抗議集会が行われ、大きなニュースとなった。そんなボルチモアのチャータースクールの「ステップ」チームに、新しいコーチがやってくる。ブレッシンという生徒が始めたのがステップ・チーム。ステップとは、通常は大学のフラタニティソロリティが規律を合わせる為に用いる踊りの事。高校でもそれを取り入れたのが、この学校だった。そしてこの高校は、全員が大学進学を目指している。最上級生となったブレッシン、ステップ・チームには似つかわしくない秀才眼鏡っ子コリ、お母さんが警察官で熱心だが本人は今どきの子テイラーの3人を中心に追うドキュメンタリー。

2017年のサンダンス映画祭にて上映され、ドキュメンタリー部門にて審査員特別賞を受賞した作品。3人の女の子に絞ったのが上手いですね。そして、その3人のチョイスが絶妙。ブレッシンは、チームを始めただけあって、リーダー格で華がある。体格も1人だけ大きい。日本の歌手AIみたいな感じ。でも、人間だもの... 弱さもある。勉強は出来ない訳じゃない。やる気になれば出来る子なんだけど、どうも他に気が行ってしまう。1人だけ大人びているので、当然のようにカッコいい彼氏がいる。そしてお母さんも口は達者だけど、気に掛けてくれないタイプ。それに引き換え、テイラーのお母さんは出たがり(笑)。練習にも毎日のように訪れ、そして口を挟む。おどけてみせて、テイラーを赤面させる。そんな母を見て育ったせいか、どこか冷めた感じなのがテイラー。ビヨンセを引用してみせたりと、超今どきの子。そんな2人とは正反対なのがコリ。余りステップは上手くない。いわゆる眼鏡っ子。頭が超良い。地元の名門...いや全米の医学界の権威ジョンズ・ホプキンズ大学を狙うほど。でも、そんな名門大学に普通に通えるほど実家には余裕がない。シングルマザーの母は、お金が払えないと大学進学説明会で他のお母さんを前に泣いてしまうほど。と、キャラが全く違う3人を追ったのが良いですね。それだけで面白かった。何気ない女子生徒たちの会話が面白い。キング牧師マルコムX、もしまだ生きていたらどっちの運動に参加するか?とかいう女子高校生ぽくない会話から、普通ーーーの喧嘩とか。ところで、フレディ・グレイは?と思うかもしれない。途中でこのステップ・チームがトリビュートみたいなステップを見せてくれます。それが凄く感動的!

この3人に関わるのが、新しく来たコーチGと進路指導のポーラさん。大変そうでした。本編には入っていないのだけど、DVDのボーナス映像によれば、コーチGは仕事を何個も掛け持ちして、このステップ・チームを指導していたらしい。

で、こういうドキュメンタリーの楽しみと言えば、その後の彼女たちが今はどうなっているのか?ですよね。こういう映画ではいつも大抵いい感じでエンディングを迎える。今... 3人とも本名でツイッターやってまして、ブレッシンはやっぱり派手にやっている様子。大学は続けているのか分からない。「あーあ」と思ってしまう人たちとつるみ、モデルもやっている様子。テイラーも垢抜けたが、それなりにちゃんと大学生活をやっている感じ。テイラーらしい。コリは流石にちゃんとしている。が、この本編でもプロムの場面があって、ドレス着て化粧したら、物凄く化けたというか、凄く可愛かった。元々スタイルが一番良い。なので、真面目に大学生活やりながらも、現在はモデルの仕事も興味あるらしい。

少しずつではあるけれど、大人になっていくのが伺える。今もまだその過程なんだと感じました。

Step / 日本未公開 (2017)(4.25点:1665本目)

Tyrel / 日本未公開 (2018) 1664本目

何も起きないゲット・アウト?『Tyrel』

この作品の第一報が入った時、2018年版『Get Out / ゲット・アウト (2017)』とか、『ゲット・アウト』の最新版とか言われていた。やたらと『ゲット・アウト』との酷似を主張していた。そこまで言われると『ゲット・アウト』が最高に面白いので、観たくなってしまう...という。主演は、『Straight Outta Compton / ストレイト・アウタ・コンプトン (2015)』のジェイソン・ミッチェル。

雪景色の中、ガス欠で車を押すタイラー(ジェイソン・ミッチェル)とジョン(クリストファー・アボット)。ジョンが呼ばれた泊りがけの誕生日パーティに、タイラーも連れて行ってもらうことにした。なぜなら妻(彼女?)の家族が出てきていて、家に居るのが居心地悪いからだ。場所はNYから少し離れた山のある人気の少ない所。途中で仲間がガソリン持ってやってきてくれて、何とかたどり着いた。安心したタイラーだったが、見渡せば黒人は自分1人だけ。良く分からないノリで、良く分からないゲームをさせられ、なぜだか自分以外は盛り上がっている。電話を掛けるため、電波の届くところまで1人で外に出るタイラーだったが...

これね、やたらと酔っぱらった人を永遠と見せられる。途中から人が増えるんだけど、みんな白人。そして相変わらず良く分からないノリ。本当に何も起きないただ酔っぱらっているだけの『ゲット・アウト』。この一言に尽きると思う。でもね、意外とこのタイラーの状況って非白人には「あるある」だよねと。途中でR.E.Mで盛り上がるんだけど、「Stand」と「Losing My Religion」は私も分かる!合唱は出来ないかもだけど、分かるので何とか私も誤魔化せる。でももう一曲、みんなで合唱していたのだけど、私には誰の曲かも分からない!ああいう状況は誤魔化せないよね。私も1人、部屋をそっと出るわ(笑)。そしてトランプ人形をみんなで叩きのめすんだけど、何かこう居心地悪い。自分が慣れているノリじゃない。そしてようやく念願の?別の黒人に出会い、やっと分かって貰えるー!と思ったら... 笑った。この状況って、人種グループだけで起こる訳じゃない。例えば、友達・恋人とかの別の友人の中に突然入れられるとこの状況って出来る。分かるかな?自分の友達・恋人の別バージョン知る的な。「嗚呼、こういうノリも出来るんだ」的な。そのグループだけが知る内輪ネタで盛り上がる状況に出くわしたのが、タイラー。これは我々にも十分にあり得る。

タイトルが好き。これは割りとすぐに劇中に出てくる。何ていうか、ここから始まっている感じ。興味ないって一番辛いよね。

ちなみに本家『ゲット・アウト』に出演していたケイレブ・ランドリー・ジョーンズも出演。この人がバースデーボーイ。『ゲット・アウト』では、ローズたんの弟を演じていたあの人です。この映画でも、これまた変なテンションの男を演じている。絡みにくい人演じさせたら天下一品!『JUNO/ジュノ』とか『スーパーバッド 童貞ウォーズ』のマイケル・セラも友人の1人で出てくる。出てきたところから変なテンション。とにかくタイラー以外がみんな変なテンションでみんな面倒臭い(笑)。そして全ての状況で分かるわーと思わせてくれたのがジェイソン・ミッチェル。やっぱり上手い。

よく映画やドラマであるじゃないですか?仲間で黒人1人のキャラが居るパターン。映画とかドラマでは隔たりなく仲良く親友ぽくやっているけれど、この映画の方がリアルだよね、と。もちろん、本当に仲が良いパターンもある。でも... これって「あるある」だよね。私にはこのタイラーの状況はすごく身近に感じた。

Tyrel / 日本未公開 (2018)(3.5点:1664本目)

Night Comes On / 日本未公開 (2018) 1663本目

きれいなだけじゃない、頑張るお姉さんは好きです『Night Comes On』

この前の『Pimp / 日本未公開 (2018)』の時にも書きましたが、最近本当ーーーーーに多いのです。インディペンデント系の白人女性監督の作品が、ニューヨークを舞台にした黒人女性物語。ここ2-3年でグッと増えている。私が気になりだしたのが『The Fits / 日本未公開 (2016)』辺りかな。その前にもあったかもだけど。『First Match / ファースト・マッチ (2018)』とか、この前見た『Skate Kitchen (2018) - IMDb』という映画もそうですね。で、黒人男性監督のトレンドはオークランド舞台ですね。という訳で、ニューヨークが舞台の強いお姉ちゃんが主役のドラマ。今年初めの2018年サンダンス映画祭にてNEXT!部門のイノベーター賞を受賞。

エンジェル(ドミニーク・フィッシュバック)は、18歳の誕生日を目前に刑務所から出所した。しかし、母は死亡しており、父も刑務所にいるらしく、妹はまだ小さくてフォスター(里親)に世話になっている為、誰もエンジェルの出所で迎えに来る人はいなかった。出所後は付き合っている彼女の家に世話になるつもりだった。その前にマーカスという男から銃を手に入れた。しかも、その銃の抵当に嫌がらせも受けた。出所後の諸々の手続きなどで事務所に向かう途中、バスで同じ年頃の女子高生たちが屈託なく騒いでいた。エンジェルは執拗に父の住所を見つけ出そうとしていた。しかし誰も「知らない」と嘘をつく。どうやら妹ならば知っているかもしれないと聞いて、エンジェルは妹アビゲイル(テイタム・マリリン・ホール)に会いに行く...

段々と真相が分かるタイプの映画。主役のお姉ちゃんが本当に強い。何か腕っぷしも強そうではあるけれど、彼女の場合内面的に強いタイプ。もうね、可哀想な位に色んな事が起きる。そしてこの監督の上手い所は、穢れの知らないというか、一般の女子高生を上手く使って対比しているところ。本当だったら、エンジェルはこういう学生生活を送っていたかもしれないんだよねーと、随所で思わせてしまう。また、妹が本当に妹みたいで辛かった。ちょっとお姉ちゃん譲りな強くて賢い所もあるんだけど、まだまだ子供で...みたいな。でも最後らへんで泣かせてくれる!妹も感情を抑えていたタイプで、その妹が抑えていたものを爆発させた時、泣いた。そして最後の最後... 泣くよ。

と、彼女たちが作る映画は上手くて面白い。でも、唯一共通しているちょっと違うかな?と思う所は、音楽かな。音楽の使い方が上手くない。何か違うよねーと。でも『Pimp』のラストのDMXの曲だけは良かった。ラップやR&Bを使えとは全然思っていないけど、それにしても何か違う感がある。それは共通している。

Night Comes On / 日本未公開 (2018)(4.75点:1663本目)

ネットフリックス大解剖 Beyond Netflix

ネットフリックス大解剖 Beyond Netflix

先日、アメリカ映画協会(MPAA)に正式加盟したネットフリックス。大手のスタジオじゃないと加入出来ない団体なので、レンタル会社だったネットフリックスが、映画を制作する側へとなり、しかも大手と認められたということである。そんな時期にタイミング良く発売されるのが、こちら↓。

ネットフリックス大解剖 Beyond Netflix

ネットフリックス大解剖 Beyond Netflix

ネットフリックスのオリジナル作品を徹底的に大解剖した本です。

私は、ジャスティン・シミエン監督作『親愛なる白人様』についてたっぷりと書いております。たっぷりと30%増しな感じで書いておりますので、ここでは全く触れません。是非、御手にとって読んで頂ければ幸いです。白状すると、凄く脳を使って書いたので、ヘロヘロになりました。そして執筆中に記事内のアノ人が発言を二転三転させ、その都度編集したので最後は削除しました。もう二度とあの人のことは記事で触れたくないです。

他の執筆者のみなさんも、それぞれ1シリーズをたっぷりと解説しているので、きっと皆さん好みの作品が必ず見つかる筈!

本日、1月25日(金)発売です。よろしくどうぞお願いします。

Pimp / 日本未公開 (2018) 1662本目

ピンプ映画の新たな扉を発見!女ピンプ物語『Pimp』

ピンプ。ヒモ。ポン引き。売春斡旋業者。ピンプと言えば映画『The Mack / 日本未公開 (1973)』と『Willie Dynamite / 日本未公開 (1974)』である。ド派手な毛皮に目立つドでかいキャデラック!とにかく派手に振る舞った方が良いのだ。なぜなら、あのピンプに付けば自分もあのように派手に暮らしていけると、女たちに思わせることができるから。でも、それは警察やライバルに目を付けられることになる。そして大抵は、麻薬で女たちを繋ぎとめる為にも麻薬にも手を出していることが多い。いや、多いのレベルではなく、ほぼ99%そうであろう。なにせ裏社会の人々ですから。犯罪とか暴力とか大嫌いだし絶対に許せないし、下ネタも引いてしまう私ですが、なぜかピンプ映画は大好きでして、『Willie Dynamite』は好きなブラックスプロイテーションのトップ3に君臨する位だし、いや好きなオールタイム映画トップ10にすら入るくらい好き。元々本物のピンプで後になぜか小説家として成功するアイスバーグ・スリムやドナルド・ゴーインズの世界観も大好きで読み漁った時期がある。そんな私が観た女ピンプ物語。

ニューヨークのブロンクスに生まれ育ったウェンズデー。彼女の父(DMX)はピンプで、母(アンジャンヌ・エリス)は父の下で働いていた元売春婦。そんなウェンズデーは10歳の頃から父の手伝いで売春婦の身の回りの手伝いをしており、ピンプとはどういうものか分かっていた。近所に住むニッキーが大好きで仲が良く、ニッキーの所も恵まれた環境ではなかった。ある日、父と母が麻薬でハイになり、その末に父が死んだ。残された母は、ウェンズデーに「これから私はどうしたらいいの?」と泣きつく。それから数年経ち、ウェンズデー(キキ・パーマー)は成長し、女ピンプとして父の家業を継いでいた。そしてニッキー(ヘイリー・ラム)がいつも側に居たが、母は麻薬関係でしょっちゅう刑務所暮らしで保釈金などを用意していたウェンズデーは金銭的に苦しい状態にあった。そんな時、ディスティニー(ヴァネッサ・モーガン)という美しい女性と出会うが...

私の中でキキ・パーマーは絶対にいい感じに成長する子だと信じておりました。『Akeelah and the Bee / ドリームズ・カム・トゥルー (2006)』とか『The Longshots / 奇跡のロングショット (2008)』とか上手くて本当に可愛かった!たまにハリウッドで成功して変な感じになる子役っているじゃないですか?あれには絶対にならないと。Tatyana Ali (タチアナ・アリ)タイプのいい感じのお嬢様になるのではないかと信じていたのですよ!!!だから、この女ピンプ役は私にはかなり衝撃的でした。でも演技は本当に上手い子なので、凄いピンプでした。全然違和感なかったし、そうか女ピンプとはこういう世界なのか!と。そして、余り出番はないけれど、DMXが最高でした。出番こそないけど、主人公をピンプの道に進ませたと納得する存在感がありました。DMXとピンプだと、ドナルド・ゴーインズ原作の『Never Die Alone / ネバー・ダイ・アローン (2004)』を思い出した。その作品もだいぶ好きで、ヘロインとコカインの違いをDMXに叩きこまれました。そ、し、て... アンジャンヌ・エリス。もう手が痛くなる位書いておりますが、過小評価されている女優。不埒で脆い母親役が上手過ぎで、今回は流石に嫌いになりそうだったよ。その位上手い女優の1人。女ピンプという珍しい立ち位置のウェンズデーだけど、友人のサイエンスとマルコムが、女扱いも男扱いもせず、友人として普通に絡んでいるのが凄く好き!しかもこの2人頼りになるし、優しいし、最後... 友達として最高過ぎる!逆に人として酷すぎるのがケニー!ウェンズデーのライバルピンプとなる男。『トワイライト〜初恋〜』とか『X-メン』にも出ていたエディ・ガテギが演じている。もうね、最低過ぎで恐ろしい!絶対に街で見かけたら目逸らすタイプ。という感じで盛り上げてくれております。

制作総指揮は『Precious: Based on the Novel Push by Sapphire / プレシャス (2009)』やTVシリーズEmpire / Empire 成功の代償 (2015-Present)』のリー・ダニエルズ。監督はクリスティーン・クロコス。知らなかったので名前でググったらスパイス・ガールズのメルBの元カノだったらしい。最近、なぜかニューヨークが舞台で黒人女性(大体ティーン)が主人公のインディペンデント映画って、白人女性が監督している。ここ2-3年ずっとそうなのです。この傾向の理由が、未だ私には見つけられていない。そして大体が面白い作品。

この映画はアイスバーグ・スリムやドナルド・ゴーインズの世界とはちょっと違うけれど、また新たな扉を開いてしまった作品。私好みの役者たちが、その扉の向こうで活き活きとしていた。DMX、早く完全復活して戻ってきて!

Pimp / 日本未公開 (2018)(4.25点:1662本目)